紅茶と緑茶!

2022/07/15

 今日は手軽な感染予防策として、紅茶と緑茶の利用について書きたいと思います。先日も書いたように、蒼野の勤める病院での発熱外来受診者が、日に日に増えています。高熱とひどい喉の痛みを訴える人が多く、身近に感染した人がいる人も多くなっています。昨日は福岡県の感染者数も5718人と過去最高を更新しました。

 皆様も十分に気をつけられているとは思いますが、マスク、手洗いだけでなく、お茶を利用することで、コロナウイルスの感染力が低下するという実験結果があったので紹介したいと思います。奈良県立医大の微生物感染症学講座の矢野寿一教授がおこなった実験です。

 市販されている10銘柄のお茶に感染力のあるコロナウイルスを混ぜて、時間毎に感染力の値を測定しました。一番効果があったのは、茶葉から入れた紅茶で、ウイルス混合から1分で、感染力のあるウイルス量が99%減少していました。さらに30分後には99.975%不活化しており、ほとんど全てのコロナウイルスが感染力を失っていました。

 奈良のお茶である大和茶も、30分で99.9%、ペットボトルのお茶でも99%が、ウイルスを不活化していることが分かりました。コロナ以前からお茶がインフルエンザウイルスに対しても不活化作用があることは確認されていました。

 伊藤園と静岡県立大学薬学部の共同研究で、培養細胞へのH1N1型のインフルエンザウイルスの感染実験において、緑茶の中に最も多く含まれる「エピガロカテキンガレート」を加えると、感染が予防されることが判明、さらに緑茶に含まれる「ストリクチニン」と呼ばれるポリフェノールでも同様の実験を行い、「エピガロカテキンガレート」以上の効果を認めています。

 医療施設の職員197人を2グループに分け、2009年11月から5ヶ月間、片方のグループにだけカテキンとテアニンのカプセルを摂取。インフルエンザの感染状況の違いを検証したところ、摂取したグループのインフルエンザ発症率は4.1%だったのに対し、摂取しなかったグループは13.1%が発症していました。

 その原理は、インフルエンザウイルスのスパイクの先にあるジョイント部分が、宿主細胞にくっつくことで、感染するのですが、ジョイント部分にカテキンがくっつくことで宿主細胞にウイルスが入れなくなるのです。さらにカテキン自体に細胞に入ったウイルス増殖を抑える作用や、ウイルスが細胞から出て、他の細胞に拡がる作用もブロックすることが確認されています。

 静岡県内の小学校の調査でも、2008年11月から4カ月間の2050人のアンケートで、1日1杯(200ml)未満の小学生に比べて、1日1~2杯飲む小学生で38%、3~5杯飲む小学生で46%、インフルエンザの発症が減っていることもわかっています。ちなみに静岡県の小学校の給食では緑茶が毎日出されているそうです。

 飲むだけではなく、静岡伝統「緑茶うがい」に関しても、2010年に308人、2011年に800人の高校生を対象とした二重盲検試験が行われ、ボトル入りの緑茶で1日3回うがいしたグループは、水でうがいをしたグループに比べて、インフルエンザ発症率が、有意差は出なかったものの、1回目の研究では約半分に減り、2回目の研究では約3割減っていました1)。ただこの結果に関しては、きちんと決められた回数のうがいができていた生徒が少なかったようです。

 ウイルスの細胞内への感染メカニズムは、共通しているため。新型コロナウイルスにおいても、ウイルススパイクにカテキンがくっつくことが、ウイルスの不活化を促すようです。これはインドのERA大学の実験でも明らかになっています。さらに緑茶にはテアニン、ビタミンC、サポニン、ストリクチニンなどが含まれ、コロナ感染による、体内炎症と大量の活性酸素の発生を抑えてくれることでも、重症化を防いでくれるのです。

 さらに実験で抗ウイルス効果が高かったのは紅茶です。紅茶は同じ茶樹から作られますが、茶葉に含まれる酵素で、酸化発酵して作られます。エピガロカテキンガレートだけではなく、発酵による紅茶ポリフェノールや、テアフラビン類にウイルスの消毒作用があるのです。日本大学薬学部の研究でも、エピガロカテキンガレート+テアフラビンで、抗ウイルス効果が高まることが報告されています。

 うがいといえばイソジンガーグルが有名ですが、イソジンを頻繁に使用すると、強力な殺菌効果によって喉の粘膜が傷つき、そこからウィルスが体内に侵入しやすくなってしまうことがあるといわれています。お茶の場合は、体の粘膜を傷つける心配がないため、積極的に行いたいものです。

 爆発的に増えているBA.5に対しての対策としては、紅茶のうがいや緑茶のうがいは有効です。殺菌作用の強い塩も加えて、番茶1杯(180cc)に天然塩を1.6グラム(小さじ1/3程度)入れた「塩番茶」でのうがいはさらに効果的であるようです。

 手軽なペットボトルでもカテキン量が多いものは、うがいでも飲んでも有効です。例えばヘルシア緑茶、160円(税別)/350ml、カテキン含有量540mg/350ml 。ヘルシア緑茶 うまみ贅沢仕立て、160円(税別)/500ml、カテキン含有量540mg/500ml 。お~いお茶 濃い茶、140円(税別)/525ml、カテキン含有量420mg/525ml 。などはカテキンが多いので、特に有効ではないかと思います。またうがい後に飲み干しても良いと思います。

 可能であれば外出時など、ウイルスの曝露が予想される場合には、20分に1回程度お茶を少量口に含むと、咽頭粘膜についたウイルスが不活性化しやすいと思います。ペットボトルなら持ち歩きもしやすいため、蒼野も安いところで仕入れて、感染爆発が落ち着くまでは出来るだけやってみたいと思います。また外食する際の飲み物も、緑茶か紅茶で決まりですね!

 自宅では、鮮度の良い茶葉を使って、緑茶や紅茶を淹れるのがオススメです。その場合はカテキンを茶葉から効率的に抽出する方法があるので、挙げておきます。

 茶葉は使う分だけ少量ずつ買って、新鮮なものを使う事。お湯は通常70~80℃ですが、90~95℃くらいで淹れるとよりカテキンが抽出されます。また長めに待つ事でカテキン濃度が高まります。カテキンは渋み、苦味の元ですので、味に関しては目をつぶってください。茶葉はしっかり袋の空気を抜いて酸化しないようにして、冷暗所に保管しましょう。

 「茶は養生の仙薬なり」と鎌倉時代の禅僧・栄西が『喫茶養生記』に記したように、お茶は古くから万病に効く薬として重宝されてきました。現在分かっている効果は、抗酸化作用、抗ガン作用、コレステロールを下げ、動脈硬化を予防する作用、抗ウイルス作用、虫歯予防、肥満予防と多岐にわたります。

 さらに紅茶には、食事中、食後の血糖値上昇を抑制する作用や、それに伴う糖化の防止、死亡率の減少、肌の老化予防、血圧の降下作用、なども加わります。また紅茶には、様々な種類があってそれぞれ味が違うのも興味深く楽しいですよね! 

  最近の蒼野の朝食は、基本紅茶か緑茶のみで済まして16時間ファスティングを行なっています。こういう健康効果の記事を見ると、うがいも含めて、生活にお茶をもっと取り入れたいと思った蒼野でした!

参考ページ: お茶による新型コロナウイルスの不活化効果について  奈良県立医科大学
 https://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/ochahp.pdf

        新型インフルエンザウイルス感染抑制効果

https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0497575_02.pdf

参考文献:

1) Effects of Green Tea Gargling on the Prevention of Influenza Infection in High School Students: A Randomized Controlled Study:  Published online 2014 May 16. doi: 10.1371/journal.pone.0096373

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