慢性上咽頭炎!

2022/08/03

 コロナ後遺症のほとんどの人は、慢性上咽頭炎を併発しているそうです。ウイルスは気道粘膜に感染するためこれは当然かもしれません。しかし慢性上咽頭炎の治療を行うと、倦怠感、思考力低下、頭痛、嗅覚障害、味覚障害などのコロナ後遺症が治ることがあるというのはビックリです。今日はこの慢性上咽頭炎について書いてみたいと思います。

 読んで字の如く、鼻の奥の「上咽頭」に炎症が起こった状態を意味する慢性上咽頭炎ですが、単なる局所の炎症という事ではなく、この部位に炎症が起こると、思いもよらない様々な症状につながることがあるという事です。

 吸った空気の最初の関所が上咽頭で、この部分は細菌やウィルスが侵入するとすぐに免疫が活性化して対処する部位でもあります。いつも免疫が反応している場所であるために、「生理的炎症部位」とも呼ばれ、健康な人においても、この部位では炎症が起きていることが多いのです。

 この部位の慢性的な炎症は、慢性上咽頭炎と呼ばれ、起床時に痰が絡んだり、喉がイガイガする様な違和感、詰まり感を感じたりします。粘膜の炎症で耳管が塞がれたり、近傍の自律神経を刺激して、倦怠感、めまい、睡眠障害、起立性低血圧や記憶力、集中力の低下、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群などに繋がったりします。

 しかし耳鼻科などを受診しても、大きな異常は指摘されず、はっきりと診断されないことも多い疾患なのです。上咽頭は空気の専用通路で、表面は繊毛上皮で覆われています。繊毛上皮細胞の間には多数のリンパ球が入り込んでおり、上咽頭そのものが免疫器官としての役割を担っています。

 ウイルス感染をきっかけに、この部分の炎症が起こります。上咽頭は神経線維が豊富で迷走神経が投射しており、自律神経との繋がりも強い部分なのです。この部分が痛むと、関連痛として首や肩のコリや頭痛も生じます。普通の風邪でも、肩こりがひどくなった後に引くことがありますよね!

 上咽頭の感染により、炎症が起こると、この部分がから全身に活性化されたリンパ球や単球が出ていったり、炎症物質(サイトカイン)が全身の臓器にも影響する可能性があります。この部分の炎症が治らないと、自己免疫の暴走なども招き、二次性にME/CFSなどの重症のコロナ後遺症に繋がる可能性があるのです。

 そこで、コロナ後遺症の治療として、この免疫異常の元となっている慢性上咽頭炎の治療が試され、成績を上げています。「上咽頭擦過療法」(EAT=Epipharyngeal Abrasive Therapy)と言います。従来は、「Bスポット治療」とも呼ばれていた方法で、日本独自の方法になります。

 1960年代に、盛んに行われた方法で、0.5%~1%塩化亜鉛溶液を染みこませた綿棒を上咽頭の後壁に強めに擦りつける方法です。炎症部位を擦るため、痛みも強く、出血しやすいです。EATをした時の出血の程度と痛みの程度が上咽頭の粘膜上皮細胞の変性の度合いと相関しており、逆に血が出る様な症例は症状が治りやすいと言われています。

 その作用機序は3つあります。1、塩化亜鉛が炎症の鎮静化をもたらし、炎症の波及や、リンパ球の活性化、二次的な影響を抑えてくれる。2、炎症部位に集積する老廃物が、出血と共に排出されるため、近くにある脳血流や脊髄液、リンパ液の循環を改善する。3、上咽頭に分布する迷走神経の刺激を緩和し、神経反応を正常化することで、症状を改善する。

 近年迷走神経刺激による、様々な治療応用や、痛みのコントロールの報告は増えてきています。ME/CFSは自律神経系疾患の一つとも言われており、上咽頭の治療で改善しても何ら不思議はないのです。

 この治療を60年間で、小児も含む約4,000人、のべ計10万回を超すEAT治療を行なわれている、東京学芸大名誉教授の谷俊治先生によると、安全性は問題ないものとのことです。保健適応にもなっていて、値段も安く行える治療です。何にでも効くというふれこみもあって、現代の医療者には眉唾に思う人もいて、下火になっていた治療法です。

 これが重篤なコロナ後遺症である、ME/CFSにも効くとされていて、実際に大きな効果を上げている治療と再認識されているのです。日本オリジナルで、海外では受けることができない治療です。かといって大病院でやっている所は少なく、行なわれているのはまだ一部のクリニックだそうです。やっても手取りは400円で、くしゃみなどの飛沫を浴びるリスクもあります。

 蒼野もネットで調べてみると、まだ数える程ではありました。しかし決して難しい方法ではありませんので、あちこちの積極的な開業医様などで行える様になれば、多くの人がその恩恵にあずかれるのではないでしょうか? 但し上咽頭粘膜が荒れた状態で行うと、かなりの痛みを伴い、出血するのが玉に瑕です。

 EATほどではありませんが、まず自分で試みることが出来る方法もあります。まずは鼻うがいです。市販のキットで良いので家で出来ます。1日2回、鼻から入れて、反対の鼻から出します。これだけでも効果がある場合があるそうです。基本的にはEATと併用するのが効果的です。洗浄液は市販のものの他、1~2%の食塩水かぬるま湯でOKです。濃度を間違うと痛い事があります。

 2019年のイギリスの報告では、のど風邪や鼻風邪の患者に対して、発症48時間以内に鼻うがいを開始、最初の2日間は1日6回、その後は漸減しながら続けたところ、体内からウイルスがいなくなるまでの期間が短縮し、感冒症状の持続自体も22%減り、薬の使用も36%減少。家族への感染も35%減少したとのことでした。

 鼻うがいをすると、エアロゾルやウイルス量が低減します。気道と粘膜を潤し、ウイルスが排出されやすくなります。粘膜上皮で次亜塩素酸が作られやすくなることでも、感染抑制に寄与します。コロナ感染48時間以内に鼻うがいを始めると、症状が軽減可能ということです。

 漢方的に言うと、コロナ感染後には、元気の元である、気や血が不足した状態となります(気虚、血虚)。また血流が悪くなっており(瘀血)とか水の巡りが悪くなっている(水毒)状態になっていたりします。それを補正するために漢方を使うと、元の健康な状態に戻りやすくなります。

 代表的な処方としては、回復が遅い場合は補中益気湯、食欲が出ない場合は、六君子湯か四君子湯を使います。ひどい場合には併用しても良いです。吐き気がある時には六君子湯で、それ以外は生薬数が少なくなるのでキレがよい四君子湯を使います。

 顔色が悪く、倦怠感が強い場合には四物湯やその関連処方である、十全大補湯や人参養栄湯を使います。元気になる薬は西洋薬には無いため、回復の助けになると思います。しかし病態に合わせないと本当の効果は引き出せないため、一度漢方内科などで相談するのが良いと考えます。

 コロナに罹らないのが一番良いのですが、社会生活をする限りは、何処かで引っかかる可能性は高い様に思います。蒼野も含め、皆様がもし罹っても、すぐに対応して回復できるように、知識武装と、感染1日目の漢方の準備(柴葛解肌湯)の準備をしておきましょうね!

参考ページ: 

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