歯周病と認知症の驚くべき関係!

2022/04/03

 今日は認知症と歯周病の関係について書いてみたいと思います。厚生労働省の統計で認知症の67.6%を占める、アルツハイマー型認知症と歯周病の、密接な関係性が徐々に明らかになってきています。今日はその論文から考察してみたいと思います。

 現在注目されているのは、歯周病菌のひとつであるPg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)です。この菌の成分であるリポ多糖(LPS)がアルツハイマー型認知症患者の脳内の「老人班」というシミの周りから検出されています。そのLPSによってミクログリア(脳内の免疫細胞)が活性化し,脳炎症を引き起こすことも報告されています。

 2020年に発表された、九州大学や北京理工大(中国)などの研究チームによる実験結果によると、3週間に渡ってPg菌を直接投与したマウスと正常なマウスの脳血管や脳細胞に蓄積されたアミロイドβの量を比較すると、蓄積量が10倍に増加していました。

 アミロイドβは脳の血管内皮細胞にあるRAGE(Receptor for Advanced Glycation End products)という受容体によって、脳内に取り込まれます。Pg菌を投与したマウスではカテプシンBという酵素が増えることによって、RAGEが約2倍に増加していたのです。

 勿論ヒトでこれほど高濃度のPg菌が血中に入ることはないのですが、歯周病がある人の、歯周病菌の内、約25%程度はPg菌が占めており、長い年月の間に、血中に入ってくるPg菌が、アミロイドβを蓄積する可能性が示唆されています。

 歯周病は50歳代以上の約80%がかかっている疾患と言われています。罹患率は40代以降で圧倒的に多くなり、注意が必要です。アミロイドβの沈着や老人斑の形成は、認知機能障害を発症する15~20年以上前の40歳代前半から始まっていると考えられており、同時期から増加する歯周病をコントロールすることで、アルツハイマー病の発症時期を遅延させたり,発症後の重症化を軽減したりすることができる可能性があるのです。

 加齢と共に認知症の有病率は上昇し、90歳を超えると2人に1人が認知症と診断される時代になっています。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。今後世界的に平均寿命が延びるにつれて,アルツハイマー病の罹患者は2050年までに、現在の3倍に達すると推定されているのです。

 アルツハイマー病は慢性の炎症性疾患であることが判明しています。脳以外の部位で生じた炎症によりミクログリアが活性化し,脳の炎症を誘発してアルツハイマー病のリスクを高めていることが示唆されています。歯周病は、歯肉に炎症を起こし、そこから直接、毛細血管内に歯周病菌や炎症物質が入り込んで、全身の慢性炎症を引き起こす疾患ですので、認知症リスクを遠ざけるためには、そのコントロールが重要となります。

 蒼野が今まで診てきたアルツハイマー患者様も、認知症になってからは、自分で口腔ケアができなくなっていることが多く、歯科受診もしていないため、歯が少なくなっている人が多い印象です。ご家族には、歯医者さんに連れて行ってあげるようお話させてもらっていました。

 ヒトは噛めなくなると、急速に認知機能も低下してきます。脳に刺激が入らなくなるため、脳機能が使われないことで、廃用性萎縮を起こすのです。アルツハイマー病モデルマウスの歯を抜歯した実験では,神経細胞障害や認知機能障害は生じますが,抜歯群と非抜歯群間の脳内アミロイドβ蓄積量に有意な差は認められなかったことから、噛まなくなること自体でも、認知症が進行してゆく様です。

 近年になって歯周病とアルツハイマー病に関する疫学的な調査が行われるようになりました。健常者と比較して,アルツハイマー病患者様では、歯周病菌に対する抗体価が有意に増加していることも確認されました。

 歯周病のリスクとしても、認知症のリスクとしても、糖尿病が挙げられます。歯周病と糖尿病の関連性については、多くの研究が行われており,相互の相関関係が強く示唆されています。歯周病,糖尿病,アルツハイマー病の三者による負のスパイラルが形成されている可能性が高いので、その点も十分な注意が必要となります。

 歯周病、歯肉炎症、菌血症を予防するためには、次のことが必要です。
1、食後のブラッシング→こまめなプラーク除去で細菌数を減らし、菌に栄養を与えない。
2、頻繁に間食をしない→食べる回数が多いほどプラークが溜まります。
3、糖質摂取は控えましょう→特に甘い飲料や飴、ガムはNGです。糖尿病リスクも上昇します。4、食事の時は20~30回程度噛む→唾液で口腔内を綺麗にします。
5、寝る前に食べない→睡眠中は唾液も少なくなるので、歯磨きしてもリスクが上昇します。
6、フロス/歯間ブラシ→1日1回は歯の隙間の汚れを取る必要があります
7、3ヶ月に1回程度、歯科受診し、歯垢除去のメンテナンスをしてもらう。

 口腔内の細菌は『バイオフィルム』といって粘性の歯垢(プラーク)に埋まる形で歯の表面にこびりついています。耳かき1杯分のプラークの中に、数億個の細菌が生息しています。これは通常のブラッシングでは取りきれずに溜まってきてしまいます。『バイオフィルム』内の細菌は、消毒薬や抗菌剤も効きにくく、白血球も届きません。歯科で、歯周ポケット内も含めて、超音波や器具を使って剥がすのが一番効果的な方法となります。 

 歯周病は初期にはほとんど自覚症状がありません。歯肉が赤みを帯びたり、歯間の歯肉が腫れて丸くなってきたり、ブラッシングで出血したりするのは、炎症を起こしているサインです。早めに歯科受診しましょう。

 歯周病の大きなリスクは、糖尿病、喫煙、ストレスが挙げられます。やはり生活習慣が大事であることは言うまでもありません。食事、運動、睡眠については、今までのブログをご参照くださいね。

 蒼野が気をつけていることとしては、上記の事に加えて、朝になると口の中にウンチ10g分の菌がいると聞いてからは、朝イチでブラッシングして口をゆすぎ、睡眠中に繁殖した菌を、飲み物と一緒に飲み込まない様にしています。あとは歯間フロスが面倒なので、ジェットウォッシャーを使っている事ですかね。ジェットウォッシャーもドルツに変えてから、ブラッシング中の出血や、歯肉が腫れることが少なくなった様に思うので、私見ですが、良いように思っています。

 そろそろ歯医者さんに、行かないといけない!と思っている蒼野でした。

参考文献: 歯周病はアルツハイマー病を悪化させる     石井直之ら 

                        日本歯周病学会会誌 2018 年 60 巻 3 号 p. 147-152

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