テロメアと健康寿命!

2022/04/12

 皆様はアンチエイジングに興味があるでしょうか? 蒼野はとても興味があります。今日はアンチエイジングに密接に関わっていると言われるテロメアの話を書いてみたいと思います。

 テロメアとは我々のDNAが入っている染色体の末端にあります。哺乳類の場合、DNAの末端部分は「TTAGGG」という6個の塩基のセットが何個も連なっており、この6塩基のリピート部分がテロメアと呼ばれています。遺伝情報は入っておらず、細胞分裂を繰り返すときに、この部分が削れてなくなることで、DNAを守っているものになります。

 DNAの靴紐の端のプラスティックの部分のようなイメージです。無くなるとDNAの靴紐がバラバラになってしまいます。細胞分裂する時、DNAがコピーされるのですが、完全にコピーすることができずに、末端の部分だけ欠けてしまうことがしばしば起こります。欠けても良い部分がテロメアなのです。テロメアが無くなってしまうと、DNAが損傷してしまうため、細胞分裂ができなくなります。

 1961年、米ウイスター研究所のL・ヘイフリック博士は、若い人の細胞を培養すると、細胞は50~60回分裂するともうそれ以上分裂しなくなることを発見しました。40歳~80歳の細胞を培養をすると、細胞の分裂する回数が年齢の分だけ少なくなっていました。培養細胞には分裂の限界があり、加齢によって残された回数が減ってゆくことがわかったのです。

 細胞が分裂できなくなると、新しい細胞が作れなくなり老化細胞となります。細胞が作る組織の再生ができなくなり、機能が保てなくなるのです。老化細胞はそのまま細胞死したり、ゾンビ細胞として、活性酸素や、炎症性サイトカインを撒き散らしたりして、組織を障害し、加齢に伴う病気全般に関係します。

 ノーベル生理学・医学賞を受賞した米国のエリザベス・ブラックバーン博士がテロメアを発見しました。テロメアは、細胞が分裂するたびに短くなっていくことや、テロメラーゼによって、テロメアが部分的に再建されることなどがわかりました。テロメアが限界以上に短くならなければ、細胞は分裂を続け、組織は新しくなるため、老化が遅くなります。

 テロメアは老化に伴う疾患と、密接な関係があります。「テロメアが短い人は動脈硬化が進んでいることが多い」といった報告や、「テロメアが短い人はがんになりやすい」とか、「テロメアが短いと心疾患と脳血管疾患のリスクが高くなる」といった報告が多く確認されてきています。

 そのためテロメアは「命のろうそく」とか「命の回数券」と呼ばれています。デンマークで行われた双生児を対象とした研究でも、見た目の若い人のほうが、テロメアが長い傾向が見られ、短いテロメアの割合が少ないことが観察されました。テロメラーゼを活性化し、テロメアを長いままキープできれば、健康長寿につながる可能性があるということです。

 テロメラーゼを体内に補充する医学的な治療も考案されましたが、細胞が無秩序に分裂する癌細胞で、テロメラーゼの働きが活性化していることが分かり、この治療は癌を発症、増殖させるリスクが高くなることが判明したため、薬剤開発は失敗に終わっています。

 ブラックバーン博士とエリッサ・エペル博士の臨床研究で、日常生活でのストレスでテロメアが短くなることが発見されました。ストレスホルモンであるコルチゾールがテロメラーゼの働きを抑えるため、慢性的なストレスは結果的にテロメアを短くします。しかし同じようなストレス下にあっても、楽天的で、そのストレスに挑戦するという人はそれほど短くなっていませんでした。自己肯定感の強い人や楽観主義の人はテロメアが残りやすいのです。

 マインドフルネス、ヨガ、気功、太極拳などでゆったりとした気分になるとテロメラーゼの働きが高くなり、テロメアは長くなることもわかっています。これらを毎日12分間行うだけで、うつ、不安、不眠が改善し、免疫機能を高め、慢性炎症が治まり、糖の代謝も改善します。驚くべきことに、白血球のテロメラーゼの働きを40%も高めることもわかりました。

 この研究から、日常生活とテロメアの関係が調べられるようになり、健康長寿につながる生活習慣が徐々に明らかになってきています。テロメアを短縮させる生活習慣としては、1、ストレス 2、食事(肥満) 3、運動不足 4、喫煙と飲酒 5、短い睡眠などが挙げられています。

 食事に関しては、オリーブオイルやMCTオイル、青魚などの良質の脂肪の摂取、海藻や新鮮な野菜、果物などを中心にして、カロリーを摂り過ぎないことが重要のようです。内臓脂肪が多くなると老化が進行します。英国の研究で、肥満の人は、そうでない人に比べてテロメアが平均8年分も短かいことが判明しています。週1回以上の16時間断食はテロメアを保ちやすくなります。

 運動に関しては、じっと座っていることが特に悪いと言われていて、大阪大学の40~70代の日本人約8万人を19年間追跡した研究によると、1日5時間以上テレビを観る人の死亡率は2時間半未満の人の2.5倍になるそうです。パソコンも同じですので、デスクワークの人は蒼野も含めて要注意です。

 スウェーデンの研究でも座っている時間が短い人ほど、テロメアが長いことが判明しており、まめに席を立ち、長時間座りっぱなしでいないことは、現代人に必須の習慣にする必要があると思います。しかし過酷な運動を続けている人のテロメアは短縮が認められており、コルチゾールが出るほど激しい運動はする必要が無いのです。軽い有酸素運動を30分以上、できれば毎日、少なくとも週2~3回程度行うように心がけましょう。

 タバコを1日1箱、10年間吸い続けた人は、吸っていない人と比べてテロメアが2年分短かくなっていました。日本の研究で、大量飲酒による依存症患者では、テロメアの長さが半分になっていることも確認されています。テロメアを無駄遣いしないように、禁煙と少量飲酒にとどめることは重要と考えられます。

 テロメアと睡眠時間との関係については、毎日5~6時間しか寝ていない高齢者のテロメアは、短い傾向でしたが、7時間以上寝ている高齢者のテロメアは、中年の人と同じかそれ以上の長さでした。

 今日はテロメアという視点から、健康長寿について考えましたが、テロメアを保つための対策は、今までも書いてきた、健康習慣と変わらないことがわかると思います。カリフォルニア大学予防医学研究所の研究でも、ライフスタイルの改善の指導により、5年後のテロメアが、指導していない人は3%短縮したのに対して、10%伸びていることが確認されています。

 地道ではありますが、本当に毎日の生活習慣は重要ですね! 蒼野は死ぬのは仕方ないと思いますが、死ぬまでにベッドの上で過ごす時間は無くしたいと願っています。食事、運動、睡眠、ストレスのコントロールをこれからも続けてゆくつもりです。

 嫌な事はやり過ごし、1時間に1回は、椅子から立ち上がろうと思う蒼野でした!

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