感染者数が毎日更新されている今日この頃、皆様はお元気に過ごされているでしょうか?蒼野は同じ職場で、感染者が出たりしていますが、今の所何の症状もなく、(感染しているのかどうかは調べていないので分からないのですが、2週間前に3回目のワクチンは打っています)元気に仕事をしております。
今日はビタミンDが、感染症に有効であるという論文を、幾つか見つけたので、紹介しておきたいと思います。現時点では、ビタミンDが新型コロナを予防するという確固たるデータはありませんが、重症化については、十分な血中濃度が保たれていれば、メリットがありそうなのです。
アイルランドの研究で、40歳以上の新型コロナ罹患患者33名について、経過が報告されていまいます。12名は重症化して、ARDSとなり、うち4名が死亡され、8名は回復しています。21名は重症化せずに回復しました。血中ビタミンD濃度を測定したところ、ARDSを合併した12名の方が、10.8ng/mlと、血中ビタミンD濃度が低い傾向が見られました。
軽症の21名の、血中ビタミンD濃度も、平均で16.4ng/mlと、感染予防に理想的とされる40ng/ml以上には程遠い数値でした。アイルランドは高緯度の国で、日照も少ないため、政府が特に冬季にはビタミンDを摂取するよう勧めている国でもあります。症例数が少ないため、エビデンスは強くはないですが、ビタミンDの免疫への効果を考えると、コロナの重症化と関係があるかもしれない、と蒼野も思いました。
もう一つは、2020年にスペインで行われた研究です。ビタミンDを治療薬として投与することで新型コロナ感染症の重篤化を防げることが、世界で初めて報告されました。二重盲検法で、76名の新型コロナ感染患者を、ビタミンD服用群50名と非服用群26名に分け、その後の病状の変化について調べています。
その結果、ビタミンD服用群では50名のうち1名が重症化してICUに入室したのに対し、非服用群では26名中半分に当たる13名がICUに入室しました。さらに死亡者について見ると、ビタミンD服用群では死亡者はゼロでしたが、非服用群では2名が亡くなりました。
ビタミンD製剤を服用することで、新型コロナ感染症の重症化を大幅に防ぐだけでなく、死亡すら防ぐ可能性を示唆する内容でした。これらの論文から、ビタミンDの摂取は、新型コロナ感染症の経過に有利に働くことは、間違いはなさそうです。
今までにも、ビタミンDは、Caの吸収以外に、インフルエンザ等のウイルス感染症に有効であることが知られていました。ビタミンD欠乏症は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の一因となることも判明しています。その致死率も、低い活性型ビタミンD濃度と関連しています。
活性型ビタミンDが十分な血清濃度を保つことで、マクロファージがカルシトリールを活性化します。カルシトリールが、抗ウイルス因子の合成のための遺伝子を活性化し、ウイルスの複製率を下げるのです。またビタミンDは細胞性免疫反応を調整し、炎症性サイトカインの濃度の低下、抗炎症性サイトカインの濃度を増加させることで、サイトカインストーム、ARDSを防ぎます。
また、上気道炎予防の目的で、ビタミンDを投与することは有益とされており、WHOも上気道炎予防に、ビタミンD摂取を推奨しています。直接肌に日光を浴びにくくなる冬季に、風邪を始めとする感染症が増えることにも関係している様です。
ビタミンDは原料のコレステロールから作られた「プロビタミンD3」という物質が、皮膚で紫外線のUVBと反応して「プレビタミンD3」という物質になり、それがさらに体内で変化することで作られます。裸に近い格好で、毎日屋外で食料を探していた、原始人のビタミンD濃度は、現代人よりも高かったに違いありません。
昨今の美白、美肌ブームもあり、最近では、皮膚癌やDNAの破壊など、紫外線の弊害のほうが、メディアで取り上げられることが多く、紫外線は避けるべきものとされ、UVカットも大いに勧められています。
あるクリニックに来院された患者様1700名のデータによると、至適値の40ng/ml以上がキープできていたのは僅かに5%程度、8割近くが30ng/ml未満の「不足状態」にあり、4割近くの方が20ng/ml未満の「欠乏状態」でした。
韓国の20代の男女(男性311名、女性438名)の血中ビタミンD濃度の研究でも、男性の65.0%、女性の79.9%が、ビタミンD濃度が20ng/ml未満の欠乏状態にありました。太陽光を浴びることで、わずか10~15分程度の日光曝露で3,000~20,000 IUのビタミンDが得られます。屋外に出ず、出る時もUVカットの化粧品によって、徹底的に紫外線をカットしてしまうことが、ビタミンD不足の1番の原因の様です。
食べ物からの摂取も、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2018年)によれば、ビタミンDの供給源となるサケ、マス、サバや魚の缶詰、タラ肝油や、ブラウンマッシュルームなどが食卓に登ることは少なくなっており、摂取量は不足しています。
米国医学研究所が定めた公式の推奨食事許容量は、19~70歳の成人で1日600 IU=15㎍、71歳以上では800 IU=20㎍です。一方、日本人のビタミンDの平均摂取量は6.9㎍です。20~40代女性に限定すれば平均4.8~5.6μgです。こんな時代ですから、日光を浴びない人、UVカットしている人は、サプリメント摂取も考慮しても良いかもしれません。
また加齢と共に、ビタミンDの合成能力は低下します。70代のビタミンD合成能は20代と比較して75%程度、80代になるとほぼ半分程度に減ってきます。紫外線を浴びても、十分なビタミンDが作れなくなるため、高齢者もビタミンDのサプリメントを考慮する必要があります。
ビタミンDは脂溶性のビタミンですので、過剰投与は良くありません。一般的には1日4000IU以上の摂取は避ける方が安心です。ビタミンD3の方が、ビタミンDの血中濃度を高めて、長時間キープするため、望ましいとされています。血中濃度に合わせて、ビタミンDを1日あたり1000単位から4000単位摂取する事が勧められています。血中濃度が測定できない場合は、2000単位のビタミンDを毎日摂取すると良いでしょう。
皆様の感染予防に少しでも役に立てば、嬉しいと思います。陽が出ている時間にはビルの中にいるため、毎日2000IUのビタミンD3を飲んでいる蒼野でした。
参考書籍: 医者が教える最高の栄養 ビタミンDが病気にならない体をつくる 満尾 正
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