先日ニュースで、有名サッカー校のコーチが、生徒を殴ったり蹴ったりしているのを見ました。それ自体は、本当にいけない事だと思いますが、職を失うリスクもあるのに、どうしてそんなに怒らないといけないのか、不思議に思ってしまいました。今日はアンガーマネージメントについて、調べてみたので書いてみます。
2020年6月にパワハラ防止法が施行されました。大企業を中心とした多くの組織が、その対策に取り組んでいると思います。昭和の時代のように、上司が人前で部下を怒鳴りつけ、みんながビクビク仕事をしているような職場は、生産性も低く、人が辞めてゆけば、会社も成り立たなくなります。
蒼野も仕事を始めてから、様々な病院や、クリニックに勤めましたが、上司の人柄というか、怒り方で、勤めている間の、幸福感は大きく違っていたのを覚えています。Google社が2012年からの大規模な労働改革で突き止めたのは、「生産性を上げ、チームとして成功するためには、心理的安全性が欠かせない」ことでした。
安心してなんでも言い合える職場、自分らしく働ける職場が、『心理的安全性のある職場』ということになります。上に立つ者が、自分の怒りをマネジメントできなければ、生産性が高く、楽しく働ける職場にはならない、という事だと思います。
ではどうしてヒトは怒ってしまうのでしょうか? 多くの人は外的要因に怒りの源があると思っています。「部下の発言でイライラする」「取引先が、常識以上の要求をしてくるのでムカムカする」とかです。しかし怒っているのは自分です。怒りは自分の中から生まれ出る感情だからこそ、コントロールできるという事なのです。
現代は多様性の時代に突入しています。働き方や価値観も人によって様々なのです。特に世代の差は大きいなあと、蒼野は自分の娘の話を聞いていて思います。自分にとっての「常識」は、相手にとっても「常識」になるとは限りません。その違いに腹を立てても、何も解決できないのです。
怒りは身近な相手に対して強くなる傾向があります。「長く一緒にいるのだから、これくらいはわかってほしい」とか、「少しくらい怒っても許されるだろう」と、甘えてしまいやすいからです。蒼野は滅多に怒りません。でも妻や母親の、ちょっとしたことで、ムカッと来ることがあるのは、甘えがあるのでしょうね。自覚なしに大切な人を傷つけてしまわない様に、十分意識する必要があります。
自分にとって譲れない価値観、信条、信じているもの、つまり「こういうときはこうするべきだ」「こうあるべきだ」と思う事と、現実が違った時に、ヒトは怒ります。しかしこれも、人それぞれ考え方が違っているので、そこに正解や不正解はない事も意識しておきましょう。「~するべき」という不要なこだわりは捨てましょう。どうしても必要なこだわりに関しては、柔らかい言葉で理解を求めましょう。
ヒトは誰でも、自分が信じているものを元に、現実に起こることを判断しています。部下が何度も同じミスを繰り返し、「何度言ったらわかるんだ!」という場面でも、怒鳴っただけでは伝わりません。「同じミスを繰り返されてしまうと、さすがにわたしも今後どう指導していいか、いまとても困っているんだよ」と素直に怒りの奥にある気持ちを伝えた方が、改善に向かう確率が高くなります。
怒りにまかせた衝動的な行動を回避するためのテクニックとして「6秒ルール」というものがあります。ヒトは怒りを感じてから理性が働くまで約6秒かかります。この6秒間をやり過ごすことさえできれば、怒りからくる衝動的な行動を防ぐことができます。
その6秒間に行うことが、いくつかあります。その怒りが0~10の値のうち何点かを頭の中で数値化する癖をつけましょう。続けていれば、徐々に自分の怒りの傾向も見えてきます。心が落ちつく言葉やフレーズを頭の中に思い浮かべるのも良い方法です。愛犬のことを思ったり、ゆっくり深呼吸するのも良いです。自分に合った方法を見つけ、習慣にしましょう。
逆に相手の怒りに巻き込まれたときは、相手の感情を変えようと思ってはいけません。ご存知の通り、他人の感情は変えられません。喧嘩は売り言葉に買い言葉で始まります。ときには相手の怒りをまともに受けとめず、スルーすることも必要です。カッときても、6秒の間に、自分にとって重要でないことに気付いた場合には、自分とは相容れない人だと諦め、スルーを選択しましょう。その場から離れるのも有益です。
パワハラは相手がどう受け止めるかです。注意することは、事態の改善のために必要です。怒り方、叱り方が問題なのです。チームとしてやってゆくためには、相手の成長や意識、行動の改善につながるように、「次からこうしてほしい」ということを、しっかり伝える必要があります。
繰り返しになりますが、信条や常識や価値観は人それぞれです。抽象的な言葉で叱ると、受け止め方が違えば、こちらのリクエストが伝わらなくなります。何故、叱る必要があるのかを、具体的に示す必要があるのです。
『人間の悩みは、全て人間関係の悩みである』とアドラー心理学でも書かれています。感情のままに怒鳴ったりすると、信頼関係が失われ、修復は難しくなります。自分にとっても、相手にとっても、仕事や家庭を続けてゆく上で、ずっとストレスがかかり続ける事になります。
身の危険を感じたとき、目の前の敵と戦うか逃げるかという選択を行う際の感情が怒りです。これは自分を守るために元々備わっている生存本能なのです。また怒りの根底には、自分の価値観で受け入れられない、苦しさや寂しさ、不安や悔しさなどの感情が潜んでいます。
怒りの感情は、我慢するのでは無く、これからの良好なコミュニケーションを保ってゆくために、コントロールが必要なのです。コントロールした上で、自分の本当の感情を分かってもらえるように話し、怒りを放出しましょう。アンガーマネージメントは、誰もが必要な、社会人としてのスキルなのです。
怒りと健康との関係は、怒りを溜めやすい人ほど、血圧が上昇し、心筋梗塞や不整脈による突然死のリスクも上昇すると言われています。しかし怒りを爆発させた場合も、怒りが治まり、我に帰った時に、後悔や不安などの感情に襲われる人も多いです。どちらも嫌ですよね!
人生を楽しくするためにも、ストレスを減らすためにも、誰にでも湧き上がる感情である怒りを、上手にコントロールしましょう。6秒待ちながら、どのくらい怒っているのか、何が原因で怒っているのかを冷静に考えましょう。周囲にも伝染する感情なので、爆発させるのではなく、こういう理由で、こんな気持ちになったということを説明し、理解してもらうことが重要です。
怒りのエネルギーは大きいです。それが大きなモチベーションになって、良い方向に自分や未来が変わる可能性も高いのです。同じ怒るのなら、そんな風に怒りたいと思います。
プーチンが、怒りに任せて核のボタンを押さないことを、切に切に願う蒼野でした。
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