診療報酬改定

2022/04/16

 今日は趣向を変えて、若干社会的なお話です。皆様は診療報酬改定というものをご存知でしょうか? 日本は世界でも珍しい国民皆保険の国であり、病院や診療所で受ける医療行為、使用される薬のほとんどに健康保険が適用されています。2年に1度、これらについて、不都合な部分を改定してゆくということです。

 ひとりの人が生まれてから亡くなるまでにかかる医療費を「生涯医療費」と呼びますが、2011年の厚生労働省の推計によりますと日本人の生涯医療費の平均は2,500万円(男性2,400万円、女性2,600万円)となっています。医療費の自己負担は、年齢や収入などの条件により1~3割程度です。生涯の平均自己負担額は500万円前後という計算になります。

 一方、国の財政を考えると、国の負債自体がGDPの2.5倍と、他国に比べても突出しており、年金財政も非常に苦しい状態です。2019年の国民医療費は44兆3895億円、団塊世代の高齢化に伴い今後も上がり続けることは必至です。蒼野は政治的なことは、詳しく無いのですが、今後我々が払う医療費が上がってゆくのは間違いなさそうですよね!

 そこで今年の診療報酬改定です。医学の進歩に伴い、トンデモなく高い薬も出てきています。指定難病である脊髄性筋萎縮症に顕著な有効性を示した『ゾルゲンスマ』という薬が保険適応となりました。薬価は1回の治療で約1.7億円だそうです。蒼野はひっくり返りました!

 確かに不幸にして難病に罹った方にとっては、保険が使えなければ無いのも同じですので、使ってあげたいですよね! 「高いから保険給付外」というわけではなく、認められるべき場合があってしかるべきだと思います。こういう事から、無駄に使われているかもしれない医療費の診療報酬は改定してゆく必要があるというのは納得できます。

 今回の改定では、後期高齢者の自己負担の見直しや不妊治療の保険適用を実現することとなりました。高齢者中心の給付から全世代に対する公正な給付に見直していくという改革です。資産がある高齢者には、負担を大きくして、不妊治療がしたい若年者の負担を減らすことで、全世代に対する公正な給付に見直すという意図なのです。

 さまざまな医療機関を受診する高齢者の中には、それぞれで山のように薬をもらい、結局捨ててしまうというケースも多いようです。コロナ禍でもあり、健康上の必要性が低い人が、多くの医療機関を受診するということも、感染のリスクから考えても避けるべきでしょう。無駄を減らしてゆく取り組みが必要です。

 今回の改訂では、1ヶ月の湿布薬の処方枚数は最大70枚から63枚に制限されることになりました。薬局で自分で買える薬(OTC類似医薬品)については、徐々に保険適応から外してゆくことが検討されています。今後も高額薬剤が適用されてゆくことを考えると、この流れは止まらないと思います。市販薬への置き換えることで、少なくとも2300億円の医療費が適正化されるとされているからです。

 今後薬を買って飲む、セルフメディケーションが一般化すれば、薬剤知識を皆様それぞれがある程度持つ必要も出てくるのでしょうね。医療側としても、ますますオンライン診療、電話診療が一般化するようになると思われます。

 今年度の診療報酬改定では、新たに「リフィル処方箋」という制度も導入されます。アメリカ、イギリス、フランスなどではすでに導入されています。今までの通常の処方箋は医師が決めた日数分の薬を一度だけもらえるものでした。リフィル処方箋は定められた期間内・回数内であれば同じ処方箋で医師の診療なしで繰り返し薬をもらえるという仕組みです。

 このため、薬をもらうためだけの受診を抑制することができるので、患者さんの負担軽減と医師の業務負担も軽減できる上、国の医療費削減にも繋がります。一方、診察なしでの処方となる為、医療事故や健康被害のリスクは増加しやすいことと、病院、クリニックの収入の減少に繋がります。その分薬剤師の負担は大きくなると思われます。

 大病院に最初からかかることに対しても、負担が変わります。診療所や中小病院の紹介状(診療情報提供書)を持たずに200床以上の大病院を受診する際は、定額負担費が2000円値上げされ7000円になることも決まりました。患者負担は3割負担の方で全体で1400円ほどのアップになります。

 この制度は、大病院が近隣の中小病院や診療所などと連携し、患者を紹介し合って、医療の効率化・機能分化を図るために導入されています。紹介が無いことで、大病院が儲かる事が無いよう、アップ分は国に入ります。また、科が違えば、同じように徴収されるため、大病院の受診歴があっても、違う科を受診する際にはその都度紹介が必要です。

 かかりつけ医での紹介状の正式名称は「診療情報提供書」です。これは保険適応になるため、3割負担の人でも750円で済みます。やはり体調が優れない方については、日頃の健康管理の上でも、紹介してもらう上でも、かかりつけ医を持っておくと安心かもしれませんね。

 今大きな病院に勤めていない蒼野にとっては、病歴が長く、沢山の病気をお持ちの患者様の、診療情報提供書を1枚書くのは、カルテを見返したりして結構時間を取られるため、何枚もとなると、少しゲンナリしてしまいますけどね!

 入院した時を考えると、日本の医療で特徴的なのは、平均在院日数の長さです。蒼野が研修医だった頃は、大病院に勤めていたのですが、何年も入院しておられる方がある程度居られました。急性期が診れる病院のベッドは、急性期の患者様に使ってもらうのが一番良い訳で、診療報酬も在院日数短縮が一つの命題となっています。

 平均在院日数は、2013年のデータでは、イギリス7.7日、フランス5.6日、アメリカ4.9日です。日本は約18日と飛び抜けて高く、歯止めのかからない国民医療費増大の要因の一つと指摘されています。これには国民皆保険制度の導入後、医療機関が福祉サービスも肩代わりしてきた経緯が影響しています。

 今まで我が国では、国民皆保険制度があることで、高齢になり生活に支障をきたすと入院するという、外国にはない「文化」が形成されてきました。しかし、国の医療費抑制策に基づき、病院は早く退院を求める姿勢が強まっています。少子高齢化で、介護者は少なくなっており、その負担も限界ですので、お金が無ければ、受け入れ先が無くなる問題は、ますます大きくなってくると思います。

 できる限り良くなってから退院したいということも叶わなくなり、退院後に自分でリハビリできなければ、そのまま寝たきりになる確率も大きくなっているのです。特に医療費の負担が上がるのが70歳以降です。現時点で自己負担でも400万円前後、今後はさらに増えてゆくと考えておく必要があります。

 本当に病気にならないのが一番です! 皆様も日々の生活に忙しく、あまり気にしておられない方も居られるのでは無いでしょうか? しかし若いうちから、自分にとって正しい、食事、運動、睡眠の生活習慣を見つけて、未病のうちに対処することが、一番お金が掛からない方法になると思います。

 『健康を無くせば、幸せな人生は無くなる』と蒼野は思っています。人生100年時代、ピンピンころりを目指して、楽しみながら生活習慣を見直してゆきましょうね!!

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。