ポストバイオティクス?!

2022/09/12

 ヒトの健康に良い影響を与える、善玉菌を育てるために、菌自体を補給するプロバイオティックスと、菌の餌を供給するプレバイオティックスが重要だという話は、皆様ご存知のことと思います。今日はそれを発展させた、ポストバイオティックスという少し耳慣れない、新しいお話について書きたいと思います。

 ポストバイオティックスというのは、善玉菌が作り出す身体に良い成分の事です。有益な代謝物は、短鎖脂肪酸、機能性タンパク質、細胞外多糖などです。免疫に良い影響を与えたり、アレルギーを抑えたり、ストレスを緩和したり、腸内環境を改善したりします。大事なのはこういった有用な物質が、毎日ちゃんと産生されているかどうかなのです。

 善玉菌を増やすことは大事ですが、結果的にその善玉菌が健康に良い物質を作り出すことが、本当に大切なことなのです。そのためにはポストバイオティックスを、ちゃんと作り出すことができる善玉の酵素が働ける環境が大事なことになります。

 身体の中で起こる反応全てに、酵素が関与しています。酵素はたんぱく質でできている物質で、食べたものなどをばらばらに分解したり、分解したものを必要な形に組み立てたりします。分解するもの、組み立てるものに応じて、何千種類もあり、それぞれ別の働きをしています。

 世の中には身体に良い食べ物や、スーパーフードと言われる食べ物も山ほどあります。しかしそれを食べた時の効果は人によってまちまちなのです、食べ物はちゃんと酵素で消化分解され、体内に吸収される必要があります。その成分を使って身体に良い物質を酵素が組み立て、それが働くことで、初めて健康効果が出るということです。

 酵素が働かなければ、いくら栄養のあるものを食べてもまったく意味がありません。食物の効果は、我々の細胞が持っている酵素+腸内フローラが持っている酵素によって決まるのです。我々の持っている酵素は変えられないので、自分の腸内フローラにいる細菌が必要な酵素を作れるように、食べ物の組み合わせを考えることはとても重要なことになるのです。

 ということで今日は目的別のポストバイオティックスを作るための、有効な食材の食べ合わせについてご紹介したいと思います。このコロナ時代に必須なのは、免疫力アップの組み合わせです。ウイルスや細菌が侵入した時に最初に働く自然免疫の細胞がマクロファージやNK細胞という免疫細胞です。

 マクロファージやNK細胞が持つ酵素が作るのが、強い殺菌作用がある一酸化窒素です。一酸化窒素の材料はアミノ酸の一つであるアルギニンです。これに免疫細胞を活性化する作用のあるビタミンDとビタミンAを一緒に摂取すると、免疫細胞の一酸化窒素合成酵素によって、ポストバイオティックスである一酸化窒素の産生が高まります。

 例えば、アルギニンを多く含む鶏肉に、ビタミンDを多く含む椎茸を組み合わせた料理が、おすすめです。ビタミンDの豊富な椎茸を親子丼に入れると、鶏肉のアルギニンと卵のビタミンAが加わり、最強の組み合わせとなります!

 逆に、免疫が過剰に反応しすぎるとアレルギーになります。免疫暴走の一つの原因が、腸のバリア機能の低下です。腸もれが起こると、免疫暴走を引き起こし、全身の炎症を惹起します。このバリア機能を維持してくれるのが短鎖脂肪酸になります。また短鎖脂肪酸は免疫が暴走しないようになだめてくれる、Tレグ細胞という免疫細胞も増やしてくれるのです。

 Tレグ細胞は、ビタミンAやベータカロテンが、レチノール代謝酵素によって変化する物質によっても増加します。またTレグ細胞のエネルギーを生み出してくれるビタミンB2も重要な物質です。つまりアレルギーを抑えるにはビタミンAやベータカロテン、ビタミンB2が同時に摂れるレバー×ニラ×人参の、レバニラ炒めがおすすめになります。

 オメガ3脂肪酸から作る物質が、アレルギー対策に期待できることも知られています。体内の細胞にある酵素だけでは、アレルギーに効果のある物質は作られにくいこともあるのですが、納豆菌の持つ酵素が、オメガ3脂肪酸に働いて、アレルギーを抑えることが判明しています。理想的な食べ合わせは、まぐろ納豆&アボカドになります。アボカドがまぐろのオメガ3を、酵素が働きやすい形に変えてくれるため、とても効率よく抗アレルギー物質が作られます。

 次はストレス対策です。鬱に悩む人、不眠に悩む人に絶対必要な、幸せホルモンであるセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から作られます。トリプトファンからセロトニンを作るトリプトファン水酸化酵素が働くにはビタミンB6が必要です。これを組み合わせて食べる事で、ストレスに強くなることが出来ます。

 トリプトファンを含む食材はチーズ、牛乳、大豆、鰹、マグロなどです。ビタミンB6は鮭、鰹、マグロ、鳥ささみ、玄米やバナナに含まれています。組み合わせるとしたら牛乳やチーズにトリプトファン、鮭にビタミンB6が入っているため、鮭のクリームパスタや、鮭のチーズ焼きなどが、理想的な組み合わせになりそうです。

 ポストバイオティックスの代表的な物質が短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は腸の細胞のエネルギーになるため、善玉菌が元気になる食材を組み合わせて食べると、腸は活発に活動し、細胞が酸素を消費します。腸内の酸素が少なくなり、短鎖脂肪酸で酸性の環境になると、悪玉菌や病原体が住みにくくもなります。

 短鎖脂肪酸は我々の体内の酵素では作ることはできません。それゆえに腸内環境が大事になってくるのです。腸内細菌の持つ、いくつかの酵素が、次々に働くことで、短鎖脂肪酸が生み出されます。短鎖脂肪酸の原料は、乳酸菌やビフィズス菌が作る、乳酸や酢酸なのです。

 水溶性食物繊維やオリゴ糖は腸内の糖化菌の餌となり、糖化菌の酵素で、乳酸菌やビフィズス菌の餌となる糖に変わります。納豆菌はこの糖化菌の一種なのです。乳酸菌やビフィズス菌が住みやすい腸内環境のための食材が納豆と切り干し大根の食物繊維と玉ねぎのオリゴ糖を混ぜた、そぼろ納豆玉ねぎになります。

 納豆と一緒に水溶性食物繊維の豊富な、牛蒡や切り干し大根、海苔、めかぶ、オクラ、キノコなどを一緒に食べると、乳酸菌やビフィズス菌にとって最高の腸内環境が用意できるのです。ヨーグルトにオートミールなどの発酵性食物繊維とオリゴ糖入りの蜂蜜をかけるのも良い組み合わせですが、日本人の腸はやはり昔から食べている納豆料理の方が、合いやすい様です。

 善玉菌と善玉菌の餌を食べるというだけではなく、身体に良い物質ができやすいように、その代謝で必要な酵素の働きを良くすることまで考えて、食材の組み合わせを選ぶというのは、蒼野にとっても新しい知識でした。納豆菌がどこに働くのかも分かったので、考えながら組み合わせてみようと思いました。

 新しい腸活法、皆様も試してみませんか? 蒼野は美味しそうに感じたまぐろ納豆&アボカド、椎茸入り親子丼、そぼろ納豆玉ねぎを作りたいなあと思いました。鮭のチーズ焼きはうちでは良く食卓に並んでいます。他にも原理を知った上で、美味しい組み合わせを見つけてゆきたい蒼野でした。

参考書籍: さまざまな健康効果を最大化する 善玉酵素で腸内革命    國澤 純

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。