体重のセットポイント

2021/12/20

 昨日は16時間ファスティングにおける、蒼野自身のダイエット効果について、書かせていただいたので、今日は一般的なダイエットについて、書いてみたいと思います。

 皆様は、ダイエットといえば、まず何に取り組まれるのでしょうか? カロリーの少ないものを食べる? 運動を増やす?? (摂取したカロリー)-(消費したカロリー)をマイナスにしさえすれば痩せる、と思われているのではないでしょうか?

 これは確かに正しいのですが、現実はそうはならないのです。消費するカロリーが一定ではないのです。(消費カロリー)=(運動)+(基礎代謝)です。基礎代謝とは、内臓を動かしたり、体温を保ったり、生きていくのに必要なエネルギーです。

 ここで出てくるのは、飢餓の歴史を生き抜いてきた人類です。獲物が取れず、木の実も拾えなかった時にも、人類は生き延びてきました。摂取カロリーが少なくなった時には、身体は自動的に節約モードにして、すぐに基礎代謝を下げて、対応するのです。大事な体脂肪を消費してしまえば、生存の確率が下がるからです。

 つまりカロリーの少ないものを食べて、我慢した段階ですぐに基礎代謝率が下がります。すぐに体温を下げたりしてバランスを取るのです。そのため(摂取したカロリー)-(消費したカロリー)はなかなかマイナスにはなりません。つまりカロリー制限だけでは痩せないのです。

 実際に行われた実験でも、このことが示されています。平均体重77kg、平均BMI 29.1kg/m2の女性19517人が1日当たりのカロリーを、厳格に361kcal減らして、7年間生活しました。最初の1年こそ2.2kg体重が減りましたが、その後少しずつ体重は増えて、7年後には元の体重に戻ってしまったのです。

 次は運動です。理論上は運動すれば消費カロリーが増えます。体重70kgの人が、時速6kmで20分ジョギングして消費されるカロリーは105kcalです。頑張って40分ジョギングしても、ご飯1杯(252kcal)にもならないのです。20分走ったご褒美に、チョコレートをひとかじり(20g)で元の木阿弥です。普段運動しない人が、頑張って1時間も運動したら、ケーキのひとつも食べたくなる気持ちは、とてもよくわかります。

 こちらも実験研究があります。中程度強度の有酸素運動を1日60分、週6日続けた男女、男性の平均体重は96.1kg、女性は77.9kgで、1年後の体重減少は、男性1.8kg、女性1.4kgでした。もちろん内臓脂肪が減ったり、運動の健康効果はあるのですが、こと体重に関しては、努力の割に物足りない結果ですよね! 

 私たちが、鉄の意志を持って運動しながら、カロリー制限できたとしましょう。目標体重を達成した後はどうしますか? 祝杯をあげたり、今までずっと我慢していたスイーツに、手を伸ばしたりしないでしょうか?この時点で基礎代謝率はかなり落ちています。摂取カロリーを少し増やせば、あっという間にリバウンドしてしまうのです。今までの常識的なダイエットでは、体重をキープしてゆくことが、いかに難しいかわかるのではないでしょうか?

 体重は自律神経の最高中枢である、視床下部によって決められており、これをセットポイントと言います。食べれずに体重が減ってしまったら、食べれる様になった段階で元に戻ります。逆に急に太ることも難しく、痩せ型に人が、6ヶ月で体重を20kg増やすという実験では、目標達成後、参加者は、数週間に渡って、食欲がなくなり、体重が戻ってゆきました。人類には、健康と生存のために、体重を適正に保つシステムが、ちゃんと備わっているため、極端に体重を変えることは、通常困難なのです。

 しかしなぜ現代では、こんなに肥満が増えてしまっているのでしょうか?メタボリックシンドロームの、最初の入り口である肥満は、それ自体がエネルギーシステムの障害で生じる、身体全体の異変の一つの形です。肥満から始まった身体全体の異変は、メタボリックドミノと言われる、あらゆる慢性病に繋がってゆきます。

 それらの多くの慢性病は、長年行ってる生活習慣、すなわち、カロリー過多で、栄養不足のジャンクフード、食品添加物や保存料、トランス脂肪酸などを多く使った超加工食品、座ってパソコンに何時間も向かっている仕事や運動不足、短時間で質の悪い睡眠、喫煙や飲酒などが原因になっています。

 これらの生活習慣が、肥満も作り出しています。そのメカニズムはレプチン抵抗性です。レプチンはいわゆる満腹ホルモンで、通常はレプチンが視床下部に作用すると、食欲は満たされ、食べるのをやめます。しかしレプチンに視床下部が反応しなくなる(レプチン抵抗性)状態になると、いくら食べても、お腹が一杯にならないため、どんどん食べてしまうのです。

 健康長寿のためには、内臓脂肪を減らす必要があります。しかもそれをずーっとキープする必要があるのです。生活習慣で狂ってしまった、セットポイントを戻すのは容易ではありません。無理のない方法で、一生続けていける、効果の高いダイエット法が必要です。

 そこで出てくるのが、原始人、狩猟採集民族の食生活です。狩猟採集民族は、食べる時には、お腹いっぱいまで食べています。摂取カロリーも、実は肥満大国アメリカ人の平均と変わらないのです。しかし肥満は見られません。

 現代人と原始人の食べ方の違いは、食事回数と、食べ物の質です。朝食を食べる原始人や狩猟採集民はいません。みんな16時間ファスティングに近いスタイルです。そして現代に溢れている超加工食品も食べていません。このことを抑えておけば、人間本来のセットポイントを活かして、知らない間に、適正体重になってしまう、一生続くダイエットが可能になるのです。

 蒼野が、超加工食品をなるべく避けて、自然から取れたもの食べながら、16時間ファスティングを行うダイエットを勧めるのは、こういう理由があるからです。何度も言いますが、我慢することなくお腹いっぱい食べながら、自然に痩せてゆくので一生続けられると思っています。

 今日は長くなってきたので、レプチンや超加工食品については、別の日に書いてみたいと思います。超加工食品!!本当に恐ろしいのですよ。また『食べれなくなるシリーズ』を書いて、皆様に責められそうな蒼野でした。

参考書籍:  食べても太らず、免疫力がつく食事法   石黒 成治