新型タバコ

2022/02/03

 蒼野は、外来で時間の余裕がある時には、患者様に禁煙を勧める様にしています。自分も若い頃に遊びで吸ってみたことはあるのですが、咳が出るばかりで、格好もつけられず、一度もハマらずに今まで来たため、喫煙者の本当の気持ちは分からないのかもしれません。

 最近では、健康に注意している人に、『タバコはやめて、電子タバコにしているので….』とよく言われてしまうので、今日は電子タバコについて調べてみました。確かに従来の紙巻きタバコと比べると、有害性が小さいだとか、受動喫煙の影響が少ないだとか、吸い殻のポイ捨てや、火災の心配がないといったメリットが強調されている様です。

 狭義の電子タバコは、『紙巻きタバコと同様の形態もしくは、それより大きなタンク状等の形態をした吸入器 (本体)に、ニコチンやプロピレングリコール、グリセリンなどが含まれる味や香りのする溶液 (リキッド)が入ったカートリッジを装着し、バッテリー等で加熱して、発生させた蒸気を吸引して使用する製品』とされています。

 日本で売られている電子タバコは、ニコチンもタールも含まれておらず、健康志向の人とか、禁煙を前提にした人が使う様ですが、これはほとんど売れていない様です。日本では溶液 (リキッド)ではなく,タバコの葉 (加工品)を加熱する「加熱式タバコ」が、紙巻きタバコからの変更先となっており、広義の電子タバコと表現されています。

 近年、受動喫煙の害が叫ばれる様になり、「紙タバコほど体に害がない」「受動喫煙に配慮できる」と思っている人が、新型のタバコに換えている様です。2017年のアンケートでは、喫煙者の14.3%が紙巻きタバコから移行していました。内訳はアイコスが86%、プルーム・テックが14%、グローが4%となっています(重複あり)。

 加熱式タバコとは、紙タバコのように葉に直接火をつけるのではなく、葉を加熱してニコチンなどを含んだエアロゾル(蒸気)を発生させる方式のタバコです。加熱式タバコのエアロゾルからは、紙巻きタバコと同様に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドやアクロレインなどの発がん性物質や有害物質が検出されています。

 加熱式タバコから出る有害物質の量は、紙巻きタバコと比べて、少ない物質と、そうでもない物質があり、有害物質の種類は、同様に多い可能性が高いのです。もちろん加熱式タバコでも、受動喫煙の害もあります。また新型タバコを吸っている人のうち、半分以上の人が紙巻きタバコも併用しています。

 日本では、まだ喫煙に対して寛容な文化が残っており、世界の多くの国ではタバコの宣伝・広告が禁止されていますが、日本では法律で禁止されておりません。またタバコは貴重な税収でもあり、タバコ産業と、政界の癒着などの後押しもあり、世界に先駆けてアイコスが発売され、世界シェアの96%を日本が占める事態となりました。たばこ税を管轄する財務省が、世界のどこよりも早く認可したからです。

 アイコスには、パンフレットに大きく“有害性成分の量が90%低減”などと書かれています。しかし、その隅に“ただしこれは病気になるリスクが90%減るわけではありません”と誰も読まないような小さい字で、注意書きがされています。

 新型タバコから発生するエアロゾルからのニコチン摂取量は,紙巻タバコと比べほぼ同等かやや少ない程度で、発がん性物質であるニトロソアミン は紙巻タバコと比較すれば十分の一程度と少ないものの,この量が化粧品などの商品から検出されれば、即座に回収・大問題となるレベルなのです。

 それ以外にも、紙巻きタバコと同様に、加熱式タバコから非常に多くの種類の有害物質が検出されています。加熱式タバコ使用者では,紙巻きタバコの場合よりも、使用頻度が増えることが報告されており、長期間吸って行くことで病気になるリスクは変わらないと指摘されています。

 アメリカの若者の間では、電子タバコが最も使用されているタバコ製品となっています。ニコチン以外の、狭義の電子タバコで、高校生の 72%と中学生の60%がフレーバー (フルーツ、ミント、メンソール、キャンデー、デザートなど)入りを使用しているようです。始めたきっかけは、29.4%が「試しに」、63.4%が「美味しい、楽しい」という理由でした。

 電子タバコの使用歴がある子供達は、使用歴がない者に比べて、4倍以上が紙巻きタバコに移行しています。また電子タバコ開始年齢が若いほど、将来の紙巻きタバコやマリファナなどの違法ドラッグの使用者となるリスクが高くなります。

 全米では、電子タバコ製品使用者に電子タバコ関連肺傷害(EVALI) が多発しており、2020年までに、2807人が入院し、68人が死亡しました。 半数強が 25歳以下、8割弱が35歳以下でした。EVALI の原因は、テトラヒドロカンナビノール(マリファナの主要成分)添加が原因であり、ニコチンだけを含む電子タバコの使用では、発生しないとされています。

 しかし本邦でも、6例に加熱式たばこの使用後に急性呼吸不全を生じた事例が報告されています。平均年齢は32歳でした。加熱式たばこ使用開始から発症までの期間は2日~6か月。そのうち半数に喘息などのアレルギー疾患の既往があったそうです。米国においても、ニコチン含有電子タバコ(非タバコ製品)吸入開始90日以内に肺障害を認めた53例の若年者が報告されています。

 いろいろな報告から、現在世界各国で電子タバコの販売を禁止する動きが広がっている様です。日本は電子タバコではなく、加熱式タバコ大国です。発がんリスクについては、“加熱式タバコ>電子タバコとされています。最近になって、発がん率の上昇、有害金属の吸引、そして心臓発作のリスク上昇まで、幅広い健康リスクが指摘されています。

 日本は、タバコのCMが許可されている珍しい国であり、特に新型タバコは良いイメージで売り込まれています。良かれと思って、紙巻きタバコを加熱式タバコに換えている患者様は多いと思うのですが、日本全体が新型タバコの巨大な実験場になっている現実は、知っておく必要があると思います。

 今後10年あるいは20年後に、どんな有害事象や新しい病気が発生するかは、現時点では不明です。ニコチンは、ドーパミンを始めとする報酬系脳内物質の分泌に関わっており、常時摂取すると、ニコチンがなければ物質が出なくなるため、強い依存が生じてしまいやめられません。それがニコチン依存症です。

 蒼野はタバコに依存した事がない為、タバコがやめられない気持ちは、本当の意味では分からないのですが、目の前にある美味しそうなケーキが食べられない様な感じなのかな、と想像してしまいます。紙巻きタバコを新型タバコに換えるよりも、やはり禁煙外来なども使って、是非依存症から離脱してほしいと願っています。

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