尿1滴で癌かどうか分かる検査! こんなのがあったらすごく良いですよね!九州大学の広津崇亮先生が、2015年に、線虫という生物を使って、体内に癌が有るかどうか分かる検査について論文発表しました。結構ニュースにもなったので、蒼野も覚えています。
しかし未だに保険収載はされておらず、ちょっと不思議な気がするので、今回調べてみました。勿論技術としては特許も取れており、「N-NOSE」と名付けられ、キットが市販されています。東山紀之さんがCMしているので見た方も居られるかもしれませんね。
考え方は明解です。がんは早期に発見できれば、9割は治る病気です。集団検診では、5つのがん種しか調べてくれませんので、手放しで安心はできません、現在、小さながんを発見しようと思ったら、PET検査の精度が高いのですが、ドックで受けようとすると約10万円かかります。見つけやすい乳癌に対する感度は80~96%、特異度は83~100%と報告されています。
しかし、胃がん・前立腺がん・肝細胞がん・胆道がん・高分化型肺がん・白血病・腎臓、尿管、膀胱など尿路系のがんや膀胱近くに位置する臓器のがん(前立腺がんや子宮頸がん)は見つけにくい場合があると言われています。
血液検査でも、腫瘍マーカーによって分かることはあるのですが、早期癌のステージ0~1で、CEA(胃癌や大腸癌)の場合が13.8%、CA19-9(膵癌)でも13.8%程度。進行癌のステージ3-4でも、CEA 38.3%、CA19-9 52.5%程度と、早期で見つかる確率は低い状態です。
一方「N-NOSE」は、5大がん(胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、子宮癌)をはじめ、膵臓癌、肝臓癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、胆管癌、胆のう癌、膀胱癌、腎臓癌、口腔・咽頭癌などに対する感度が86.6%と、他のがん検査よりも高く、特異度も90%と報告されています。
感度とは真陽性率とも呼ばれ、本当に癌に罹っている人を、正しく陽性と診断できる確率です。つまり、癌を持っている100人が「N-NOSE」を受けると、86.6人が癌が有ると診断できます。13.4人は安心して帰っても、実は見逃された癌患者ということです。
特異度とは真陰性率であり、癌がない人が、癌でないと判断される率が90%ということです。癌でない100人が「N-NOSE」を受けると、90人は安心ですが、10人は癌が有るかもしれないと思い、落ち込み悩むことになります。
日本の癌罹患人口は、国立がんセンターがん対策情報センターの推計では、一生涯のうちに何らかのがんになる割合は、男性が 49%、女性が 37%で、「男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる」と言われています。
それを元に計算すると、癌は若年者には少ないため、40歳以上の男性3330万人のうち1632万人以上、女性3770万人中、1395万人以上の癌患者が発症する計算となります。全員が受けた場合、癌であるのに見逃される人数は、男女合わせて406万人、一方癌ではないのに陽性になる数は、407万人と、大きな問題となる数になります。
感度が86.6%、特異度も90%というと、受ければほとんどの癌が見つかるような気がするかもしれませんが、見逃される人もいますし、癌では無いのに、癌の疑いをかけられて、余計な心配や検査をたくさん受ける必要が出てくる点があることは、よく認識して受ける必要があると思います。
この検査の原理は、癌患者には独特の匂いが出てくることがヒントになっています。かつて、優れた嗅覚でがんを早期発見する「がん探知犬」が注目されたことがありましたが、犬には個体差があることや、結果が安定しないといった理由で研究は進みませんでした。
「N-NOSE」は嗅覚が犬の1.5倍優れた、長さ0.3-1mm程度の小さな線虫が、ステージ0、1の早期癌でも、尿中のがん関連物質を嗅ぎ分けて、80%以上の感度で、患者の尿に集まってくることから開発されました。線虫は雌雄同体で増やしやすく、餌も大腸菌なので安いのです。
尿1滴で、患者にとってはいつでもできる検査で、費用も他のがん検診に比べると安く、1件12500円でできます。全身の様々ながんに応用可能である点も優れています。そのため、現在は全国31施設の病院、大学でも連携の話が進められています。
センセーショナルなニュースだったことから、最近では、似たようなインチキ商品も沢山見られるとのことですので注意は必要です。日本の厚生労働省は、医薬品や新しい検査等の認可が諸外国に比べて遅いことにつけ込んで、儲けようとする詐欺集団がいる為、気を付けましょうね!
確かに、ほとんど早期では見つからない膵臓癌などではメリットが大きいかもしれません。あらゆるがんの中で、最も生存率が低い膵臓癌は、早期で手術できても、5年生存率はおよそ10~30%、手術できない(ステージ3)場合の1年生存率は30~50%、転移があって手術ができない(ステージ4)場合の1年生存率は10~30%程度しかありません。
今までの検査法では、早期癌で見つかるのは10%前後しかなく、元横綱・千代の富士(九重親方)や、名監督の星野仙一さんなども、この病気で命を落としています。こういう疾患にこそ、「N-NOSE」の様な検査は威力を発揮する可能性があります。
公益財団法人日本対がん協会によると、コロナ禍の影響で、2020年(1年間)のがん検診受診者数は、対前年比30.5%の大幅減となっています。本来助かるべきだったがんが末期の状態で見つかることが増える可能性があり、自宅で、簡易に検査できる「N-NOSE」を定期的に受ける様にすれば、偽陽性や偽陰性の確率も減ってくると考えられます。
症例としては、この検査を受けた40代の男性が、「ハイリスク」の結果を受けて病院を受診し、大腸カメラで、父親と同じ大腸癌が見つかり、内視鏡的に切除して、事なきを得ています。そして術後に「N-NOSE」を再検すると、「ローリスク」に変化したそうです。
まだ新しい検査でもあるために、癌では無いけどハイリスクが出た人が、その後様々ながんを見つける検査を受ける際のリスクを検討する必要もありますし、癌なのにローリスクだった人をどうやって救うのかなどの課題は、まだまだ残っています。その辺のデータが無いこともあって、保険収載はされていないのかなと蒼野は思いました。
結局は、癌にならないような生活習慣が重要なのだと思います。特に糖質を減らした食事と、がんを誘発する喫煙やアルコールを避けること、たっぷりと睡眠を取ることが大切です。
蒼野は50になる年に、一度PETを受けたきりです。10年に1回くらいは、調べたほうが良いのか迷ってしまいます。12,500円…! どーしようかな~。
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