リーキーガット症候群!

2022/07/18

 昨日の遅延型フードアレルギーの原因として、大きく関与するリーキーガット症候群について、今日は深掘りしておきたいと思います。確実なエビデンスがまだ得られていない領域ではありますが、誰にでも起こる可能性があり、現代の生活では、様々な原因によって、知らない間に不調の原因になっていることが多いと思われるからです。

 食べ物と病気の関係は、個人個人で異なっていることもあり、エビデンスが出るような実験や観察が難しい領域です。リーキーガットが様々な病気の、本当の原因であるという確定的な証拠はまだ出されてはいません。したがってまだ現代の西洋医学では、教えられていないこととなります。

 まず基本的なお話です。ヒトは食べ物を食べて、必要な栄養を吸収しなければいけません。また食べ物に含まれるものや、腸内細菌が作り出すものの中で、有害な物に関しては、身体の中に入れないようにする必要があることは、自明の理として、皆様も納得頂けると思います。

 腸の粘膜上皮は1層の細胞が引っ付いて出来ています。隣同士の細胞はタイトジャンクションと呼ばれる隙間のない接合が、非常に複雑なメカニズムで存在し、この部分で必要な栄養や水分を体内に吸収し、細菌や有害金属、毒、分子量の大きなタンパク質やペプチドなどは入れない様になっているのです。

 この機構を保つことが健康に必要であることは、皆様の同意を頂けると思います。内視鏡で腸を観察しても分かる病態では無く、客観的にリーキーガットを診断する方法が今までは無かったことで、西洋医学ではまだ、リーキーガットが様々な病気の原因になっているということが、直接的に証明されておらず、医療者の間では、賛否両論が分かれるところになっているのです。

 蒼野はリーキーガットを起こすような生活はなるべく避けてゆくことをお勧めしたいと思っています。私見にはなるのですが、自分自身の経験で、外食やパン食が続くと、体がだるくなり、やる気が低下し、お腹の調子が今一つになるということもあったり、妻や娘も同じ時期に、調子が下がることや、肌荒れが酷くなることなどを見ると、確かに影響があるのだろうと思うのです。

 昨日書いたように、リーキーガットの状態で、体内に様々な毒物や異種タンパク、ペプチドなどが入ると、腸自体の慢性炎症や、体内の慢性炎症が起こると思いますし、遅延型フードアレルギーも起こると思います。現代の慢性病、生活習慣病、病的老化は、体内の慢性炎症がベースになっているものと考えますので、健康長寿のためには、リーキーガットの状態にならない習慣を知ることが重要だと思います。

 最近の治験では、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)については、リーキーガットと関連があるとする意見が有力となって来ました。腸内フローラを適切な状態に保てれば、タイトジャンクションの機能が維持され、リーキーガットが改善すると考える医療者も増えています。

 腸内フローラは都会に住む現代人と、狩猟採集民族では大きく異なっており、やはり環境や食事、ストレスなどの影響が指摘されています。そして過敏性腸症候群や炎症性腸疾患は未開社会には存在しない疾患なのです。これらの疾患が、腸内フローラを変更できる糞便移植治療で著明に改善する症例が、報告されて来ている事も、蒼野は間接的な証明になっていると考えています。

 さて、リーキーガットはどうすれば改善できるのでしょうか? まずは食事の改善ですよね! リーキーガットになりやすい食べ物を減らすことと、腸内フローラの善玉菌を増やして、腸内環境を整えることの2点をやってゆきましょう。

 リーキーガットは未消化の食べ物、特に消化しにくいタンパク質が原因になると言われています。有名なものが小麦のグルテンです。グルテンは消化しにくく、ねばねばとして腸壁にくっつきやすい上、タイトジャンクションを開くゾヌリンというタンパク質を増やします。どんな人でも沢山食べるとリーキーガットを誘発します。

 グルテンフリーが流行っているのは、こういう理由です。テニスのジョコビッチ選手がグルテンフリーにしてから、パフォーマンスが上がり、世界No.1になった話は有名です。日本人は欧米人と比べ、グルテンを分解する能力が弱いのも問題です。まずはトランス脂肪酸(ショートニング、マーガリン等)を含むパンから減らしてゆきましょう。

 2番目は昨日も書いたカゼインです。乳製品のタンパク質であるカゼインは、消化しにくく、未消化のまま腸を通ることが多くなると、リーキーガットを誘発します。特にヒトが消化できないαカゼインを多く含む牛乳は消化が難しいと言われています。最近の乳牛飼育では、抗生剤が多量に使用されており、腸内細菌を殺してしまう可能性があることも問題です。

 グルテンもカゼインも、その分解されてできるペプチドのアミノ酸配列がモルヒネに似ています。これがリーキーガットによって体内を巡ると、中毒性が出てしまうのです。牛乳好き、パン好き、麺好きが辞めにくいのは、その中毒性によるものが大きい様です。蒼野も小麦を辞めようとした時には、3ヶ月くらいは欲しくてたまりませんでした。

 3番目は砂糖や糖質過多の食生活です。悪玉菌や、カンジダ菌など、リーキーガットを起こしやすくする悪玉菌の餌になるため、腸内フローラのバランスが悪化してしまいます。動物性の脂質やタンパク質が多い食事、食物繊維が少ない食事も悪玉菌が優位となりやすいです。

 4番目は食品添加物、保存料や残留農薬です。保存料は殺菌剤ですので、腸内細菌が死んでしまいます。実験段階ではありますが、除草剤(グリフォサート)が微生物に影響するという報告もあります。PH調整剤、亜硫酸Naその他が添加されているものも可能な範囲で減らしましょう。少量なので、すぐに影響は出ないかもしれませんが、毎日のように、コンビニやチェーン店で食事を摂っている人は注意が必要だと思います。

 5番目は薬剤です。抗生物質自体は飲むと、半年位は腸内細菌が変化すると言われています。必要が無い場合には使わないのが賢明です。ウイルスには効かないため、風邪の二次予防で使うのはナンセンスです。その他、ピルやNSAIDs(痛み止め)、制酸剤、ステロイド剤の常用もリーキーガットを誘発します。

 その他としては、アルコール、脂肪肝、便秘、ストレス、睡眠不足など、腸内環境を悪化させるものは多岐にわたっています。ここまで書くと、じゃあ何を食べればいいんだよ! と分からなくなりますよね! 蒼野は皆様が困って欲しくて書いている訳では無いため、不調を感じている場合には、出来ることから試して欲しいと願うばかりです。

 2021年の研究報告には、ヒントがあります。加齢と共にリーキーガットになりやすくなる為、60歳以上の人の研究です。51人にポリフェノールを豊富に含む、リンゴ、ココア、ダークチョコレート、緑茶、クランベリー、オレンジ、ザクロジュースなどを8週間摂取してもらうと、腸透過性が改善されることが示されています。

 健康長寿の達成には、加齢と共に腸内フローラの健康を考えて食べてゆく必要があるように思います。同じものばかり食べないように、プレバイオティクスとプロバイオティックスを意識し、上記のものをできるだけ避けることを、還暦過ぎた青野も心掛けてゆきたいと思っています。 

参考文献: Crosstalk among intestinal barrier, gut microbiota and serum metabolome after a polyphenol-rich diet in older subjects with “leaky gut = The MaPLE trial Clinical Nutrition  Vol.40, issue10 P5288-5297, OCTOBER 01, 2021

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