コロナ禍ついに終焉?感染者数急減の理由とは!

2023/03/24

 最近発熱外来をしていて思うのは、本当にコロナ陽性者が減った事です。第8波真っ只中の頃は、10人中9人はコロナ陽性でしたが、最近では陽性になる人は本当に稀です。インフルエンザも減ってきており、ただの風邪かなと思う人が多いのです。どうして減ったのかなと、素朴な疑問が生まれたので調べてみることにしました。

 今年に入って、1月11日には約20万人/日だった感染者数は昨日の時点で8485人です。グラフを見ると順調に減っているのが分かります。去年の夏が第7波のピークだったので、暖かくなったからといってこんなに減るのには、何か理由があるはずです。マスクをしない人が増えても、減ってきているということは、皆んなの免疫力が上がったとしか考えられません。

 集団免疫を獲得すると、感染症は沈静化します。きちんと統計を取っている訳ではないのですが、発熱外来が忙しかった頃の感染者は、ワクチン未接種の人と、2回のワクチン後接種していない人が多かったように記憶しています。感染すれば免疫を獲得しますので、国民の大部分がワクチン、または感染で免疫が出来てしまえば、感染は減るはずなのです。

 COVID-19は、何度も変異するたびに、感染性が高まり、その分弱毒化しました。初期の武漢株の基本再生産数(1人の患者が何人にうつすかの数値)は2.9。これがアルファ株では4~5となり、デルタ株では5~9.5、オミクロン株では5.5~24と、どんどん感染しやすく変わってゆきました1)。

 他のウイルスと比較してみると、うつりやすくて有名な麻疹で12~18、水ぼうそうでは10~12です。移りやすい疾患になる程、集団免疫でうつらなくなるために必要な、免疫を持っている人の割合は高くなります。麻疹が集団免疫で広がらなくなる割合は92~94%、水痘は90~92%ですので、オミクロン株以降の、感染力の強い株が広がらなくなるためには、国民の90~95%が免疫を持っていることが必要になるということです。

 去年9月に新型コロナの、感染者数の全数把握は行われなくなりました。症状の軽い人はわざわざ調べなくなり、もちろん無症状の人もいるので、感染者数は今把握できているものよりもかなり多かったものと思われます。去年の11月に行われた、献血時の血液8260人分を調べた調査では、感染後にできてくる、抗N蛋白質抗体の保有率は26.5%と報告されています。

 日本人口1億2,300万人から換算すると感染者は3,260万人と試算されますが、去年の時点で感染が確定していた数字は2,300万人でした。感染者のうち1000万人が検査を受けていなかったことになります。

 そして今年の2月にも、同じように13121人の献血時の血液を調べたところ、抗N蛋白質抗体の保有率は42.3%まで増えていました。その時点の明らかな感染者数は3318万人。抗体から試算される感染者数は約5200万人ですので、2000万人が知らない間に感染していたということになります。

 3回以上のワクチン接種で、免疫を獲得している人が約7000万人弱、すでに感染した人が5200万人とすると、重複があるとしても、90%以上の人に、すでに免疫が出来ている可能性があります。集団免疫が獲得されたことで、感染者数が激減しているのだとすると、本当にコロナ禍は終わったのかもしれませんね。

 しかしこのまま誰も罹らなくなるかというと、そうでは無いようです。重症化予防の免疫は長く残りますが、感染防御のための血中抗体価は、急速に低下してしまうからです。オミクロン株では、ワクチンや感染後に上昇した抗体価は、30週過ぎる頃には、ほぼゼロに近づきます。重症化は減るはずなので、新型コロナは、うつりやすい、ただの風邪に変わってゆくようです。

 ウイルスは宿主が死んでしまえば、ウイルス自体も生き残れないため、一般的には感染力が上がると、病原性は低下する傾向があります。しかしこれには例外もあります。HIV(エイズ)ウイルスや、エボラ出血熱ウイルス、鳥インフルエンザウイルスなどは、いずれも感染力も高く、病原性も高いまま、残っているウイルスです。

 新型コロナウイルスが、そうではなくて本当に良かったと思います。過去の例には、猛威を振るったスペイン風邪があります。推定では、世界で5億人以上が感染し、5000万人以上が死亡したとされています。日本でも人口の約25%~30%が感染し、約39万人が死亡しました。COVID-19は3月10日時点で、世界で6億7657万人が感染し、688万人が死亡しています。スペイン風邪恐るべしです。

 100年前のスペイン風邪は、H1N1インフルエンザウイルスによって引き起こされたパンデミックでした。今もこのウイルスは変異した形で、季節性インフルエンザとして残っています。インフルエンザワクチンはこのウイルスに対しても作られています。歴史から考えるとCOVID-19も、コロナウイルスによる風邪という形で、残ってゆくのでしょうね!

 エンテロウイルスやアデノウイルスなどは、高温や湿度により活性化しやすくなるウイルスですし、インフルエンザは典型的な冬風邪です。COVID-19に関しての研究では、低温・乾燥した環境でウイルスが安定し、感染力が高まる可能性が示唆されています2)。おそらく冬にひどい風邪を引いたなら、インフルエンザかコロナかを調べるようになるのでしょうね!

 今後も問題になるのは、コロナ後遺症です。インフルエンザでも、感染後に慢性疲労症候群(CFS)を発症することはあるようですが、その頻度は低いとされています。一方COVID-19は感染後に、長期間続く倦怠感、疲労、筋肉痛、関節痛、呼吸困難、認知機能の低下が、数多く報告されており、ロングCOVIDと呼ばれています。

 中でも慢性疲労症候群(CFS)を発症すると、楽しい日常を奪われ、長い闘病が必要になる方がおられます。その原因も頻度も正確には分かっていませんが、感染者の10%から30%がロングCOVIDの症状を経験していると報告されています3)。この点については、今後もただの風邪と侮ってはいけません。

 蒼野はこれからも、後遺症について、アンテナを立てて行こうと思っています。現時点では、免疫力をちゃんと保つ、生活習慣を送るということが一番大事なのでは無いかと思っています。

 つまり、健康的な食事と十分な水分摂取、禁煙、節酒、十分な睡眠と規則正しい生活、週に数回で良いので適度な運動を行うこと、ストレスコントロール、適切な体重維持、定期的な健康診断、を心がけることが大切ではないでしょうか?

 このところの患者数を見ていて、本格的にコロナが明けたことを実感しつつある蒼野でした。 

参考文献:
1)The effective reproductive number of the Omicron variant of SARS-CoV-2 is several times relative to Delta. ; J Travel Med. 2022 May 31;29(3)

2)Temperature, humidity, and latitude analysis to estimate potential spread and seasonality of coronavirus disease 2019 (COVID-19). JAMA Network Open, 2020 3(6), e2011834.

3)6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study. ;  THE LANCET 397(10270), 2021, 220-232

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