今日は蒼野が知らなかったジェネリック医薬品についての話題を書いてみようと思います。定義から言えば、ジェネリック医薬品は、最初に開発され、治験を経て世に出されたオリジナルの先発医薬品と同じ薬で、新薬の特許が切れた後、異なる製薬会社で製造販売される薬と、今まで蒼野は理解していました。
特許が切れた後は成分や製法が公開されるため、その通りに作れば全く同じ薬になるはずなのですが、実際のところはそうでは無いようなのです。ジェネリックの効能にはばらつきがあり、効能格差は最大40%も違っている製品があることが判明しています。
それをよく知っている、第一線の病状が厳しい患者様を多く扱う病院の医師は、ジェネリック薬を信用していない人が多いようです。ジェネリック薬に変えて、肝機能障害が出たり、ひどい場合にはアナフィラキシーショックが起こったり、間質性肺炎を合併したりという経験があると、患者様に使いたくなくなるのは蒼野もよく分かります。
ジェネリック薬は、先発薬と同じ薬効成分は入っているものの、先発品に比べて、違う成分が混入しているようです。日本でジェネリック医薬品を作る会社は、今年の4月時点で37社、現在日本で流通するジェネリック薬の約4分の3弱を提供しています。蒼野はこんなに多いことも知りませんでした。
中小の企業では、副作用が出ても、十分なモニタリングができず、そのままその薬が撤収されて終了することもあり、同じロットの薬を使った場合に、患者の血中濃度を測って、ちゃんとレポートしたり、その製品の成分を全部分析したりできるのは、最大手の沢井製薬ぐらいとのことです。
蒼野は去年は頭痛クリニックに勤めていたのですが、夏くらいから、薬の在庫が無くなるので、別の薬で代用を考えてくださいと、薬局にお願いされることが増えました。どうしてかなと思っていたのですが、これがジェネリックの品質管理が問題で、業務停止が増えたためということを聞きました。
発端は2020年12月、福井県の「小林化工」が製造した水虫などの真菌症の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入したことが発覚しました。自動車事故や転倒など、死亡例を含む健康被害が239人も出てしまったのです。普通に作っていれば有り得ないことだと思います。
厚労省などの立入調査を通じ、承認内容と異なる医薬品の製造や二重帳簿の作成、品質試験結果の捏造などが発覚し、2021年2月9日から、過去最長の116日間の業務停止命令が通告されました。二重帳簿を作成していたのは約390品目、承認されていない手順で製造していた品目は約180品目にのぼることも分かりました。
調べてみると、滋養強壮剤や子ども用のかぜ薬などの医薬品について、有効成分の量が最も少ないケースで、本来入れるべき量の1%にまで減らしていたり、承認されていない添加物を加えて製造しているケースも発覚しました。睡眠導入剤の混入は「原料を継ぎ足す作業」を行うために別の薬の容器と取り違えたことで起きましたが、そもそもこの作業自体も、国が承認していない工程のものでした。
これを機に他のジェネリック医薬品会社も、行政による査察や各社の自主点検など不正をチェックする取り組みが強化されました。健康被害は無いものの、10年以上前から「日医工」では品質試験で不適合となった錠剤を砕いて、製造販売承認書と異なる方法で処理し、適合品としていました。出荷前の一部の試験を行わないなども発覚し、32日間の業務停止命令を受けました。
その他にも2021年には、岡見化学工業、久光製薬、北日本製薬、長生堂製薬、日新製薬などのメーカーが業務停止命令を受けたため、流通が滞り、薬の在庫が不足する事態に陥ったようです。いずれのメーカーも違反の一部は10年以上前から行われていたということでした。
これには国の方針が深く関わっているようです。2000年代初頭、高齢化に伴う医療費抑制策が声高に唱えられ、国は後発品使用促進策に舵を切りました。また薬価もギリギリまで抑えたのです。そこからジェネリック業界の急成長が始まり、たとえば「日医工」の売上げは、2010年には500億でしたが、2020年には1900億に成長しています。
「小林化工」の3代目の小林社長が就任したのが2005年ですが、実はこの年に改正薬事法(現・医薬品医療機器等法)が施行されました。それまでは原材料や水以外の溶媒などを記すだけだったのが、製造方法や工程管理などを詳しく記載するよう求められるようになったのです。
この時「小林化工」は市場に500品目を供給しており、決められた製造方法や工程管理を満たした製品はほとんど無かったため、一気に500品目を市場から引き上げれば、患者の生命にも関係するという判断から、二重帳簿、品質試験結果のねつ造などで、表面上の適合品として供給することに会社ぐるみで方針決定したのです。
2017年6月の閣議決定において、2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とすることが決まり、実際2021年4月には、ジェネリック医薬品の使用割合は80.6%まで増加しています。当時ジェネリックの普及率は40%程度が適当と言われていた時期でした。生産ラインを増やしても、品質の管理が十分できにくい数字であった可能性は否めません。
中小のジェネリックメーカーにおいては、やはりこの急激な使用増加に合わせた供給を行うには、かなり無理があった可能性があります。2005年以前に各々で行っていた製造方法を、全て基準に沿って決められた製造方法に変更することは難しかったのだと想像します。
健康被害が出た「小林化工」は業務停止のあと、沢井製薬の新設子会社に、全工場を譲渡、従業員転籍することとなりました。しかしまだ以前の生産量には戻っておらず、2021年から始まったジェネリック薬剤不足は現在も続いており、100品目以上のの供給が滞っています。
「ジェネリックをオススメするか、しないか」というアンケートに答えた医師50人の結果では、オススメすると答えた医師は、13人(26%)にすぎず、そしてオススメしないが12人、どちらともいえないが25人だったそうです。もちろん問題も無く、先発品と効果も変わらない薬はあるのですが、これまでの経過をみると、どこまで信用するのかは、個人の判断に委ねられるのでは無いでしょうか?
医療技術は進歩し、高度となって医療費は上がってゆきます。脊髄性筋萎縮症治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」は1億6707万円、白血病治療薬「キムリア」は3350万円など、保険適応が認められる超高額薬も増えてきています。
『人の命は地球よりも重い』と言われますが、医療費の高騰は様々な歪みを生んでいるように感じます。たとえ先発薬であっても、何種類も合わせて飲んだ時のリスクは分かっていません。理想は薬を飲まずに健康を保てる事以外ありません。
健康を支えるのは日々の生活習慣です。食事、運動、睡眠、ストレスを上手にコントロールして、健康長寿を目指しましょう! 今度から薬を出す時には、先発品やジェネリックメーカーも考えて選ばないと! と感じてしまった蒼野でした。
参考書籍: 日本で治療薬が買えなくなる日 五味 洋治
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