ストレスを力に変える!

2022/06/30

 今日はストレスを利用する方法について書いてみたいと思います。蒼野もやはりストレスはあまり好ましいものではなく、生きて行く上では、払わなければいけない税金みたいなものだと思っていました。出来れば払いたくないって感じです。

 精神論っぽくなりますが、蒼野自身は、ストレスは受け止め方で変わるため、なるべく嫌な事に対する意味付けや考え方を変えて、ストレスと捉えないように(誤魔化して?)対処してきました。ストレスがたくさんある生活は、健康を害し、寿命まで短くなると考えて、避ける方法を模索してきたのです。

 しかし最近の研究では、一概に「ストレスは有害である」とは言えず、ストレスそのものが問題ではなく、ストレスがあったときにどう捉えるかが健康に影響するかどうかを決めていることがわかってきました。これはストレスを、無理やりそうで無いものと捉えるのではなく、「ストレスを受け入れることが正しいストレスマネジメントである」という事になります。

 アメリカで3万人の成人を対象に「ストレスを感じたかどうか」、「ストレスは健康に害をもたらすか」という質問を行いました。その後8年間、追跡調査したところ、死亡リスクが高まっていたのは、強度のストレスを受けた参加者のなかでも、「ストレスは健康に悪い」と考えていた人たちだけでした。

 こういう考え方は医師の間ではポピュラーではありませんでしたが、心理学者は認識していました。他にも、「年齢を重ねることをポジティブに考えている人は、ネガティブに考えている人よりも長生きする」、「他人を信用できると考えている人は、信用できないと考えている人よりも長生きする」といったことがわかってきているからです。

 基本的にストレスというものは、人類が動物として生き残るための反応です。敵に出会った時に扁桃体が反応し、コルチゾール、アドレナリン、エンドルフィン、DHEA、ドーパミンなどのストレスホルモンを分泌し、戦うか逃げるかの反応を一瞬の間に準備するのが本来のストレスの役割です。大脳辺縁系のような、動物であった時から存在している、古い脳が最初に反応します。

 人類は古い脳の反応、つまりストレスを、新しい脳、大脳新皮質の理性の力で修飾することができるのです。つまりマインドセット次第で、ストレスがあっても、長期的な健康や幸福感が変えられることがわかってきました。またこれは意外に容易いことでもあるのです。

 ストレスに関するマインドセットの実験としては、参加者が2種類のビデオ映像、ストレスによるパフォーマンスの向上など、ストレスのよい点を語ったビデオと、ストレスが健康を害するなど、ストレスの悪い面をを語った映像のうちどちらかを見ました。ビデオを見た後に模擬面接をおこない、唾液のストレスホルモンの値を調べました。

 ストレスを感じた時は、唾液中にもコルチゾールとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が分泌されます。コルチゾールは血糖値を上げ、脂肪や筋肉を分解し、炎症や免疫を抑え、長期的には脳を萎縮させ、メンタルを悪化させます。DHEAは逆に、脳の成長を助ける男性ホルモンで、治癒力と免疫機能を高め、ストレスから回復し、学ぶ働きがあります。

 コルチゾールに対するDHEAの割合が高い程、ストレスに関するさまざまなリスクが減り、うまく対応できることがわかっています。模擬面接後の唾液検査で、どちらのグループもコルチゾールは上昇していましたが、ストレスが良いというビデオをみたグループは、DHEAの値が高く、コルチゾールの反応を緩和していました。これはマインドセットで反応が変わるという事です。

 現代人のストレスは、古代に有用であった、ストレスがあるたびに殴ったり、逃げたりする反応で対処するものではありません。命の危険はなく、仕事、育児、人間関係、介護、健康問題などのどれかに、チャレンジする時に生じるものが多いのです。やりがい、生きがい、大きな目標がある人にとって、ストレスは必ず目の前に現れるものなのです。

 調査ではストレス度指数の高い国ほど繁栄度も高いとされていますし、大きなストレスを感じていても、精神的に落ち込んでいなければ幸福度は高いです。また別の調査では、ストレスを感じた経験の多い人ほど、人生に大きな意義、生きがい、やりがいを感じていることが明らかになっています。またそういう人の死亡率は、そうでない人に比べて、30%も低いのです。 

 ロチェスター大学の研究では、大学生の数学の模擬テスト前後での唾液中のストレスホルモンを調べた結果、「ストレスを感じるとテストの成績が落ちるどころかストレスを感じている方がむしろ良くなる」ということを伝えたグループの方が、伝えなかったグループよりも、テストで高得点を獲得しました。しかも3ヶ月後の本試験の時の成績は、さらにその差が広がっていました。

 ストレスには光と影、ネガティブな面とポジティブな面があるようです。ストレスが多いときでも、「このストレスは越えられるから目の前にある」「人間には成長する能力が備わっている」と信じていることは、ストレスホルモンの出方を変え、身体を健康に保ち、パフォーマンスを上げてくれるのです。

 先日も書いたように、ヒトにはネガティブな情報により反応しやすい、生き残りのためのバイアスが、根強く存在しています。ネガティブな情報は半自動的に入ってきますが、ポジティブな情報は意識的に取り込む必要があるのです。しかし今までの実験で見たように、ストレスはパフォーマンスを上げてくれる有用なものです。緊張するほど力が出るとマインドセットしておけば、悪い影響を回避できるのです。

 まず「ストレス=悪」という考え方は捨てましょう。「ストレス=学び」であり、あえてポジティブに捉えることで、ストレスレベルが低下します。コルチゾール以外のDHEAやオキシトシン、目標に向かってゆく姿勢で、ドーパミンも分泌され、やらされているときに出てくるノルアドレナリンが減ってきます。

 やらなければならない事を行う時に、その中に楽しみを見つけることで、ベータエンドルフィンや、内因性カンナビノイドといった物質も出てきます。これらはドーパミンの分泌を促進し、やる気がモリモリ湧いてきます。ストレス、逆境は少なすぎてもいけません。健康上のリスクが最も低かったのは、ストレス、逆境を経験した数が中程度の人だという研究結果が出ています。

 もちろん逆境の数が多くても、考え方次第で変えることができると思います。蒼野も事故の後病院のベッドで、本当にこれからどうやって生きていこうかと、絶望していた日々もありました。しかし、起きてしまったことはどうにもならないので、ゼロからやりたい事を考えるようになりました。

 脳内化学物質に注目するのが良いですね!ストレスは悪いものでは無かったのです。うまく脳内物質を出してくれるチャンスと捉え、毎日良かったこと、楽しかったことにフォーカスして、過ごしてゆきたい蒼野でした。

参考書籍: スタンフォードのストレスを力に変える教科書   ケリー・マクゴニガル

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。