これだけ暑くなると疲れが溜まりやすくなりますね! 疲れを取るホルモンとして、成長ホルモンは重要な役割を持っています。日頃から成長ホルモンを分泌しやすい生活を心がけることで、暑さにも負けずに、活動的な時間が過ごせると思いますので、今日は成長ホルモンについて深掘りしてみたいと思います。
成長ホルモンはその名の通り、身長を伸ばす働きがあるホルモンです。最初は子供にだけ必要なホルモンと考えられていて、先天的な分泌不全の小児患者の治療に、骨端線が閉じて骨が伸びなくなる時期まで使われていました。
しかし成長ホルモンの補充をやめた後の患者では、とても疲れやすく、体脂肪率が増加して心血管疾患で死亡したり、骨密度が減少したり、うつ病を発症したりする人が多いことが観察され、大人になった後でも重要な役割を果たしていることが判明しました。
成人後も成長ホルモンは、体にある物質をエネルギーに変えてゆく代謝反応を起こしていることがわかりました。つまり成長ホルモンは、子どもから大人まで、あらゆる年齢に必要なホルモンだったのです。このため2006年4月からは、成人成長ホルモン分泌不全症と診断されれば、保険診療でホルモン補充療法が受けられる様になりました。
成長ホルモンは脳のホルモン中枢である、脳下垂体前葉で作られ、分泌されます。脳下垂体にできる様々な腫瘍や、嚢胞、また外傷や放射線照射などによって、下垂体前葉が障害されると分泌が低下したりします。また加齢と共に減少し、思春期前が100%とすると、思春期の後期、伸び盛りの時期は200%、その後減ってゆき30~40代で50%、蒼野の60代では30%くらいになってしまいます。
逆に下垂体に成長ホルモンを多量に分泌する腫瘍ができると、顎や鼻、手足の末端が大きくなる巨人症や末端肥大症を発症します。少し古いですが、プロレスラーのジャイアント馬場さんのイメージです。糖尿病や高血圧、がんなどの発症が増えてしまいます。成長ホルモンは多すぎてもいけないのです。
それでは成人後の成長ホルモンの働きについて、書いてゆきます。まず脂肪分解と血中コレステロールを低下させる作用があります。成長ホルモンが十分に出ていると、スリムで若々しく過ごせます。逆に成長ホルモンが減ると、肥満しやすく、コレステロール値が上昇し、動脈硬化を促進します。
骨格や筋肉を発達させる作用も見逃せません。痛んだ筋肉や組織の修復にも重要な役割があります。残念ながら蒼野の歳では、筋トレをしても若い頃のようにはすぐに筋肉は増えない様です。成長ホルモンが減ると、筋肉のみならず、骨量も減りやすく、骨粗鬆症が進みます。心筋にも影響があり、心機能低下も起こしやすくなります。
皮膚にも影響するため、成長ホルモンが減ると、汗腺からの分泌が減り、皮膚が乾燥し、薄くなります。汗が出にくいため、体温が低下しにくく、激しい運動も出来にくくなります。つまり、成長ホルモンは体全体にエネルギーを届け、骨や筋肉や皮膚を修復し、脂肪を燃やしてコレステロールを下げ、動脈硬化を予防してくれるのです。
これらのことから、成長ホルモンは、疲労回復ホルモン、若返りホルモンとも呼ばれています。それならば、肌の若返り、筋肉増量、骨粗しょう症予防、メタボ解消などのアンチエイジング目的で、成長ホルモンを補充してみたくなりますよね! 実際に、米ウィスコンシン大学で高齢者に対して成長ホルモンを投与する実験が行われています。
投与で活力増進、脂肪減少という変化は認められましたが、投与だけで筋力は増強せず、明らかな若返りの効果は認められませんでした。むしろ手根管の組織の肥大による圧迫で、指が痺れる手根管症候群を発症したり浮腫が強くなったりする副作用が目立つという結果になりました。
運動選手にとっても、筋力増強や疲労回復の作用ははとても魅力的なため、ドーピングで使われたり、世界的ボディビルダーが使用したりしていました。しかし過剰使用によって、短命になってしまう場合も多く、やはり多すぎても少なすぎてもいけないホルモンなのです。
これらのことから、成長ホルモンは生活の中で、自然に分泌を高めることが求められています。成長ホルモンは日常生活におけるさまざまな刺激によって分泌されます。その方法をなるべく生活に取り入れて行ければ、若々しく、活動的に過ごしてゆくことができます。
成長ホルモンが最も多く分泌されるのは、入眠後最初のノンレム睡眠の時間です。「寝る子は育つ」と言われるように、入眠後30分くらいからの深い睡眠が、分泌のピークとなります。熟睡できるように生活を整える必要があるのです。
熟睡するためには、寝る前にメラトニンを分泌させることが重要です。メラトニンの原料となるセロトニンは、早起きして、太陽を浴びることでできてきます。リズムのある早寝早起きの生活が重要です。休みの日にもリズムを守ると、毎日の成長ホルモンの分泌を維持しやすくなります。
成長ホルモンは食事の直後は分泌が減少します。だからこそ寝る直前の食事は、睡眠中の成長ホルモン分泌を抑制してしまいます。少なくとも入眠2時間前には、食事は終えましょう。寝る前に食事をすると太るといいますが、それは本来、睡眠中に分泌されるはずの成長ホルモンが、食事をすることによって減少し、脂肪の分解が行われにくくなるためなのです。
深く眠るためには、多量のアルコールは良くありません。交感神経が刺激されてしまうため、飲むとしてもアルコール量20gまでの適量に抑えましょう。また寝る前のスマホやデジタルデバイスからのブルーライトを目に入れない様にするのも重要なポイントです。
炭水化物の過剰摂取で血糖値が上昇すると、成長ホルモンは抑制されます。1回に摂る糖質量はやはり40gくらいまでが理想的です。逆に低血糖になると、糖新生するホルモン(コルチゾールやアドレナリン)が分泌されますが、その中に成長ホルモンも含まれます。
空腹の時に胃から分泌されるグレリンによって、下垂体から成長ホルモンが分泌されます。お腹が空いたら食べるという習慣が重要です。食事の前に適度な空腹を感じられる生活を送ることも重要です。お腹が空いたら食べるというのが、やはり本来の食事の姿なのです。
食材では、鶏肉、エビ、納豆、高野豆腐、ソラマメなどに多く含まれているアミノ酸「アルギニン」は成長ホルモンの分泌を促す食べ物です。またシジミなどに含まれるアミノ酸「オルニチン」も成長ホルモンを上昇させます。これらをサプリメントで摂った後の運動での成長ホルモン分泌は、摂っていない場合よりも有意に高いことが、実験でも示されています。
最後は運動です。有酸素運動よりも負荷が重い筋トレが有用とされています。年長者では無理をせずに、ゆっくり筋肉に負荷をかける腕立て伏せや腹筋運動、スクワットなどのスロートレーニングが、分泌に有効であることがわかっています。加圧トレーニングも成長ホルモンに注目したトレーニング法なのでおすすめです。
以上食事、睡眠、運動で、加齢と共に減ってゆく成長ホルモンの分泌を促し、健康長寿に一歩近づくことができます。日があがったら起き、お腹が空いたら食べ、食糧のために1日中運動し、夜になったらぐっすり寝る生活は、やはり我々のDNAに一番合った生活なのだということが、成長ホルモンの視点でもわかりました。
現代生活の中に、いかに原始人の生活を取り入れて行くか、いつも考えている蒼野でした。
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