FUJITSU頭痛プロジェクト

2022/03/08

 昨日はGoogleの健康への取り組みを紹介したのですが、日本でも富士通が、社員の片頭痛に取り組む活動を続け、企業における頭痛対策のモデルケースとして国際頭痛学会に評価され、頭痛対策の世界的企業に認定されたというお話を書いてみたいと思います。

 蒼野は今、頭痛クリニックで、沢山の頭痛患者様に接しています。ひどい片頭痛で、月に何日も会社を休まないといけないというケースを、何人も見てきました。日本人では、840万人、全世界では10億人以上が悩まされている、ありふれているけど、生活支障度の高い疾患です。

 しかし労働現場では、頭痛が無い上司が、「たかが頭痛でしょ。」と考える場合も多く、軽視される傾向にあります。我慢して頭痛発作に耐えながら、仕事を続けるケースが多く、鎮痛剤の乱用などにも繋がりやすく、毎日頭痛が起こる、重症の慢性頭痛に変化してしまうケースが、しばしばあるのです。

 富士通は、これらの問題を解決するために、頭痛による支障度の正しい理解と、改善に向けた職場や従業員の教育、頭痛に悩んでいる従業員への頭痛対策プログラムを開発しました。まず2018年6月に、富士通社内における「職場における慢性頭痛による就業への支障度調査」を実施することから始めました。

 その結果、調査した約2,500人のうち、85%が頭痛を自覚していました。そのうちの84%の従業員が治療を受けた経験がなかったのです。頭痛による休業やパフォーマンス低下によって、会社が受ける経済的損失は、慢性頭痛がある従業員1人あたり年間10万円。全従業員に換算すると年間26億円に達することが判明しました。もちろん慢性頭痛がある従業員の健康関連QOLは標準以下であり、頭痛の生活支障度がとても深刻であることがわかったのです。

 そこで、2019年7月から、「FUJITSU頭痛プロジェクト」を開始しました。従業員約8万人を対象に、e-Learning受講による正しい頭痛知識の習得、頭痛患者へのビデオセミナー、専門医によるオンライン頭痛相談、頭痛体操やヨガなどの指導を始めました。

 2022年2月までに、従業員の7万3,432人、全体の90.5%が、e-Learningを受講しました。受講後には、頭痛が日常生活への支障度が大きい病気であるという認識が、46.8%から70.6%にアップし、会社全体で頭痛への理解が深まりました。

 さらに、376人がオンライン頭痛相談を受け、58.8%に運動指導、49.7%に生活指導が行なわれました。富士通クリニックに頭痛に関して、初診する社員が増加し、その人に合った頭痛薬の処方も行われるようになりました。

 様々なケースがあるのですが、生活指導や体操だけでも、頭痛が改善することもあります。頭痛予防薬が適合することで、月15日以上頭痛があった30代男性が、半年後には頭痛がほとんどなくなりました。西洋薬を飲みたくない40代女性は、漢方薬で頭痛日数が減少しました。色々な薬を試しても良くならなかったけど、去年出た注射薬の恩恵で、「こんなに楽になったことは初めてです」、と喜んだ30代の女性もおられます。

 受講する前には、頭痛が良くなることを知らなかったという人もいました。もっと早く受診すればよかった、辛い頭痛が治療できることを多くの人に知ってほしいと思う、頭痛プロジェクトを企画してくれた富士通に感謝している、などの多くの感想も寄せられました。

 医療費の高騰、人口の減少、生産性の向上などが叫ばれる現代では、国も企業の健康経営に力を入れるようになってきています。経済産業省が取り組んでいる健康経営度調査において、2021年の調査票の項目には、新たに『片頭痛・頭痛』が追加されています。

 富士通グループは、今後頭痛だけではなく、社員一人一人の自律した健康管理を積極的に支援したり、健康経営に関連するICTの提供を通じて、社員や顧客、社会全体の健康づくりや生産性の向上に貢献することなどを盛り込んだ、「富士通グループ健康宣言」を制定しています。

 2021年度は、「生活習慣病対策」「メンタルヘルス対策」「がん対策」「喫煙対策」などを掲げました。健康意識や健康リテラシーの向上のために、全従業員を対象とした健康教育を実施しました。健康への意識が向上することによって、個人個人の日々の行動が変わるよう、働きかけてゆくことを目的としているのです。2022年度は「腰痛教育」に取り組む予定だそうです。

 そして、2020年の、富士通の頭痛への取り組みは、国際頭痛学会世界患者支援連合(GPAC)の代表理事であるデービッド・ドーディック氏や、世界神経学会のウォルフガング・グリソルド プレジデント、国際頭痛学会のクリスティーナ・タソレリ プレジデントなどから、『この分野にブレイクスルーを起こし、世界各国に刺激を与える、世界各国の企業が見習うべき取り組みである』と評価されました。

 片頭痛は、命を奪う物ではありませんが、人生を奪うものです。昇進の機会も、頭痛のために断ることがあったり、頭痛のために仕事を辞めた人もいます。自分の職務を果たせないという責任から、職場が居た堪れない場所になる場合もあるのです。

 富士通の取り組みは、多くの企業が追随する模範となると思いますし、こういう企業が増えてゆけば、もっと働きやすく、生産性がアップする社会に近づいてゆくのだと思います。やはり時代は変わってきていますね! 進んだ企業は、従業員が、健康でバリバリ働けるように、サポートすることが、業績に繋がるということに気づき始めています。

 これは働く側にとっても、大きなメリットがありますよね。ちゃんと健康教育のシステムが社会にあることで、生活習慣や、自分の健康について深く考えるようになり、病気にならずに済んだり、不快な症状がコントロールできるようになるかもしれないのです。

 蒼野は、どうにもならなくなった状態で、手術して命が助かっても、後遺症が残って、泣きながら退院してゆく人を沢山見ているうちに、病気になる前に、予防する仕事がしたいと常々思うようになりました。でも病院では予防についての教育をする時間も無かったし、それで食べて行けるシステムもありませんでした。

 しかし今、経済産業省も健康経営を叫び始めています。病気になる前に、働くみんなへの健康投資を行うことが、活力や生産性の向上につながり、組織が活性化し、企業の業績や株価が向上すると考えられています。またそれによって、国民の健康寿命の延伸につながるとも考えられているのです。

 これは健康長寿がテーマの蒼野にとっても、やりがいのある仕事になると思います。Googleでなくても、富士通もいいなあと思ったりする蒼野でした!

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