ストレスに強くなるには!

2021/11/13

 今日はストレスとは何か? ストレスとうまく付き合ってゆくためにはどうしたら良いのかを、脳科学的に考えてみます。

 原始時代からの脳は、敵に遭遇するような、危険な状況に出会った場合には、ストレスを発生させます。ストレスが引き金となって、『闘争か、逃走か』を選択し、全力で戦ったり、全力で逃げる準備を瞬時に整えることができるように作られているのです。ストレスは優れた警報システムだったのです。

 ストレスが発生すると、扁桃体が興奮し、それがHPA軸(視床下部、下垂体、副腎軸)と呼ばれるシステムを稼働させます。視床下部にホルモンを出させて、下垂体を刺激し、さらに下垂体からのホルモンで、副腎がコルチゾールというストレスホルモンを放出するのです。

 この反応は一瞬のうちに起こり、コルチゾールに全身が反応します。筋肉を最大限に動かすために、心拍数が上昇して血圧が高くなり、脳は鋭敏になって神経が研ぎ澄まされ、怪我をしても沢山出血しないように、末梢の血管は収縮します。

 しかしコルチゾールが出続けると、扁桃体はさらに興奮し、HPA軸は制御不能の状態となります。感情が暴走して、パニック発作が生じてしまい、理性を失った行動につながったりするのです。

 危険な状況を乗り切るには、パニック発作を防ぐ必要があります。そのブレーキになる部分が、海馬と前頭葉です。扁桃体がアクセル、海馬と前頭葉がブレーキになります。

 原始時代では、敵から逃げても、戦っても、結果はどうあれ、短時間で決着がついて、生き残ることができたら、すぐにコルチゾールの分泌量が減りました。しかし現代社会は、ストレス社会とも言われるように、慢性的なストレスが多く、我々はコルチゾールが出続ける生活を送り続けています。

 悪いことに、慢性的にコルチゾールにさらされると、海馬と前頭葉は、萎縮してゆきます。扁桃体のブレーキがかかりにくくなれば、さらにストレスがストレスを呼ぶ状態となり、いつも心配で、不安な状態が続くようになり、神経症やパニック障害などのメンタル疾患に進んでゆくのです。

 コルチゾールは運動するときにも上昇します。しかし運動が終わればすぐに低下します。定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因の、ストレスを抱えている時でも、コルチゾールの分泌量はわずかしか、上がらなくなってゆくのです。運動がストレスに過剰に反応しないように、身体をコントロールしてゆくのです。

 運動を習慣化すると、脳の血流量も増えます。前頭葉や海馬にも新しい血管が作られ、血液や酸素の供給量が増え、老廃物も取り除かれます。最近の研究では、海馬も前頭葉も、運動を続けていると物理的にも成長し、大きくなることもわかっているのです。

 また海馬では、ストレスに対抗して、脳の興奮を鎮める脳内伝達物質であるGABAを放出するニューロンが、運動することで、新しく作られることも発見されました。運動すれば、GABAが放出され、気持ちが穏やかになって、不安やストレスが減少するのです。

 3000人を超える生活習慣の研究で、週2回以上、20分から45分くらいの、ランニングやサイクリング、スイミングなどの、心拍数が少し増加するような運動をしている人は、不安やストレスとは無縁であることもわかっています。少し効果は下がるようですが、ウォーキングでもその効果は認められています。

 運動強度としては、最大酸素摂取量VO2 Max × 70%1程度(目安としては息が少し切れるくらいの、ややきつい運動、脈拍では、20代 150/分、30代 145/分、40代 140/分、50代 135/分、60代、125/分程度)を目標に、運動習慣がない人は、ウォーキングから始めると良いと思います。

 蒼野も事故で車に乗れなくなり、毎日1万歩、歩く生活になって、しばらくしたら、あまりストレスが気にならなくなっていました(結構ストレスはあるのですよ….)。よく眠れるし、気分よく目覚めます。自分でも運動の恩恵は実感しています。もともと脳天気でもありますが、あまり不安も感じません。

 社会や環境や人間関係を変えるのは、なかなか難しいことです。手っ取り早く、運動習慣で自分を変えてゆきましょう。人間は動くために作られています。座りっぱなしの生活は死亡率も高めると言われています。特に朝の散歩は気持ちが良いですよ! 寒くなる前に是非始めましょうね。

参考書籍: BRAIN 一流の頭脳 アンダース・ハンセン

一流の頭脳 [ アンデシュ・ハンセン ]
価格:1760円(税込、送料無料) (2022/4/9時点)楽天で購入