デブになるとバカになる!

2022/06/24

 今日は『体脂肪が多い人ほど認知機能が低い』という文献を目にしたので、それについて考察したいと思います。デブになる程バカになるって悲惨ですよね! 今後医学が発達したとしても、脳は元々の人格があるので、移植も、新しい細胞で再生することも難しい臓器です。生まれた時にもらったこの脳を長持ちさせるしか無いのです。

 今年発表されたカナダMcMaster大学の研究結果です。肥満になると、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを合併しやすく、合併症の影響で、脳血流が悪くなったり、脳梗塞を発症したりして、認知機能が低下するというのは、今までにもあった考え方です。

 合併症の影響を無くした多変量予測モデルの分析で、体脂肪が認知機能に影響するのかを、カナダとポーランドの0歳から75歳までの9189人、平均年齢は57.8歳、男性45.6%、女性56.4%の心筋梗塞や脳卒中、心不全の既往のない集団で観察研究しました。

 体脂肪率は、平均が女性が35.6%、男性が25.1%と肥満傾向が強く、6773人に施行したMRIでの内臓脂肪は、体脂肪率に相関していることも確認しました。体脂肪別に4つのグループに分け、認知症に影響する他の因子を除去して、認知機能を評価しました。

 分析の結果、注意、集中、短期記憶などを使って情報処理能力を評価する数字符号置換検査(DSST)では、認知機能低下者の割合が、体脂肪率が低いグループで10.5%だったのに対し、高いグループでは15.5%でした。内臓脂肪に関しても、少ないグループでは8.6%だったのに対し、高いグループでは12.1%でした。

 遅延再生、言語、視空間認知、実行機能、計算、抽象概念、注意、見当識、集中など、多領域の認知機能を評価するMoCAスコアでも検討してみましたが、認知機能低下者の割合が、体脂肪率が低いグループで20.8%だったのに対し、高いグループでは24.1%でした。ただ内臓脂肪では有意な差がありませんでした。

 この結果から、体脂肪率や内臓脂肪体積は、認知機能低下の独立した危険因子であることが示されました。その差は加齢による認知機能低下の2.8年分だったとのことです。恐ろしいことですが、科学的に見ても、デブになるとバカになるらしいのです。こうなると痩せて頭を良くしたくなりますよね。

 この論文だけでは、どうして頭が悪くなるのかはっきりしないので、蒼野はもう少し論文を漁って、考察してみました。すると今度は、高血圧症や糖尿病、心血管疾患に罹っていない500人の脳MRI解析をした論文が出てきました。

 ケンブリッジ大学の2016年の研究で、20 歳から 87 歳までの 500 人のうち、肥満者の脳の萎縮が有意に進行していることが判明しています。脳表面の神経細胞部分ではなく、脳深部の白質と呼ばれる神経繊維部分の萎縮が、40才台で最も顕著に認められ、正常体重者と比べて、ほぼ10年分の萎縮だったとのことです2)。

 その理由としては、白質に存在し、神経繊維の髄鞘を形成し、神経細胞の維持や栄養補給に働くオリゴデンドログリア(稀突起膠細胞)が炎症の影響を受けやすい細胞で、肥満になる生活習慣によって、これが傷害される事が、白質萎縮の原因となっているとのことでした。

 白質の機能は、IQに代表されるような暗記力・計算力・直観力といった流動性知能に関与しており、25歳がピークで、通常でも40代から衰える傾向にあります。この時期に流動性知能が低下してしまうと、認知症への移行リスクが高まってしまうのです。

 ここでもう一度肥満とIQについて考えてみましょう。IQが低いと太りやすいのか? 太っているからIQが低下するのか?という二つの面があるのですが、どちらもあると蒼野は考えています。

 IQが低いと、目先の楽しみのために行動することが多く、将来の健康リスクを考えて、生活を節制するということにも、なり難いように思います。またそれ以上に高収入の仕事に就く可能性も低く、食事内容が偏ってしまいやすいのです。

 厚労省の調査でも、「低所得世帯は高所得世帯に比べて、野菜類や肉類の摂取量が少なく、逆に穀物の摂取が多く、栄養バランスが取れていない」と指摘されています。滋賀医科大学の研究では、摂取エネルギーに占める炭水化物の割合は、世帯年収600万円以上の男性が58.6%なのに対し、200万円未満の男性は61.1%と年収が低いほど増えていました。

 糖質を食べれば食べるほど太るのは、皆様もご存知の通りです。不況が続き、インフレが増悪し、食糧危機が叫ばれるこれからの世の中では、一層注意して食べるものを選択する必要があると思います。どんどん認知症が増えてゆけば、本当に日本の未来が心配です。

 肥満の状態は、動脈硬化が起こりやすく、脳血管性認知症のリスクが5倍になります。またアルツハイマー型認知症のリスクも3倍になると言われています3)。睡眠時無呼吸の低酸素の影響や、睡眠障害の影響もあると思われます。運動不足では、脳内のBDNFが枯渇し、脳細胞をリカバーすることができません。アルコールで肥満になっている場合には、さらに脳は萎縮します。

 肥満の状態になると、多かれ少なかれ、インスリン抵抗性が出現しています。脳のインスリン抵抗性が、認知機能低下に大きく影響する事が分かってきています。視床下部では食欲コントロールが乱され過食になります。海馬では短期記憶が低下し、神経の再生が難しくなり、大脳皮質でも情動・認知機能制御が障害されます。

 内臓脂肪が増えるとコルチゾールの分泌が高まり、神経細胞のアポトーシスが誘導されます。脳の微小血管のインスリン抵抗性によって脳血流も悪くなります。飽和脂肪酸の過多によって、腸の内皮細胞の結合が緩むと同時に、脳の血液脳関門の結合も緩み、腸から入った炎症物質が、脳内にも流入してしまうのです。

 視床下部や海馬では、慢性炎症が惹起され、神経細胞の破壊が進行します。肥満になることで、これだけの反応が起これば、認知機能低下に繋がってもおかしくないことが分かります。肥満は人間本来のエネルギー代謝が、狂ってしまった状態なのです。

 毎日食べる物と運動が本当に大事です。空腹を我慢したり、苦痛なことは続かないので、できるところから自分の生活の中で、糖質を減らしましょう。その分、野菜とタンパク質を増やす食事を基本にしましょう。もちろん好き嫌いもあると思うので、週に1回くらいは好きなものを食べても大丈夫だと思います。

 脳がやられてしまえば、生活の改善もままなりません。歳をとる前、認知症になる前が勝負なのです。まずは自然に適正体重になれる食事のチョイスを確立し、ずっと続けてゆきましょう。そのためにはやはり知識が重要です。世の中には糖質以外にも、美味しいものは沢山ありますよ!

 具体的な認知症予防の食事知識に関する過去ブログを貼っておきますので、もしご興味があれば復習してみてくださいね! 世の中から肥満と認知症を無くしたい蒼野でした。

参考文献
1)Evaluation of Adiposity and Cognitive Function in Adults: 
                 JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146324.

2)Obesity associated with increased brain age from midlife: Neurobiol Aging 2016, 47: 63−70

3)肥満症に伴う認知機能障害 ─脳科学基礎研究の動向  「肥満研究」Vol. 26 No. 2 2020 

過去ブログ

https://blue-zone-life.com/リコード法%E3%80%80食事/

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