光と睡眠!

2022/08/11

 最近は少し朝日が昇る時間が遅くなってきたことを感じますね! ここ数日遮光のカーテンをせずに、明るくなったら起きる生活はどうだろうと思い、カーテンを開けて寝ています。良いことなのかどうか調べてみたので、今日は光と睡眠について書いてみたいと思います。

 ヒトにとって、概日リズムはとても大事な健康の要素です。元々ヒトは明るくなったら起きて活動し、暗くなったら寝るという生活をしてきました。大昔から脳の視床下部が、24時間周期の体内時計を管理しています。体内時計に沿って、ホルモンや自律神経をコントロールしているのです。

 光は、視床下部や光に反応する臓器や腺に「起きなさい」という警告を送る役割を果たしています。朝日を浴びると、日中に分泌されるべきホルモンや、体内時計を調節する神経伝達物質の生成が促され、最適な量が分泌されるのです。

 一番有名な物質はセロトニンです。分泌によって幸福感や満足感を感じることができる、幸福ホルモンの一つです。視床下部の光受容体が、朝日に反応するとセロトニンの分泌が始まります。朝、自然光を浴びず、夜ふかしして人工の光を浴びる生活は、セロトニンの生成を減らし、体内時計を狂わせることで、健康への悪影響が出てくるのです。

 朝分泌が開始されるセロトニンが、夜になると熟睡ホルモンであるメラトニンに変化し、眠りを誘います。日中に光を浴びることが少ない生活では、睡眠に影響が出るのです。実際に職場に窓がある環境で働く人に比べて、職場に窓がない環境の人が浴びる自然光の量は、173%少なく、一日あたりの睡眠時間も平均46分短いという研究があります。睡眠の質も低下しており、やる気の減少や、病気の申告が多くなるなどの影響が出ています1)。

 昼間に太陽光を浴びる時間が少ないと、夜のコルチゾールレベルが上昇し、グレリンが上昇するため食欲が増し、体重も増えます。やる気や仕事のパフォーマンスが低下するとともに、仕事上のエラー率も増えていました。それではどのくらいの光を浴びれば良いのでしょうか?

 2017年の光と睡眠の研究では、朝に高いレベルの光を浴びた人ほど、入眠までの時間を減少、睡眠の質が向上しており、1日を通じて高いレベルの光を浴びるとうつ病やストレス、睡眠障害のレベルが低いことがわかりました。2)。睡眠が良くなり、メンタルも改善します。

 高齢者61人を対象に行ったRCTで、午前8時から10時の間に太陽を浴びる時間を30分~60分、60~90分、90~120分、120分の4群に分けて、5日間の睡眠の質を調べ、太陽を浴びなかった群と比較しました3)。

 光を浴びると睡眠の質が有意に改善しており、眠りにつくまでの時間が短縮していました。その効果は30分でも100分でも変わらないため、紫外線の害を考えると、30分浴びれば十分と考えられました。光と睡眠の関係は主には、セロトニンの生成と、それが変化するメラトニンのためと考えられます。

 日中に出るストレスホルモンであるコルチゾールも睡眠に関係しています。コルチゾール濃度は朝、光によって高まり、精力的な活動を支え、時間が経つにつれて減少し、寝る前には最低となるのが自然です。しかし現代生活では、さまざまなストレスによって、下がるべき夜に、最大化している人もいるのです。コルチゾールの出方がおかしくなれば、夜は疲れているのに眠れずに、朝起きられないということになりかねません。

 健康のためには、昼間に自然光を浴びるだけでなく、夜光を浴びないということが必要です。皆様は寝るときに間接照明などはつけていないでしょうか? 夜ふかしの家族がいるので、アイマスクで寝ている方もいるかも知れませんね。

 暗いほうがよく眠れるというのは周知の事実の様です。理想は真っ暗にして眠ることです。間接照明もあまり良くありません。蒼野は最近カーテンをあげて寝てみていますが、夜中に道路を歩く人がいると、近くの整骨院のオートライトが点灯します。車のライトで窓から光が入ることも稀にあります。

 目を閉じていたり、アイマスクをしていれば良いのかというと、これも違う様です。実は皮膚にも光を感知する受容体が存在しているのです。光の受容体は眼の網膜だけではなく、皮膚でも感じるため、寝室に光があると、その刺激は脳や臓器に伝わります。

 コーネル大学の実験では、膝の後ろに光ファイバー・ケーブルをつけ、皮膚に25セント硬貨と同じくらいの光をあて、真っ暗な部屋で眠らせました。そんな僅かな光にも関わらず、当てていない人に比べて、体温とメラトニンの分泌に変化が生じており、熟睡が邪魔されました。

 ヒトは長い間、夜は真っ暗な中で寝てきているのです。現代においても、睡眠環境はそれに準じて整える必要がありそうです。光を発し続けるものは寝室から排除しましょう。豆電球一つでも影響します。遮光カーテンも降ろして、漆黒の闇の中で眠るのが理想です。

 ペンシルベニア大学の研究によると、2歳未満の子ども479人を三つのグループに分けて実験を行いました。真っ暗のなかで寝る子ども、豆電球が一つついた状態で寝る子ども、電気をつけた状態で寝る子どもの3群です。

 真っ暗のなかで寝た場合、将来的に近視になった子どもは10%でしたが、豆電球の部屋で寝た子どもは34%、電気をつけた部屋で寝た子どもに至っては55%が近視になるという驚くべき結果が出ています4)。 科学的には3群の生活環境が均一化されていないために、議論はあるところですが、余りに確率が違うため、自分の子供や孫であれば、真っ暗な中で育てたくなる結果になっています。

 今まで見てくると、寝室のスマホ、タブレットやパソコン、テレビなどは排除しなければならないと思えるのではないでしょうか? 寝る前に携帯電話で話すと、深いノンレム睡眠に達するのが遅くなり、深い睡眠の時間が短くなることが明らかになっています。睡眠で得られる回復力や免疫機能の活性化、ホルモンの分泌などが障害されるのです。

 英国ラフバラー大学の研究によると、寝る前に、通話モードで浴びた電磁波はヒトの脳に大きく影響し、寝つくまでの時間が倍になり、深い睡眠に入れたのは通話後1時間以上経ってからでした。仮に遠距離恋愛していたとしても、寝る前に”おやすみ”の電話をすることで、目から光が入り、電磁波が脳を襲い、メラトニンが消えてしまいます。

 起きるのにスマホでアラームを掛けるのもやめましょう。専用の目覚まし時計を使う事が、安眠には重要です。枕元のスマホが不調の原因になるかも知れないのです。寝る2時間前からスマホは遠ざけておきましょう。夜間のブルーライトは想像以上に睡眠を破壊してしまいます。

 10年前には、夜中に病院からよく電話がかかってきていた蒼野でした。十分に寿命は縮めた様な気がするので、せめてこれからは安眠のための工夫を追求してゆきたいと思います。やっぱり今夜からカーテンはして寝ることにします!

参考文献:

1)Impact of Windows and Daylight Exposure on Overall Health and Sleep Quality of Office Workers: A Case-Control Pilot Study : J Chin Sleep Med 10(6): 2014.  603–611

2)The impact of daytime light exposures on sleep and mood in office workers :

Sleep Health Volume3.(3)  2017, 204-215

3)Effect of Natural Sunlight on Sleep Problems and Sleep Quality of the Elderly Staying in the Nursing Home : Holistic Nursing Practice Volume 31,(5),  2017, 295-302(8)

4)Near-Sightedness In Children Linked To Light Exposure During Sleep Before Age Two. :  The Children’s Hospital of Pennsylvania. ScienceDaily, 13 May 1999

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