今日は調べてみると、興味深かった湿布のお話です。蒼野も知らなかったこともあり、自分の知識を、まとめておくのにとてもよかったので、書いてみたいと思います。
湿布の歴史は古く、発祥は紀元前のギリシアらしいです。蒼野は東洋だとばかり思っていました。布に泥に塗って、患部を冷やしたり、温めたりする方法をヒポクラテス一派が考案したとのことです。この泥状パップが、サリチル酸メチルや薄荷油などを配合して使うように、変化してゆきました。ヨーロッパを経由して中国に入り、そこから日本に入ってきたのが 江戸時代後期から幕末あたりです。
元々日本でも、「硬膏」といって芥子(からし)やじゃがいもを泥状にして胸などに貼る湿布療法があり、肺炎や気管支炎に使っていた文化もありました。日本漢方との相性も良く、現代の湿布は日本で独自に発達し、世界一貼り心地が良いものができています、一方日本以外では、湿布ではなく、クリームやゲル状の外用薬が多く使われているようです。
湿布は、元々の泥パップの延長である厚いタイプの「パップ剤」と、今主流の薄いタイプの「プラスター剤」の2種類に分かれました。白くて剥がれやすいタイプと、茶色くて剥がれにくいタイプの2種類です。「パップ剤」は水分を多く含むため、気化熱によって、冷却効果が高めのため、急性疾患を中心に使われます。「プラスター剤」は基材が脂溶性で水分を含みませんが、成分によって、急性期、慢性期どちらにも使えるため、剥がれにくい分、応用範囲が広い印象です。
どちらも患部を冷やして、腫れを抑える冷湿布と、患部を温めて血行をよくする温湿布の2種類があります。捻挫や打撲など、冷やしたら気持ちいい急性の外傷などには冷湿布。お風呂に入って温まると心地よくなる場合は温湿布を使うと良いとされています。
普通の湿布(サロンパスなど)には、血流改善と軽い知覚麻痺を起こし、痛みを鎮める成分であるサリチル酸メチル。血行を良くし、鎮痛効果をもたらすdl-カンフル。スーッとした冷感で腫れを抑え、痛みをやわらげるL-メントール。血管を拡張させ、血行を改善するトウガラシエキス(ノニル酸ワニリルアミド)などの成分が配合されています。
最近の湿布は、上記の成分に加えて、経皮吸収型鎮痛消炎剤を含有しているものが主流となっています。1984年以降に出てきた「第二世代」と呼ばれる強力な湿布で、インドメタシン、ジクロフェナック、フェルビナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェンなどの、消炎鎮痛剤が含有されています。
痛みを抑える血中濃度を確保するための内服薬と比べると、湿布を貼ったときの薬剤の血中濃度は、飲み薬の10分の1で済むため、副作用のリスクが低くなります。しかし患部である筋肉に到達する薬剤濃度は、動物実験では、飲み薬のなんと30倍であることが確認されました。
局所の痛みへの効果が高く、胃腸障害や腎障害などの副作用も少ない。これは使いたくなりますよね! それでは使う上での注意や、使い分けについて見て行きましょう。
第二世代になって、温湿布はあまり使われなくなっています。肌が弱い人などは、唐辛子を長時間肌に当てていることを考えても、かぶれやすくなります。第二世代は急性期でも、慢性期でも行けるので、蒼野の外来でも、肌が強くて、冷え性で、温湿布が良いと希望する人にしか出していません。入浴前後30分以内に貼ると、カチカチ山のたぬきになりやすいのでご注意を!
第二世代湿布は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)配合の経皮吸収型鎮痛消炎剤です。外傷などにより組織の細胞が傷つくと、そこからアラキドン酸という物質が放出され、アラキドン酸はCOX(コックス、CycloOXygenase:シクロオキシゲナーゼ)という酵素によりプロスタグランジンに変化します。プロスタグランジンが痛み、炎症、発熱を引き起こすのです。NSAIDsはCOXを強力に阻害するため、プロスタグランジンが出来なくなり、炎症、痛み、解熱効果を発揮します。
お馴染みのモーラステープは、応用範囲が広く、唯一関節リウマチに対する適応もあり(他の薬も効きますが、処方としてはこれだけという意味)、沢山処方されています。NSAIDsにケトプロフェンが使われていているのですが、他の湿布にはない光過敏症という副作用があり、日焼けするような部位には貼れません。4週間以上、直接紫外線にあたらないようにする注意が必要です。
ロキソニンやボルタレン、インドメタシン入り湿布はそれぞれ、ロキソプロフェン、ジクロフェナック、インドメタシンというNSAIDsが入っています。どれも効果発現までの時間も比較的早く、効果も強めです。市販薬でも売っていて、盛んに宣伝されている薬でもあります。個人の使用感で選びましょう。
1日に2枚しか使ってはいけない、強力な湿布がロコア®テープです。処方薬で、変形性関節症のみに使用可能です。経皮吸収率も良く、2枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達することから、制限がかかっています。
フェルビナクを主成分にした湿布薬は、鎮痛効果はややマイルドですが、副作用も少なく、気軽に使える薬です。病院ではセルタッチという名前で処方されています。少し値段も安めです。この薬だけは妊娠中も使えます。他の第二世代湿布は妊娠中期から後期に使うと、羊水が減少したり、動脈管が収縮して胎児の循環が悪くなる報告があり、禁忌となっています。
湿布は「1日1回貼付」のものと「1日2回貼付」のものがあります。1日1回タイプは大体8~12時間くらい貼れば成分が浸透するため、1日効果が続きます。1日2回タイプであれば4~6時間でOKです。続けて貼り続けると、かぶれる可能性が高くなるため注意しましょう。
一般に湿布を貼るのはお風呂上がりがいいようです。皮膚の汚れや油分が洗い流され、剥がれにくい上、かぶれも起こりにくくなります。血行が促進されている状態だと、湿布が効果を発揮しやすくなるのです。
英語には肩こりを表す言葉が無いとのことです。日本人は外国人と比べると、頭を支える筋肉量が少なく、なで肩が多く、運動も少ない、ストレスを溜めやすい、お辞儀やうなずきなどが多いことなどが、肩凝りに悩む人が多いのでは無いかと言われているようです。
しかし最近では、ITの普及に伴い、外国人にも肩こりが増えているようです。外国人のお土産に湿布が喜ばれるようになる日が来そうですね!「貼って、寝て、気持ちいい!」蒼野も両肩に湿布を貼って寝ると、なぜか朝まで目が覚めずに、長時間安眠できて、スッキリします。不思議なので、いろいろググって見ましたが、出てきません。蒼野だけなのでしょうか?
ただ、小指の第一関節と第二関節の間の手のひら側に、冷湿布を1~1.5センチ四方に切って貼って寝ると、肩こり、首こり、そして目の疲れが改善するというのが出てきました。湿布の節約にもなるので、蒼野もやってみようと思っています。
皆様の肩こり、首こり、腰痛、膝痛などが、楽になるお手伝いが出来れば嬉しく思います!
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