お酒とタバコ、年代別の付き合い方!

2022/09/26

 健診やドックの仕事をしていて、蒼野がとても気になるのが、喫煙と飲酒です。患者様には減らしたり、止めたりする気は無いかどうか聞いたりするのですが、「気持ちはあるけどなかなかねー」と言われてしまいます。最近読んだ記事に、高齢になったら、喫煙や飲酒はやめなくても、生命予後はあまり変わらないとありましたので、少しその辺を考察してみたいと思います。

 20代から1日一箱タバコを吸っていたり、毎日お酒を2~3合以上飲んでいる50代の人は、脳ドックで微小血管が傷んでいるサインが出ている人が多いです。慢性虚血性変化と呼ばれる変化ですが、特に症状はありません。加齢で出てくるものなのですが、普通は70代になってからが多いのです。

 動脈硬化などの血管の老化は、小さな血管から影響が出てきます。脳の微小血管はお酒やタバコで傷めつけられているという事なのだと思います。小さな血管が詰まることで、この変化が起こりますが、自覚症状が無いこともあって、それを説明しても、なかなかやめられない人が多いのが現実です。

 まず百害あって一利なしと言われる喫煙ですが、大きなリスクが2つあります。1つ目は動脈硬化です。大量の活性酸素を発生させる事で、血管を内側から酸化、変性を起こし、傷ついた部分に血が固まって閉塞したり、血がドロドロになって詰まったり、血管の壁が弱くなって出血したりします。つまり喫煙者は心筋梗塞や脳卒中に明らかになりやすくなるという事です。

 もう一つが呼吸器への影響です。一日一箱、20年以上喫煙している人の20%が慢性閉塞性肺疾患になります。二箱/30年では70%が罹患します。徐々に肺胞が傷害され酸素が取り込みにくくなり、気管支が浮腫んで、痰が多くなり、気道が狭くなります。息苦しさが増してくると、日常生活に支障が出ます。体が動かしにくくなり、酸素ボンベが生活に必要となるのです。

 息をしても酸素が取り込めない状態というのは、陸に上がった魚のようなもので、非常に苦しいので、肺ガンになってもタバコは辞めないと豪語していた愛煙家の方でも、そうなってから止める方は多いようです。蒼野は喫煙した事がないので、理解が難しいのですが、50代くらいで止めておけば、リスクが少ないのになあと思ってしまいます。

 しかし65歳以上になると、喫煙者と非喫煙者の生存曲線があまり変わらなくなるという現象が見られるそうです。喫煙によって、肺癌や心筋梗塞を起こす人は、65歳までに死んでしまうからとのことです。この年まで無事に何十年もタバコを吸い続けていても、病気にかかっていない人は、タバコに強い何らかの因子や生活習慣を持っている可能性が高いということになります。

 喫煙の健康への影響は21年禁煙すると、非喫煙者と同等になるくらいまでリスクが下がるそうです。平均寿命が80代である現代では、65歳を過ぎればリスク軽減が起こるまでに亡くなる確率が高いとも言えます。大好きな喫煙をしながら、楽しく人生を全うする方が良い人も、確かに居られるように思えます。

 時代と共に、公共の場で喫煙できるところは狭められ、徐々に喫煙率は下がってきているようです。現在の非喫煙者の割合は、男性73.5%、女性88.5%で、女性はもともと吸っていない人が73%と大多数です。男性の場合は元喫煙者が36.4%と半数は禁煙組です。

 禁煙の理由は1位が健康のためが61.4%でダントツで、2位のタバコ代が高い37.4%、喫煙できる場所の減少が17.5%、家族のためが16.8%、口臭や匂いが気になるの15.1%となっています。自分の病気をきっかけに禁煙したり、可愛い孫のために禁煙したり、結婚を機に禁煙したり、定年後にタバコ代の高さに気づいて禁煙したりする人が多く、単に健康のために踏み切れる人は少ないようです。

 高齢になってからの喫煙には、精神安定効果や、喫煙仲間との交流や連帯感などのメリットを活かしつつ、副流煙などに気をつけて、周囲に迷惑をかけないことが重要かも知れません。我慢しすぎない、ストレスを溜めないことのメリットが大きい場合には、喫煙にも長生きにつながる効果がある場合があるかもしれませんね。

 アルコールについては、蒼野は自分がほとんど飲まなくなってからは、断酒のメリットを大いに感じているのですが、まだ社会的にタバコ程のプレッシャーがない事もあって、止められる人はほんの少数のように感じます。タバコに比べても周囲への迷惑もかけにくいですしね。たまのお酒は良いストレス発散になることも自分で経験して感じております。

 しかしアルコールは依存性のある薬物です。簡単に脳内にドーパミンを分泌させることができるため、やめたくてもなかなかやめられません。飲んでいるうちに徐々に、少量のアルコールではドーパミンが出にくくなるため、量が増えてゆきやすいことが一番の問題です。アルコール依存症に至ってしまえば、家族や周囲との人間関係が壊れてしまいます。孤独になり、健康も失って、入院してくる可哀想な人は沢山診てきました。

 老化や糖化を促進し、睡眠を破壊するアルコールは、脳や身体にとっては一滴も飲まない方が良いものです。しかし定年で職場を離れ、人との繋がりが薄れてゆきやすい年代では、一緒にお酒を楽しむ仲間はかけがえの無い存在になり得ます。共に飲みながら楽しむことで、連帯感やコミュニケーションが生まれるという大きなメリットもあります。

 お酒を健康的に楽しむには、いくつかのポイントがあります。少しでも老化を抑えるためには、抗酸化成分を含む赤ワインは良い選択になります。ワインはGI値も低いため、糖化も起こしにくいお酒になります。逆にGI値が高く、最も糖化を促進するお酒はビールになります。喉が乾いた後の1杯目のビールは最高ですが、沢山飲まないことをお勧めします。

 糖化を抑えるには蒸留酒が、醸造酒よりも有利です。もしワインが無い店であれば、焼酎やウイスキーのような蒸留酒を選びましょう。いずれにしても飲み過ぎは禁物です。何度も書いていますが、一晩に飲む量はアルコールにして、男性が20g(ワイン2杯)、女性が10g(ワイン1杯)までがベターです。

 飲むのは友人や家族と一緒の時だけにしましょう。少量のお酒を介したコミュニケーションは、ストレス発散や気分の切り替えにとても有効だと思います。そういう意味では必ずしも禁酒は必要ないように思います。人生の一つの楽しみとして、誰かと一緒に飲んで、親交を深めることは重要だと思います。

 避けて欲しいのは一人酒です。量も増えやすいですし、一人で飲んでいて、めちゃくちゃ楽しいと思えることは無いはずです。一人酒が多くなる人は、メンタルが悪くなりやすい人が多いのです。うつ病はアルコールを飲んでいるうちは治りません。アルコールへの依存度が高まり、どんどん蟻地獄に落ちてゆくのです。

 アルコールを睡眠薬代わりにするのはやめましょう。夜中に代謝されたアセトアルデヒドが、交感神経を刺激し、ぐっすりと眠れなくなります。毎晩寝酒をしていると、メンタルが悪くなりやすく、認知症の心配も出てきます。

 酒とタバコという嗜好品は、古くから人を魅了してきました。健康のためにやめた方が良いと言っても、何か転機が訪れないとやめれないというのはよくわかります。蒼野も事故が無ければ、まだ毎晩飲んでいたと思います。でも今は止めれて良かったとつくづく思っています。これも運命の一つなのかもしれませんね!

 皆様がまだお若いのならば、是非タバコは止めて欲しいと思っています。お酒は量が増えないように気をつけながら、誰かと飲む機会がある時だけに抑えられるように頑張ってみてくださいね! 高齢であればどちらも適度に楽しんで欲しいと思います。そしてもし転機が訪れたら、止めて、朝までぐっすり眠れるあの気持ち良さを取り戻して欲しいと思います。

参考書籍: 60歳からはやりたい放題    和田 秀樹

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