スペイン風邪とコロナ!

2022/07/09

 またコロナ感染者数が増えてきましたね。皆様はお元気でお過ごしでしょうか? 蒼野は今度の勤務先で、発熱外来を担当することもあり、ここ福岡でも発熱患者様が増えてきていることを実感します。しかし世の中のニュースでは、他にも大変な出来事も多いことからか、もうあまり加熱した報道は見られません。

 喉元過ぎればなんとやらで、社会はコロナと共存しながらやって行く方向なのだと思います。これからどうなって行くのかは、誰にも分からないことだとは思うのですが、過去のパンデミックなどの歴史を振り返ってみることは、今後の参考になりそうだなと思うので、調べてみたいと思います。

 1918年に始まった「スペインかぜ」と呼ばれるインフルエンザのパンデミックは、最初の2年間は多くの記録が残されています。1920年以降も感染の波は発生し、死亡者も出続けていましたが、それ以降の記録はほとんど残っていないそうです。市民の大半が、「スペインかぜ」を早く忘れたいと願っており、現在ととても似ている状況だったようです。

 世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症について、緊急事態宣言を行い、3月11日にパンデミックを宣言しました。約2年4ヶ月経過した現在、新たな変異株であるBA.5に置き換わりが進んでおり、7月下旬には、AI予測で都内の感染は1日18000人と試算されています。

 BA.5の感染力はこれまで感染しやすいと言われたオミクロン株BA.2の1.3倍、変異により悪賢くなり、免疫逃避能力が上昇しています。広がるスピードもBA.2と比べて35.1%速く拡大しているようです。しかし重症化率は変化なく、ワクチン効果も変わらないと言われます。

 全国に先駆けて島根県で流行っており、76.8%がBA.5で、ワクチン未接種の若年層が中心だったこれまでのBA.1、BA.2に比べて、50~64歳、65歳以上に感染が拡大する傾向がみられているそうです。全体の重症化率は変化がなくても、島根県ではコロナ病床の85%は高齢者が占めており、数が増えれば死亡者も増えてゆくと思われます。

 感染者の6割以上がワクチンの2回接種を済ませており、免疫逃避の性質のため、抗体の効果が、BA.1、BA.2に比べて1/3程度になっているとのことです。しかし一旦免疫ができていることから、重症化率に関しては低めのまま、とのWHOの報告です。今後高齢者へのワクチン後感染やブレイクスルー感染が懸念されますね!

 しかし主に喉の細胞で増えるBA.1、BA.2に比べて肺胞の上皮細胞への感染が、研究の上では18.3倍と増加しており、肺炎に移行しやすい可能性が指摘されています。ワクチン接種や過去の感染がない人にとっては、重症化につながる可能性がある変異株のようです。結構ヤバそうな株なのです。

 しかし社会も、蒼野の気持ち的にも、コロナに対する警戒感は少し薄れてきています。『もうそろそろいいでしょう!』『インフルエンザでも、高齢者はたくさん死んでいるのだから、ずっと特別扱いでは、不景気で死ぬ人がもっと増えてしまうでしょう!』という考え方も増えてきているのではないでしょうか?

 スペイン風邪の時も、2年経つとコロナ疲れのような現象が起こっています。若い人がバタバタ死んだスペイン風邪は、当時原因も不明で、感染予防対策しかありませんでした。米国では最初にカンザス州の陸軍基地で始まり米国全土に拡大しました。最初の感染者が出た時点で、2日後には集会禁止、患者の自宅隔離を徹底したセントルイスでは、対応が遅かった地域に比べ、死亡率が半分以下になっています。

 対策は過激な部分もあり、1918年にはサンフランシスコの保健衛生官が、義務付けられていたマスクの着用を拒んだ市民3名を銃で撃ちました。アリゾナ州では、警察が感染予防用品を身に着けていない逮捕者に対して10ドルの罰金を課したとのことです。

 スペインかぜの初期の波では、感染への不安におびえる生活を送っていた人々が、1920年にパンデミックの勢いが少し衰え始めると、将来に対する楽観論が生まれ、人々はパンデミックを忘れて暮らしたいと願うようになりました。

 1918年には米国連邦議会も意欲的に感染予防の取り組みをおこなっていましたが、1920年の公衆衛生局の予算は減額され、パンデミックの原因の追究と次への予防策を講じる公的な取り組みが、最終的には失敗に終わってしまいました。1920年の死亡率は1918年よりも高い都市もあったにも関わらず、マスク着用義務は解除され、経済状況を重視し、公衆衛生対策に反対する声が大きくなっていったとのことです。

 結局100年前のスペイン風邪は、全世界で5000万人以上が死亡しましたが、原因ウイルスは、年月と共に致死性の低い株に変異しました。その子孫は現在、季節性のH1N1型インフルエンザとして小さな流行を繰り返しており、米国では今も年間1万2000~6万1000人が亡くなっています。

 同様に、新型コロナウイルスも変異を続け、人間の免疫系はいずれワクチンなしで対抗できるようになると考えられています。ただし、その前にまだ多くの人間が発症し、命を落とすことでしょう。重症化しにくいとは言っても、やはりそれぞれが対策を立てて時間を待つしかないようです。

 重症化しない、軽症という表現は、集中治療室に入るようなことにはならないという意味であって、後遺症とか、きつい症状が無いという意味ではありません。ワクチンの3回接種を終えた後の感染でも、認知機能が低下したり、ひどい倦怠感が何ヶ月も続く人も居られます。やはり甘く見ずに、体調を整え、可能な限りの感染対策は続けてゆきましょう。

 スペイン風邪は若い人を中心に大流行し、犠牲者が免疫力の高い、若い健康な成人だったのは不思議ですよね! その答えはシンプルで、1889年以降に生まれた人々は、1918年に流行した種類のインフルエンザウイルスを子どもの頃に経験していなかった。つまりこのウイルスに対する免疫を獲得していなかったからだと言われてます。

 現在(7月7日)のワクチン接種率は日本で80.8%、ブースター接種した人も62.1 %、高齢者の3回目接種率は89.9%とかなり良いところまで行っています。大多数に免疫は出来ていると思われるため、重症化は減ったまま経過するかもしれません。しかし軽症でも、後遺症が残る可能性があることは肝に銘じておく必要があると思っています。

 米国疾病対策センター(CDC)は現在、50歳以上で3回目接種から4カ月たった人に4回目の接種を、またがん患者などの免疫系が抑制されている人に対しても追加の接種を推奨しています。新しい論文でも4回目の接種は、医療従事者のブレイクスルー感染を大幅に減少させ、ウイルスを拡散させる可能性を大きく減らすという論文も出ています。

 ワクチン副反応もキツいので、いつまで打てば良いのという意見も、よく耳にしますが、高齢者と高リスクの人に関しては、やはり打ち続けておく方が安心かもしれませんね。蒼野も7月1日に4回目の接種を終えました。医学も日進月歩なので、ワクチンに関しても、感染予防効果が落ちている現行のものから、新しいブースターワクチンが秋には出てくるという話を耳にします。

 暑い夏、冷房などで換気が悪くなりがちな時期に、感染力のあるBA.5は心配ですが、皆様も気を緩めずにお過ごし下さい。後遺症を残さないためにも、最後はやはり自分の持つ免疫力です。睡眠、運動、食事を整え、無理せずに過ごしてゆきましょうね!

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