ウイルスって何??

2022/02/23

 蒼野が生まれてきてから、こんなにもウイルスを身近に感じる時代は無かったと思います。少し考えてみると、ウイルスって何?? 蒼野はウイルスについて、『小さくて悪い奴』くらいしか知らないことに気づきました。今日はウイルスについて考えてみたいと思います。

 そもそも、小さくて悪い奴には、細菌もいます。どちらも多くの感染症の原因であるため、分かりにくいです。医療者の立場から言えば、抗生物質が効くのが細菌で、効かないのがウイルスです。この二つは調べてみると、まったく異なる存在のようです。

 細菌とウイルスの最も明確な違いは「大きさ」です。多くのウイルスは、はるかに小さく、顕微鏡では見れません。そして根本的な違いは、 細菌は自己複製するのに、他者を必要としませんが、ウイルスが、娘ウイルスを作るためには、宿主を利用する必要があるということです。

 例えば風邪ウイルスであるライノウイルスは、鼻腔粘膜細胞の表面で「受容体」に結合し、細胞内に侵入します。その細胞の代謝経路(リボソーム=タンパク質工場)を占拠してそこで娘ウイルスを複製してゆくのです。娘ウイルスは細胞を飛び出し、鼻や気道の他の細胞に侵入を繰り返したり、咳やくしゃみで、他人の気道粘膜細胞に感染します。

 ヒトの免疫システムが感染を認識し、抗体のある粘液を分泌することでウイルスは減ってゆき、ヒトは感染から治癒してゆきます。通常このサイクルに1~3週間ほどかかるため、最後のウイルスが死ぬまでの間に、他のヒトに感染することで、ウイルスは生き永らえてゆくのです。

 ウイルスの複製には、我々の細胞の増殖と同じく、DNAというタンパク質の設計図、RNAというDNAから必要な情報だけをコピーして取り出した手順書、リボソームというRNAの情報からタンパク質をつくり出す工場が必要です。

 ウイルスは、DNA型とRNA型に分けらます。DNA(設計図)かRNA(手順書)は持っていますが、工場は持っていない最小の生物です。ヒトをはじめとして、様々なと動物と共に生きてきました。動物にはそれぞれの種ごとにウイルスがあるため、動物のウイルスの種類はものすごく多いのです。ある動物には病気を起こすウイルスも、他の動物では無害だったりします。

 しかし、新型のウイルスは突然現れます。コロナウイルスは動物ではメジャーなウイルスです。新型コロナウイルスは、センザンコウが由来だと言われていますが、このウイルスがコウモリの体内で遺伝子の組換え(リコンビネーション)が起こって、ヒトに感染するウイルスになった可能性や、2種類のコウモリ由来のコロナウイルスが、他の動物に感染して組換えを起こした可能性などがあると言われています。ウイルスのフルモデルチェンジです。

 ウイルス全体の中で、研究されているのは、氷山の一角にすぎません。海面の上に見える病原性のウイルスばかりが研究されています。そして、氷山の下にあるウイルスは、未同定のまま放置されています。新興ウイルス感染症は「氷山の下のほう」から遺伝子の組み替えで突然やってくるのです。

 チンパンジーから人に感染するようになったエイズウイルスや、2002年から2003年にかけてのSARSコロナウイルス、2012年にMERSコロナウイルスなど、動物由来のウイルスが人に感染して病気を引き起こすことは、普通に起こっているようです。

 しかも困ったことに、ウイルスは変異します。変異というのはRNA複製の際、一定確率でランダムに塩基の配列が入れ替わることです。ウイルスのマイナーチェンジです。それによって、たまたま感染力や増殖力の高い変異株が生まれ、ウイルスは生き残りやすくなるのです。新型コロナでも大きな問題になっていますよね!

 変異株が生まれるのは確率の問題であり、動物のウイルスでは世界同時に同じ変異が起こった事例もあるため、海外で起こった変異は国内でも起こり得ます。水際対策を講じても、感染数が多ければ、どんどん変異株は生まれてくるのです。蒼野はちょっと嫌になってきました。

 人類がそれに対抗するために、開発したものがワクチンです。大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチン、それらの弱点を克服するための新型のワクチン、などがあります。

 生ワクチンは弱毒型の生きたウイルスを接種し、抗体と細胞性免疫をともに誘導するものです。一度感染した状態になるため、次に同じウイルスが入ってきた時に、免疫効果が強い方法です、しかし弱毒にしたつもりでも、中には復帰変異といって強毒に戻ってしまい、感染が起こってしまうのが問題です。

 一方不活化ワクチンは、死んだウイルスの全体や一部を接種し、主に抗体を誘導するワクチンです。細胞性免疫の誘導は弱いのが特徴です。

 二つのワクチンの問題を解決するために生まれたのが、コロナワクチンとして現在使われている遺伝子組換えワクチンやmRNAワクチンです。

 宿主の細胞に結合する、突起状の部分をスパイクタンパク質と言います。アストラゼネカの遺伝子組み換えワクチンは、アデノウイルスがスパイクタンパクを作るように配列を置き換え、身体がスパイクタンパクに対する抗体を沢山作ることで、感染しにくくなるものです。

 一方ファイザーや、モデルナのmRNAワクチンは、スパイクタンパクのRNAを、細胞内のリボソームに送り届けることで、スパイクタンパク質が現れます、それに対する抗体ができるため、スパイクタンパク質をもつ新型コロナウイルスが、侵入した際にやっつけることができるのです。

 しかしウイルスのスパイクタンパク質にも、変異が起こります。それによって、ワクチン効果は減弱する可能性があるのです。またワクチンに反応して出来た抗体も時間が経つと減ってきます。これが打ってからの時間による、感染予防効果の減弱です。

 免疫記憶によって、感染が起こった際には、タイムラグはありますが、抗体産生は起こりやすくなっているため、ワクチンは打っている方が、感染した時の重症化率が、下がる可能性が高いのです。

 これからどんな変異が起こって、どうなってゆくのかは、まだ本当に分かりません。いい加減にしてほしいと、蒼野も皆様と同じように思っています。新型コロナに感染すると、確実に我々の細胞の一部が破壊されることは分かっていますので、とにかく罹らないことが重要であることは、繰り返しお伝えしておきたい事です。

 話は変わって、ウイルスは悪い事ばかりではないという話もあり、青野は驚きました。哺乳類の胎盤を作る遺伝子に、レトロウイルスの遺伝子が沢山含まれていることが分かっています。レトロウイルスの遺伝子には、免疫を弱めるものが入っているのですが、子宮に受精卵が着床する時に、自分以外の遺伝子を含む胎児に対して攻撃が起こらないように、レトロウイルスの遺伝子を利用していると言われているのです。

 ウイルスがいなければ、人も動物もここまで進化することはなかったかもしれないのです。動物も植物も細菌もウイルスも、すべて相互に作用しながら、地球全体は一つの生命体として生きているのでしょう。憎き新型コロナウイルスも、何か意味があって生まれてきたのでしょうか? パニックにならず、冷静に、感染確率を減らしてゆきたいものですね!

参考書籍: ウイルスと共生する世界     フランク・ライアン

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