今日は、ギャンブル依存症について昨日書きながら、疑問に思った依存症の本質について、もう少し考察しておきたいと思います。現代は様々なものに対して、依存症の誘惑が多い時代になっています。その本質を理解しておくと、心や身体の健康を害する可能性が減るのではないかと思うからです。
定義としては、薬物や食べ物などの物質や、行動などに対して、それを摂取したり行なったりすると、気持ちが良いなどの利点をあるが、最終的には害の方が大きくなる状態です。それが頭でよくわかっていても止めることができない状態です。
麻薬や、アルコール、タバコなどは分かり易いですよね。食事で言うと砂糖や小麦への依存は認識していない人も多いかも知れません。行動で言えば、ギャンブルや買い物、セックスなどは有名ですが、スマホやゲーム、SNS、ネットフリックス等への依存は、今後VRなどの発達で、ますます進んでゆく可能性が高いです。
どれも脳内での反応は共通しています。脳は報酬を求めています。快感を感じる物質、行為などの刺激が、腹側被蓋野に伝わると、A10神経系を活性化し、快感物質であるドーパミンを分泌。ドーパミンは側坐核を刺激して高揚感を促し、前頭前野で「またこの快感が欲しい」という情動を強めます。ドーパミンの出方の大小はあっても、気持ちの良いことがあると全てこの回路が活性化するのは共通するメカニズムです。
ヘロインに手を出すと、もう一生抜け出せないと思いますよね! しかしたとえ麻薬であっても、摂取だけでは、一生の依存症にはならないそうです。それはベトナム戦争で証明されました。戦争中、アメリカ兵は数週間、数ヶ月、時には数年もただ待機する生活だったそうです。
フットボールやビールで暇つぶしをしていましたが、そこはヘロインの黄金の三角地帯のすぐそばだったこともあり、兵士の85%がヘロインを摂取したのです。純度が高いヘロインは一度でも使用すると54%は依存症になります。戦争終結後、10万人もの帰還兵から、ヘロインを離脱する必要がありました。
ヘロイン中毒はタチが悪く、犯罪者の統計では、一旦離脱しても95%は再犯すると言われています。アメリカ政府は、ベトナムで一旦薬が抜けた兵士から帰国させました。ベトナム帰還兵のその後の調査では、驚くことに予想に反して、ヘロイン依存が再発したのは5%でした。予想よりも90%も低い理由が当初は分からなかったのです。
しかし動物実験にそのヒントがありました。依存症のメカニズムは偶然発見されました。脳に電極を差し込んだラットが、レバーを押すと電気ショックが伝わる実験をしていて、1匹だけ電気ショックから逃げずに、レバーを押し続けるラットがいたのです。
餌も食べず、水を飲まずにレバーをひたすら押し続けたラットは、そのまま死んでしまいました。調べてみると、電極の先が少し曲がっていて、他のラットとは違う位置に入っていることが分かりました。これが脳の快楽中枢の発見です。
同じ位置に電極を入れて実験が続けられました。レバーを押しても電気刺激が出ないようにすると、ラットは落ち着きが無くなり、大量の水を飲んで時間をやり過ごそうとしました。ヒトの薬物常習者の離脱症状に酷似しています。
次はリスザルで実験しました。檻に入れたサルはやはり電気刺激のスイッチを押し続けるようになりました。しかし数日檻から出して過ごさせると、その強迫的な行動は鳴りを潜めて、普通の健康的なサルに戻ったのです。しかし檻に戻すとすぐにレバーを押し始めます。
このことから、依存症にはその環境がもう一つの要素であることが判明しました。サルにとっての檻が、兵士たちにとっての退屈なベトナム生活だったのです。依存症は記憶とリンクしています。ベトナムの生活を結びついて、それが合図になっていたヘロイン依存症は、母国の全く新しい環境では、引き金が引かれないのです。
ワールド・オブ・ウォークラフトというゲームがあります。世界で最も行動依存症を起こさせるゲームと言われています。参加者と同時にチャットしながら出来るロールプレイングゲームで、世界中から何百万人もがアバターを作って参加し、モンスターと戦い、冒険をこなします。
プレイヤーの半分は、睡眠時間を削り、過度にのめり込みます。主に10代~20代の若者が惹きつけられており、10年間で売上は100億ドル、ユーザー数は1億人を超えています。人と接する唯一の場となることも多く、ゲームだけに執着するようになり、学校に行けなくなったり、極端に太ったりと社会生活が送れなくなる人もいるのです。
アメリカでは、ゲームやネット依存症に特化して設立された治療施設「リスタート』があり、6週間で卒業するのですが、元の環境に戻ると、友人から1回だけやらないかなどの誘いもあって、高率に再発してしまいます。行動依存症も、薬物と同様に、とてもやめにくいことが分かっています。蒼野も一度「サルゲッチュ」をクリア目指して朝までやった事があり、少し分かる気がします。
依存を起こす物質や行動は、ストレス社会の中で簡単にドーパミンを出してくれて、それを慰めてくれる物です。自分の経験の中で、心理的な苦痛を和らげる手段として、効果があり楽になったという記憶が強く残った場合に、それは依存症の種となるのです。
しかし何度も繰り返すと、ドーパミンは出にくくなってしまい、同じことをしても楽しく無くなります。だんだんその体験自体も好きではなくなるのに、量を増やしたり、時間を増やしたりして、やりたくてたまらなくなるのが依存症の本質です。
デジタルデバイスは、抵抗なく依存になることを想定して作られています。たとえばSNSで「いいね!」が沢山付くと確認したくなりますよね! 沢山の人にシェアされたり、ネットショッピングにハマったり、ドラマを一気に見続けたりと、依存に誘う釣り針はあちこちにあるのです。
実際アメリカの研究によると、大人のネット関連の依存症は40%、大学生では48%がネット中毒で、残りの40%が境界域、または危険性がある状態になっていました。以前よりも注意力や集中力、共感力の低下が目立ちます。本人も悪影響があると認識している人が多いのですが、どうしてもやめられないそうです。
スティーブ・ジョブズが子供にiPadを使わせなかったのは有名な話です。IT業界の大物たちの家庭でも同じようなルールを取り入れている人が多いのです。今後仮想現実のテクノロジーが実装されてくると、本当にリアルに感情が揺さぶられるでしょうね! 悪用すればいくらでも依存症を作り、お金を集めることが出来るでしょう。
我々も心構えが大事だと思います。もちろん日々のストレスはありますが、一つのものにハマらず、色んなことに興味を持って、誰かと一緒に、毎日を楽しんでいく生活習慣が、依存症の予防に最も大事になると思います。これだけ人数がいるというのは、依存は人間の本質の一つなのでしょう!
生活や健康を壊さないよう、よく考えてゆきましょう。やっても楽しくなくなったら、追求するのではなく、生活を見直し新しい趣味にトライしてみて下さいね! 日頃からストレスが多く、性格的にとことんまで追求するという方は、ぜひ気をつけて下さい。かつての蒼野はそうだった気がします(笑)。
参考書籍: 「依存症ビジネス」のつくられかた 僕らはそれに抵抗できない アダム・オルター
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