良いAGEs?

2022/08/05

 皆様は釜飯の香ばしいお焦げとか、バーベキューで焼かれた、いい香りのするキツネ色のお肉、パンの耳の部分やお好み焼きなどはお好きですか? 健康長寿の勉強をしていると、これらは糖化反応によってできるAGEs(終末糖化産物)が含まれているため、身体に悪いと教えられることが多いです。

 蒼野は広島生まれの広島育ち、カリっと焦げたそばの入ったお好み焼きは、ときどき無性に食べたくなります。そしてこんなに本能が欲するものが、本当に身体に悪いのだろうか? と一抹の疑問を抱いていました。そしてついに最近、AGEsには良いものと悪いものがあると言う記事を見つけたので、これは皆様に報告しなければ、と思い書くこととしました。

 良いAGEsは、食べ物を調理して出来るメラノイジンと言う物質です。糖とアミノ酸を一緒に加熱すると、アミノ・カルボニル反応という反応が起こり、1912年にフランスの科学者Louis Maillardが発見したことで、メイラード反応と呼ばれる様になりました。食品が茶色になり、香ばしい風味や味わいが生まれ、栄養価まで変化します。

 メラノイジンは、このメイラード反応の最終生成物で、肉やトーストやパンケーキを焼いたり、玉ねぎを炒めたりしてできます。コーヒーや味噌、醤油、ビールが茶色いのもメラノイジンです。その風味や味わいは、私たちの食生活になくてはならないものなのです。

 実はメラノイジンには、優れた抗酸化作用があり、脂質の酸化を防いで動脈硬化を予防します。コレステロール値を下げ血糖値を正常に保つ働きもあり、脂質異常症や糖尿病の予防効果もあると考えられています。ビフィズス菌の餌になり、腸内環境を整え、便秘の予防にも有効です1)。

 例えば味噌は、大豆と麹、塩を加えて発酵させてつくられますが、発酵・熟成の過程でだんだんと色が濃くなります。アミノ酸と糖が反応してゆくのです。元の大豆に比べても、はるかに高い抗酸化力を有し、糖尿病を予防したり、発癌を抑えたりする作用が報告されています。

 コーヒー豆にもこのメラノイジンとポリフェノールが沢山含まれており、過酸化脂質をできにくくし、DNAの酸化ダメージを緩和します。発がん物質として知られるニトロソアミンは、胃の中で生成されるのですが、メラノイジンはそれを抑えてくれるのです。

 ここまで書くと、どんどん食べたくもなってしまうのですが、調理法によっては、メラノイジンだけではなく、アクリルアミドという神経毒性や発癌性を持つ化合物質に変化することがあります。120度以上で高温調理された食べ物、ポテトチップスやフライドポテトなどには、アクリルアミドが増えてしまい、高濃度に検出されるのです。

 アクリルアミドもメイラード反応でできるAGEsの一つですが、身体に入れたくない物質として、FAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)からも減らしてゆくよう、注意喚起がなされています。タバコの煙にも入っている物質なのです。

 メラノイジンやアクリルアミドなどのAGEsが口に入ると、健常者では10%程度が血液中に取り込まれます。その3分の1は尿中に排泄されるため、体内に残って影響する割合は多くても7%程度です。ただ糖尿病患者では、最大30%くらいが血中に残ってしまう場合があるため、特に注意は必要な様です。

 今まで蒼野が習ってきた、老化や慢性炎症の原因になり、体内の糖化が進むAGEsの大半は、体内で生成されるものとなります。血糖スパイクと糖尿病がこの糖化ストレスの大きな原因です。体内の大事なタンパク質に糖が結びついてしまうと元に戻れず、機能障害も併発します。

 異物と認識されて、免疫反応の対象となり、あちこちで炎症が起こります。皮膚のコラーゲンに反応すると、シワやたるみの原因になります。骨のコラーゲンに反応すると骨粗鬆症が進みます。糖尿病性合併症の主な原因であり、神経や腎臓、網膜などに結合して傷害を起こします。

 水晶体のタンパクに反応すると、白内障が進みますし、何より動脈硬化の原因にもなり、血圧も上昇します。メタボリックシンドロームにもアルツハイマーにも深く関与しているため、この糖化反応、AGEs産生は、是非防いでいく必要があるのです。

 食事の変化で、体内で糖化ストレスが上昇し、反応する様になったのはここ50〜60年です。しかし食べ物のメラノイジンと人類の付き合いはずっと古いのです。100万年前の人類の祖先が住んでいた洞窟から植物の灰と焼けた骨が見つかっています。人類は火を使い始めてから、急に脳の容積が大きくなり、進化が早まりました。

 火を使って調理すると食品中のAGEs量が増え、AGEs摂取量が増えます。AGEsは、脳血液関門にあるAGEs受容体(RAGE)に結合します。AGEs量が増えるとこのRAGEの数も増えることがわかっています。

 実はRAGEはAGEsと結合するだけでなく、脳内化学物質で愛情ホルモンとも呼ばれる、オキシトシンとも反応し、通常は脳血液関門で脳に入れないオキシトシンが、RAGEと結合することで、脳内に導かれるのです。オキシトシンの欠如は広汎性の発達障害にもつながるため、オキシトシンの誘導が、原始人の脳発達や進化に関与した可能性は高いように思われます。

 人類は長い年月、火を使って調理をおこなって来ており、食べ過ぎなければ、食物中のAGEsはそれほど大きな問題にはならないように、蒼野には思えます。だってあんなに美味しいし、あんなに良い匂いがするのですから……。適度に食べて、オキシトシンを脳内に誘導し、愛情深い人間になることは素晴らしいことでは無いでしょうか?

 ということで、蒼野もお好み焼きは止めずに生きていこうと思います。いつも食べるのではなく、普段はAGEsを作る血糖スパイクを避ける食生活を基本に続けてゆきます。AGEsを最も早く生成するものは果糖です。ブドウ糖の10倍以上のスピードで糖化を進めてしまいます。

 特に飲み物が良くありません。清涼飲料水はもちろん、野菜ジュースであっても、ブドウ糖果糖液糖は避けなければいけません。砂糖はブドウ糖+果糖ですので、こちらも量を取らないよう気をつけましょう。なるべく食物繊維を先に入れるか、同時に摂れる食材を選び、ベジファースト、カーボラストの食べ方を行いましょう。またアクリルアミド入りの揚げ物はなるべく減らしましょう!

 1回に摂れる糖質量は多くても40g以下が安全です。40歳を過ぎてきたら、過剰な糖質は体内で処理しきれず、全て老化、炎症の方向につながってしまいます。基本として主食はご飯なら茶碗半分、食パンなら6枚切り1枚、麺なら半玉を心がけて食べましょう。

 月1回の、そば肉玉イカ天入りお好み焼きを楽しみに、生きていきたい蒼野でした!

参考文献: 1)メラノイジンの生理機能  醸 協 第97巻 第4号 253-256  2002

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