人類の本能=報酬系食欲!

2022/01/25

 今日は人類が持つ、二つの食欲について書いてみたいと思います。生物は生命を維持するために食べなければいけません。人類も同様で、体に必要な栄養を取り込むための食欲が、『恒常性食欲』です。前回の食欲のブログで書いたように、この食欲を左右しているのが、タンパク質欲です。前回の本を読んだ時には、食欲は必要なタンパク質が満たされれば、おさまるものなのだと蒼野は思っていましたが、どうやら違うようです。

 自然界の動物や昆虫など、生き物は全てタンパク質欲を満たすように食べていて、色々な食べ物を組み合わせることで、生命維持に必要な栄養を摂ることができれば、適正体重に落ち着くため、自然界には、肥満した生き物は、ほとんど見られません。

 人類も同じだと思っていたのですが、人類には二つ目の食欲があり、適正な食事だけで満足できる人は少ないようです。それが『報酬系食欲』です。『恒常性食欲』は人の自律神経の中枢である、視床下部でコントロールされています。しかし『報酬系食欲』は、視床下部とは別の場所である、中脳の腹側被蓋野から大脳基底核にある側坐核へ至る、報酬系の中枢によって、コントロールされているのです。

 人を肥満させ、健康寿命を短くしてしまう食欲が、この『報酬系食欲』なのです。皆様も、大好物や、目の前にあったら食べてしまう美味しい食べ物があると思います。そしてそれを食べると幸せを感じて、気持ちが良くなると思います。体に必要だから食べるのではなく、脳が快感を得るために食べる食欲が『報酬系食欲』です。

 美味しいものを食べると、報酬系からドーパミンが分泌され、脳は快感を感じます。快感という力は思っている以上に、動物を支配する力を持っています。理性や知識で、コントロールし続けることはとても難しい、強い力なのです。

 ネズミの実験があります。報酬系回路に電極を埋め込まれ、それが目の前のレバーにつながっていて、レバーを押すと報酬系回路が活性化して、快感が得られるようにしたところ、ネズミは、食事も水も摂らずに、全てを忘れてレバーを押し続け、餓死寸前になりました。

 人間においても、1970年代に精神疾患の治療で、脳に電極を埋め込んで治す、という試みがなされた時には、快感を起こす電気刺激を求めて、全てを忘れて、指に潰瘍ができるまで、スイッチを押し続けたと記録に残っています。

 これは、恋愛の時のメカニズムでもあります。報酬系が活性化し、たとえようのない喜び、快感に包まれます。食べることも忘れて、相手のためだったら、全てを投げ出すこともできたりするのです。蒼野が小学生だった頃の、古い漫画ですが、『愛と誠』中で、ヒロインの愛に恋した、岩清水弘が「きみのためなら死ねる!」と手紙に書いていたことを思い出します。

 困ったことに、同じ快感が食事で得られるため、人は『報酬系食欲』から逃れることができません。強い意志の力で、短期的なダイエットに成功しても、1年経つと、報酬系食欲に負けてしまい、ほとんどの人がリバウンドすることが分かっています。蒼野は健康長寿を目標に、一生続けられるダイエットを目指しているため、これは困ってしまいます。

 快感を生む美味しいものの代表は、ずばりスイーツや炭水化物です。タンパク質や塩分などは、必要な分が摂取できれば、食欲は治ります。しかしスイーツや炭水化物は、人類の歴史の中で、中々食べられなかったものでもあり、また余分に摂取しても、身体に溜め込んでおけることから、長い進化の過程で、遺伝子に美味しいものとして組み込まれているのです。

 これがお腹がいっぱいなのに、デザートを「食べたい」と思う、いわゆる「スイーツは別腹」という現象です。実際にスイーツを見ただけで、ドーパミンが分泌され、いっぱいだった胃の中に、新たに食べ物を受け入れるスペースができてしまうのです。

 ドーパミンは『もっと!もっと!』の脳内伝達物質です。目の前にあるだけで、まだ足りない、もっと食べたいと、食欲は止まることがありません。アルコールやギャンブル、ゲームと同様に、糖質や炭水化物が、依存の対象になることが分かっています。依存症になる糖質が、安くて溢れている現代は、肥満になるのが当たり前でもあるのです。

 アメリカで、肥満の人の満腹感について調べる実験が行われました。いくら飲んでも皿が空にならないような細工をして、肥満の人にスープを飲んでもらいました。満腹になったらスープを飲むのをやめていいと伝えてあるのですが、被験者はいくら飲んでもやめることがありません。そこで満腹になるのはいつかと問うと「スープ皿が空になったら」と答えたとのことです。

 これは食べた量を感じるメカニズムに、何らかの障害があることを示唆する結果です。内臓脂肪が増えてくるとレプチン(満腹ホルモン)、インスリンなどに対する抵抗性が起きています。食べても視床下部から、食べるのをやめる命令が出にくくなり、インスリンのために、余剰のカロリーが、さらに脂肪へと変わる悪循環が完成します。これがメタボリックシンドロームの本質です。

 『報酬系食欲』から逃れる方法は、いくつか提案されています。

 まず摂取する糖質量を減らすことです。糖質を過剰摂取すると、食後の血糖スパイクによって、インスリン分泌による低血糖から、強い空腹感が起きるため、さらに食べたくなってしまいます。それを繰り返すとインスリン抵抗性が出てきます。血糖スパイクを起こさないように、最後に糖質を摂ることと、量を減らすことが重要です。GI値の低い、食物繊維の多い食材を増やしましょう。

 二つ目は、間食などをしたくなったら、1分間、腕立て伏せやスクワットをすると、食欲は落ち着くことが多いです。身の回りに甘いものや、すぐに食べられるものは置かないことです。我慢すると、ストレスになって、食欲を増すコルチゾールや、グレリンが分泌されるので、環境を整えまることが重要なのです。

 三つ目は、朝食から夕食までを10~12時間以内に収めるようにする事です。これによって残りの12時間は空腹を感じづらくなります。この習慣は、運動トレーニングや糖質制限と比べると、1年後の定着率が高いことが報告されています。夕飯は早く、軽く済ませ、就寝まで3~4時間あけましょう。睡眠の質が深くなり、夜に食欲が低下することがわかっています。

 脳の報酬系に働きかけて、食欲を制御する薬が欧米で一時期使われたことがありました。肥満の根本原因に働きかける薬ですから、すごく効果があったと思われるかもしれません。しかし、これらの薬を飲んだ人は、自殺する人が増えたのです。人生にあるべき、様々な快感を無くしてしまうと、人は生きる喜びや目的を失ってしまう様です。

 そういう理由で、一生続けられるダイエットは、とても難しいことがお分かりいただけたでしょうか。蒼野自身が、今採用しているダイエット法は、軽い糖質制限をしながらの、16時間ファスティングです。満腹のメカニズムを正常化してくれることや、脂肪燃焼が、メインのエネルギーになっているため、お腹が空かない上、適正体重まで落ちて安定します。

 朝は、緑茶や紅茶やレモン水。ちょっとお腹が空いている時には、粉末のボーンブロススープにMCTオイルを入れて飲みます。昼は主食無しのお弁当、最後にリンゴなどのフルーツを食べて満足します。夕食は『報酬系食欲』も満足させるために、家族と一緒に美味しいものを食べます。大好きなご飯や、食後のスイーツまで、量は考えますが、満足行くまで食べています。お酒は飲んでも、週に1回程度で、ワイン1杯くらいでやめておきます。

 今の所、現在の食生活に不満はなく、ストレスも感じていません。会食の時などは、少しはめを外すこともあるのですが、BMIも21〜22程度で、もう2年近く変わっていません。現時点では、自分にとってベストな食事法ではないかと思っています。

皆様も、自分の食欲と、健康の折り合いが付けられる食事法を研究してみてくださいね!

過去ブログ:

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方の中で、月に1人程(まだ春までは忙しいので)オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。