感情を脳科学的にコントロールする方法!

2022/10/28

 『人間は感情の動物!」という言葉はよく聞きますし、蒼野自身もその通りだと思います。ヒトは大きな脳を持っていて、とても賢い生き物であるはずなのですが、世の中のニュースを見ると、一時的な感情だけで、どうしてそんな事をしたのと思う様なことが溢れています。

 カッとするとか、思わず、衝動的に、とかの行動が犯罪や自殺などの間違った行動につながっている事は本当に多いと思います。今日は行動の元になる感情がどこから生まれ、どういう意味を持つのかということについて、動画を見ていてなるほどと思ったので、紹介したいと思います。

 感情は大脳辺縁系で生まれるものの様です。脳は3層構造になっていて、生命の中枢である脳幹、その上に覆いかぶさるように大脳辺縁系があり、それを大きな大脳皮質が包んでいます。脳幹は爬虫類脳、大脳辺縁系は本能を司る哺乳類脳、そして大脳皮質は知性の脳であり、より良く生きる、人が人であるための高度な判断を下す人間脳です。

 これらはお互いに連携して、個体の生命の維持と、種の保存の為に働いています。脳幹は、眠りと覚醒(意識)、心臓、呼吸、体温、食欲などを、自律神経やホルモンを介してコントロールしています。ここが障害されれば、必ず死んでしまいます。

 大脳辺縁系は、扁桃体、側坐核、海馬、帯状回などから形成されており、周囲の状況に合わせて、感情を生み出します。生物の進化はゆっくりで、特にこの部分の脳は、原始時代から変化していません。大脳辺縁系の大きな意義としては、個体の生命維持と言うことになります。生命維持するために有利な事は側坐核が反応して、気持ちが良くなります。反対に生命の危機には扁桃体が警鐘を鳴らします。これが感情の正体です。

 扁桃体は恐怖、不安、怒りなどを生み出し、交感神経を興奮させ、生命の危機に対抗しようとします。サバンナに住む原始人が、ライオンに遭遇すると、生命の危機です。扁桃体は素早く発火し、『闘争か、逃走か』を選択肢し、即座に行動にうつします。それが一番生命維持に有効だからです。

 原始時代には、この扁桃体の興奮は長く続くことはありませんでした。戦って負ければ死んでしまいましたし、勝ったり、逃げ切れたりすればもう安心なので、恐怖や不安や怒りは即座に収まったのです。

 また原始人がたわわに実った果物の樹を見つけ、甘い果実を口に入れると側坐核からドーパミンが放出され、人は気持ちよくなり、喜び、幸せな気持ちになります。なかなか手に入らない糖質は、生命維持に貢献する貴重なエネルギーだからです。

 自らの身体能力を凌ぐ敵に囲まれていた人間は、お互いに協力し、群れを作ることで生き延びてきました。協力出来ない人間や、群れの掟を破る人間は排除されます。人間同士が愛情を感じ、繋がって行ければ、生命維持にも、種の保存にも有利になります。他人と分かり合い、繋がることで、喜びや幸せと言う感情が生まれるのです。

 このように大脳辺縁系は、周囲の状況に合わせて様々な感情を作り出し、人の行動を左右するのです。大事な生命維持に関する命令に従うのは当たり前のことなので、人は真っ先に感情で動く様に出来ている動物であると言えます。身の回りに危険がいっぱいだった、人類の歴史の大部分は、感情に従って行動するのが正しいやり方でした。

 つまり感情というのは、今起こっていることが、生存にとって有利なのか脅威なのかということを判断するシステムであったということです。そして感情は、一刻を争う状況下で、咄嗟の行動や判断を行う為に、人類の進化の中で作られたものなのです。

 大脳皮質の役割は、今までの経験を検証し、内省して、未来のより良い選択につなげることです。本能のままに行動するだけでは、動物と一緒で、時に判断を誤ります。感情で動く事で失敗した経験があれば、次に同じ失敗をしない様に、大脳皮質がブレーキをかけることも出来るのです。

 ライオンだと思っても、リアルに出来たライオンのぬいぐるみである事がわかれば、大脳皮質の論理的な情報によって、扁桃体の興奮は治るのです。また扁桃体が興奮し始めた時に、意識的にゆっくりと息を吐いていると、身体は危険を感じていないというフィードバックが扁桃体に働いて、逆に扁桃体が落ち着いたりすることも分かっています。

 現代社会では、生命の維持に関係する様なことはなかなか起こりません。サバンナに比べるとずっと安全ですし、先進国では、まず飢え死にすることもありません。しかし感情は変わらず残っています。身の回りで起こることや、情報によって、人はいつでもそれが生存にとって好ましいか、好ましく無いかを瞬時に判断しようとしているのです。

 コロナ禍になって、特に不安のコントロールは難しくなっています。コロナが生命を脅かすものだと強く捉える人にとっては、扁桃体の発火が治らないため、解決されることはない不安や恐怖、怒り、悲しみのようなネガティブな感情で、頭が一杯になってしまう時期が続いています。メンタルや体調が悪くなった人が多いのも無理はありません。

 交感神経が興奮しっぱなしで、ストレスホルモンが出っ放しになり、身体もあちこちに不調が出ます。扁桃体が興奮していると、人は短絡的に、あまり考えないで行動するため、攻撃的になり、炎上が起こりやすくなり、自粛警察が立ち上がり、科学的根拠のない誤情報が、飛び交いやすくなっているのです。

 2021年のデータが集計され、我が国の自殺がコロナ前の2019年よりも800人以上増えています。特に10代以下が29.1%、20代が16.7%も増加していました。多くの先進国でもうつ病、うつ状態などの人の割合が2~3倍に増えたそうです。日本ではうつ病が2013年の7.9%から2020年には17.3%に増加しています。

 長期的な良い判断をしようと思っても、扁桃体が発火し続けている状態では、短絡的に行動しやすいために、判断力も考察力も鈍ってしまうことが、過去の研究でも証明されています。ネガティブな感情から抜けられない時こそ、冷静に大脳皮質で現在の状況や自分の感情をもう一度、再評価するということが、扁桃体を落ち着けることに繋がります。幽霊だと思って、恐怖と不安を抱いていたものが、実は柳ではないかと確認する作業です。本当に柳だったら扁桃体はすぐに落ち着きます。

 人は大脳辺縁系が成長した後に、18歳くらいでようやく大脳皮質の成長が完成します。コロナ禍は大人が考える以上に、大脳辺縁系が活性化しやすい子供の感情を揺さぶっていると考えられます。未熟な大脳皮質では抑えきれないため、慢性的な扁桃体の暴走を止めるには、運動が一番です。身体からのフィードバックによって、扁桃体の興奮を治める方法は、全年代で重要になると思います。

 扁桃体の興奮で上昇した、ネガティブな感情の原因となるノルアドレナリンやアドレナリンが、ウォーキングによって減少し、セロトニンが増加します。少し脈が上がるように早足を繰り返していると、扁桃体がストレスに強くなり興奮しにくくなります。やはり朝散歩は最強かもしれませんね!

 合わせてオキシトシンが増えていれば、扁桃体にブレーキがかかります。またマインドフルネスも有効です。過去や未来の事を考えてばかりいると、不安や後悔ばかりが頭をもたげてきます。今に集中して、頭を空っぽにする時間が必要なのです。

 我々が不安になるのは、生存に不利になるものを避けて、一生懸命生き続けたいと思っているということの裏返しです。その自分の感情をまず認めてあげて、何で不安になっているのかを、もう一度冷静に再評価してみましょう。併せて運動や、生活の中の楽しみをたくさん見つけながら、ぼーっとする時間を作ってリフレッシュしてゆきましょうね!

 60歳は超えているため、感染に無防備になるつもりはありませんが、コロナ禍であっても、現代は原始時代と比べれば、めっちゃ安全なはずです。そろそろポストコロナの気持ちで、これからも人生の楽しみを沢山見つけてゆきたい蒼野でした!

参考動画:

https://youtu.be/UkF4xJon9ZE

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