体温が低い人!

2022/07/27

 コロナのチェックのために職場で、毎日体温を測っている蒼野です。同じ表に記入してゆくのですが、人によっては体温が35℃台の人もいたりするのが、最近気になるようになってきました。夏なので、自覚的には冷えということはないかもしれませんが、低体温が健康にどんな影響があるのか書いてみたいと思います。

 私達人間の体温は平熱が36.5~37℃くらいとされており、この範囲内が理想とされています。これは体内の酵素が最も働きやすい温度であり、これを外れると、酵素の働きが落ちるために、代謝が悪くなり、免疫力も下がってしまいます。

 最近は、平均体温が36℃に届かない、痩せ気味で疲れやすい低体温の子供や、大人が増えています。1957年に発表された日本人の平熱の報告では、10~50歳代の健康な男女の平均値は、36.89±0.34℃(ワキ下検温)でした。しかし2008年には、大人の平均体温が36.1℃と下がってきており、生活習慣の変化が原因ではないかと疑われています。

 体温が1℃下がると、1.免疫力37%低下、2.基礎代謝12%低下、3.体内酵素活性50%低下、と大きな影響が出てしまいます。低体温になれば、血行も悪くなり、自然治癒力が低下し、太りやすくなって、エネルギーが不足するため、生活習慣病など多くの病気にも罹りやすい状態になるのです。

 がんについては35℃くらいが最も増殖しやすい温度と言われており、がん温熱療法が存在するように、体温が高いとがん細胞が死にやすくなります。また冷えると痛みも強くなります。低体温によって、リウマチや神経痛、関節痛、頭痛も酷くなりやすいことが指摘されています。

 さて低体温の原因とは何なのでしょうか? 主な理由は次の6つです。

1、水分の摂りすぎ 

 1日2Lくらい水分を摂るほうが良いとよく言われますが、喉が乾くのは細胞内の脱水からです。うまく細胞内に水分が移行しない状態では、喉が渇きます。そこで沢山水分を摂ると、細胞間質などに水分が滞り、浮腫もひどくなり、身体を冷やしてしまいます。

2、体を冷やす食べ物の摂りすぎ 

 最近はビニールハウスや、農業技術の進歩もあり、旬でない食べ物がいつでも食べることができます。主に夏が旬のものや暑い地域で収穫される、地面の上にでき、外気に野菜の温度を逃しやすい野菜や果物は、身体を冷やします。体温が低い人が冬にレタスやキャベツ、きゅうり・トマト・なすなどを食べると冷えやすいということになります。

3、運動不足や労働の変化

 車や交通機関が進化し、現代人は歩かなくなっています。生活の上でも、肉体を使った家事労働も減っています。洗濯は全自動洗濯機が、掃除はロボットがやってくれます。もちろん薪割りや火を焚いて風呂を沸かす事もありません。買ってきたり、チンするだけで食べる事もできるため、調理時間も減っています。筋肉運動が減ると、熱が造られなくなるため体温が下がります。

4、塩分制限のしすぎ

 高血圧の予防のために、塩分摂取制限が叫ばれており、実際に日本人の塩分摂取量は減っています。しかし塩分摂取が増えると、交感神経系を刺激し、末梢血管を収縮させて放熱量を減少させると同時に、褐色脂肪細胞や筋肉の熱産生を増やします。塩分摂取には地域差があり、東北地方などの寒い地域の料理が塩辛いのはそのためです。塩分摂取が減ることで、体温は下がりやすくなるのです。

5、シャワーで済ます人が増加

 一人暮らしも多くなり、多忙な現代人は、特に夏には湯船にゆっくり浸かる人が減っています。蒼野が頭痛やコリがひどい患者様に聞いてみても、若い一人暮らしの患者様は、シャワーだけで済ませる人が多い事を実感しています。湯船で15分程度ゆっくりするだけで、1℃ほど深部体温が上昇させることができます。

6、エアコンの使いすぎ

 夏の温度は年々上昇していることも感じますが、エアコンに当たりすぎると当然ながら体温は下がります。外気温との温度差が激しい程、自律神経は対応が難しくなり、失調状態となってしまいます。体温のコントロールも不調となり、夏バテの原因にもなります。

 低体温を改善するには、しっかりと細胞内に水分を入れて、細胞外の水分を取ることが重要です。うまく水が巡っていない状態を、漢方的には水毒と呼びます。細胞間質に溜まればむくみ、血管内に溜まれば高血圧、胃内に溜まれば嘔気、腸内に溜まれば下痢、鼻腔に溜まれば痰、肺に溜まれば水様痰となります。

 水毒を生活の中で改善するには運動、入浴、マッサージです。血流が良くなれば、細胞内に水が入って行きやすくなります。細胞内に水が不足していると、喉が乾くので余計に水を飲んでしまうことになり、水毒が酷くなるのです。水分摂取は大切ですが、上記に当てはまっている時には、飲み過ぎにも注意しましょう。

 もし水分を摂るなら、身体が温まった状態で、冷たくない飲み物で摂りましょう。身体を温めるには紅茶が良いです。ほうじ茶や番茶、烏龍茶、ハーブティーなども良いでしょう。逆に純水、緑茶、麦茶、コーヒー、ビール、牛乳、清涼飲料水などは冷やします。

 しかし緑茶やコーヒーには身体に良いポリフェノールが含まれているため、体温が低い人が飲む時には工夫しましょう。緑茶には梅干しや少量の自然塩を加えると冷えない飲み物になります。コーヒーにはシナモンパウダーをかけると良いようです。毎日飲むものに注意を払いましょう。

 食べ物としては、ぬるぬるネバネバのムチンの入った、納豆やオクラ、山芋や鰻や海藻を摂りましょう。身体を温める生姜は有名ですよね。効果は3時間くらいなのでこまめに摂ると良いです。飲み物に生姜パウダーを入れると摂りやすくなります。

 肉や魚など、タンパク質が多い食べ物は、食事誘発性熱産生が最も誘発されます。タンパク質のカロリーの30%が熱に変化するため、代謝も上がります。筋肉を鍛えるとこの作用はさらに高くなります。よく噛むことでも高くなるので、意識しておくと良いと思います。

 薬として身体を温める薬は漢方しかありません。また水毒を治すのも漢方です。夏は五苓散から使ってみましょう。冷え+むくみがひどい場合は当帰芍薬散がおすすめです。温める作用が一番強いのは当帰四逆加呉茱萸生姜湯です。生活改善でも辛い場合には漢方外来を訪れてみてください。

 毎日26℃の医局でしばらく過ごした後の体温が36.2℃前後の蒼野です。免疫力をキープしたいので、紅茶を飲む機会を増やし、いつもシナモンパウダーを持ち歩こうと、今、心に決めたところです。

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