今日は月曜日でした。皆様は土日にゆっくり休養して、元気たっぷりで1日過ごせたでしょうか? 今日は土日に休みすぎると、月曜日から、週の前半の調子が台無しになってしまうという話を書いてみたいと思います。
1週間目いっぱい働いて、土曜日は溜まったビデオを見たり、普段できないゲームをして夜更かし! 日曜の朝は、1週間の睡眠負債を取り戻すため、ゆっくり寝溜めする。ついついしてしまいがちな、休日の過ごし方です。特にコロナになって、出かけることも、ままならないため、こんな方も多いのではないでしょうか?
しかし十分眠ったはず、休んだはずなのに、月曜日からだるく、気分が重くなります。実はこの寝だめというのも体内リズムの乱れを引き起こすことが分かってきました。平日の疲れを癒すためにある程度遅起きすることはOKですが、寝過ぎはNGです。
仕事、学校、家事などがある平日の睡眠と、制約のない休日の睡眠との差によって引き起こされる、“平日と休日の就寝・起床リズムのズレ”は、「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれています。2006年に、ドイツのTill Roenneberg教授が提唱した新しい概念です。長期にわたって続くと、健康を害しかねない状態なので、注意が必要です。
平日の朝はで決まった時刻に起きるけれど、休日は遅寝、遅起き。このような就寝・起床時刻のズレが大きいほど、体内リズムは乱れます。ソーシャル・ジェットラグは社会的生活による時差ぼけなのです。
ポイントとなるのは朝日を浴びるタイミングです。朝寝坊した休日には、太陽の光の刺激を受けるタイミングが遅れてしまい、海外旅行に行った時のように、私たちの体内時計は勘違いしてしまいます。朝のセロトニン分泌が遅れ、夜のメラトニン分泌に影響することで、体内リズムが乱れてしまうのです。
休日の2日間、朝寝坊しただけで、体内時計が30~45分遅れてしまうことが、複数の研究で確認されています。1度ずれてしまった体内時計をもとに戻すのは、簡単ではありません。週明けの前半まで眠気や、日中の疲労感を引きずってしまいます。
ソーシャルジェットラグの影響を受けやすいタイプがわかっています。ズバリ『夜型』のあなたです。『朝型』『中間型』『夜型』などのクロノタイプは、睡眠・覚醒リズムの 背景にあるメラトニン,コルチゾール,深部体温などの生理機能リズム位相もそれぞれ異なっており,朝型に対して夜型では平均して2時間ほど、後退しているのです。
『夜型』の人は、起床時刻から必要睡眠時間を逆算して、早い時刻から就床しても,深部体温の下降やメラトニンの分泌開始といったコンディションが整っていないため,なかなか眠れません。結果的に,夜型では、他の型に比べて、平日の睡眠時間が短縮し,睡眠負債を抱えやすくなります。夜型が休日に寝だめすると、特に睡眠・覚醒リズムが不規則になりやすいのです。
どんなタイプでも、休日に、寝だめして太陽を浴びないと,夜型傾向になります。夜間の活動時間が長くなり,人工照明への曝露時間が増加します。一般的な室内の人工照明でも,メラトニン分泌の抑制が起こり、眠れなくなるため、睡眠相が後退する悪循環に陥り、ソーシャルジェットラグが発生するのです。
朝の欠食や運動不足,カロリー摂取の配分が、1日の後半にシフトするなどの行動変化が生じることも知られており、摂取時刻が、肥満のリスク要因となり得ることが複数の研究から示されています。
数日程度のごく短期間の睡眠負債でも、食欲調節ホルモンであるレプチンの低下、グレリンの上昇が起こり,食欲が増大します。また6日間の4時間睡眠後には、耐糖能は40%程度,インスリン感受性は 30%程度低下することも示されています。また、ストレスホルモンであるコルチゾールやカテコラミン分泌が増加してくるので、自律神経も失調します。
6万5000人以上のヨーロッパ人のデータから、ソーシャル・ジェットラグ時間が長くなるほどBMIが高くなる、という相関があることが報告されました。体脂肪量が多く、メタボ率も高い、という結果も報告されています。
つまりソーシャルジェットラグは、隠れた生活習慣病の、リスク要因になっているのです。年齢が若いほど陥りやすく、20代では61%、30代では53%が、1時間以上のソーシャルジェットラグを示しています。
また脳卒中の疫学研究によると、年齢や性別にかかわらず、脳梗塞の発現が月曜に有意に多いという結果が出ています。自殺件数についても、男性では月曜の自殺のリスクが、1番少ない日曜の約1.5倍と高く、週末に向けてリスクが下がるということが示されています。
最近では、在宅勤務とオフィス出社の使い分けによるソーシャルジェットラグも問題です。コロナの流行によって、テレワークを導入する企業が増加しましたが、完全リモートとする企業がわずかで、多くの場合は必要に応じて出社という形をとっています。出勤の日と在宅の日の時間差で、健康を害する可能性が高まっているのです。
体内時計のリズムを一定に保つことは、生活習慣病の予防や、メンタル面の健康維持には欠かせない、重要なポイントです。平日も、休日も夜更かしせずに、同じ時間に寝て、同じ時間に起きて、太陽の光を浴びましょう。朝の散歩や、散歩から帰って、よく噛んで美味しい朝食を食べることも、体内時計のリセット効果が高い方法です。
毎日元気で活動的に過ごすために、睡眠時間は2時間以上、ずらさないように生活しましょうね。もし睡眠負債が溜まる様なら、30分以内の昼寝で乗り切りましょう。コーヒーを1杯飲んで、タイマーを掛けて、30分でカフェインの力を借りて起きるカフェインナップなどもお勧めの方法です。
年を取って、ますます夜更かしできなくなったけど、休日の朝散歩が好きになった蒼野でした。
参考文献: 社会的ジェットラグがもたらす健康リスク 三島 和夫 日本内科学会雑誌 105 巻 9 号 1675-1680