集中力をアップするには!

2021/11/07

 集中する力が欠如して問題になる病態は、Attention Deficit Hyperactivity Disorder(ADHD)と言われており、現代ではADHDと診断される人が爆発的に増えてきていると言われています。アメリカでは子供の12%、600万人以上がADHDと診断されているそうです。

『注意散漫』、『衝動性』、『多動性』が揃うと診断されます。この傾向は大なり小なり、私達全員がその要素を持っており、原始時代から受け継がれてきているのです。衝動性や多動性は、迅速な決断が必要な活動的な環境で暮らす狩猟民族にとっては有利になる性質だったからです。

 歩き回り、狩りをして、食べ物が無くなれば別の場所に移動するという生活の中では、じっとしていられずに思いつきで行動することで、食料が調達できる確率が上がったのです。ADHDの特性が、本当に不要な物であれば、進化の過程で、既に淘汰され無くなっているはずです。

 『探検家の遺伝子』ともいわれる、この特性のお陰で、人類は東アフリカから、新しい環境を求めて旅をして、10万年かけて地球上の様々な土地で暮らすようになりました。

 しかし現代社会では、ADHDの特性が役立つ場面がほとんどなくなっており、危険を冒したり、思いつきで行動したりすると、問題視されることが多くなっているのです。一方、成功するビジネスリーダーや起業家に、じっくり腰を据えて結果を待つよりも、動きまわって多くのことを成し遂げる、ADHDの特性が多く認められるのは偶然では無いようです。

 脳科学的に言うと、ADHDは、大脳の側坐核のドーパミンの感受性が低い性質です。側坐核にドーパミンが働くと、脳の報酬系が活性化し、今行っていることは続ける価値があると判断され、それに集中できるのです。しかし感受性が低いと、行う価値があることがみつけられず、次から次に注意が向いてしまい、集中ができず、衝動、多動の状態が続くのです。

 ドーパミンは、集中するのに絶対欠かせない物質です。サバンナで生きていた原始人が、食料を手に入れるための狩りの時や、敵や危険を避けるためには、集中できなければ命取りになるのです。同時にそういった場面では必ず、獲物を追いかけたり、敵から逃げたりして、人類は体を動かしていたのです。

 運動して身体に負荷を与えると、ドーパミンが沢山放出され、側坐核がそれを受け取ることで、脳はその行動が生死を分ける重要な行動であると解釈するので、集中力が高められます。つまり運動すれば、脳本来のメカニズムが活性化して、集中力は改善してゆくのです。ADHDの脳は、とりわけ動くことに適しているとも言えるのです。

 全人類の脳は、体を動かして、生存してゆくためにできています。しかし現代では圧倒的に運動が不足している人が増えています。そしてADHDの負の面が強調され、薬が処方されています。

 脳は周囲にある、おびただしい数の情報を処理して重要だとみなしたものだけを我々の意識に知らせて、注意を促しています。現代社会では、パソコンやスマートフォンからの情報の波は膨大で、我々は集中することがとても難しくなっています。

 若い人の耳鳴り(頭鳴り)はドーパミン不足で、普段ならふるい落とされる雑音が、聞こえてしまいます。ADHDの人の場合はこの雑音が大きく、うるさくて集中できないと言われています。しかしドーパミンの分泌が増えれば、煩わしいものは消えてなくなり、目の前の物に集中することができるようになるのです。

 歩くよりは走る方が良いと言われています。身体に負荷がかかればかかるほど、脳はドーパミンやノルアドレナリン(これも集中物質)をたっぷりと放出します。最大心拍数(220ー年齢)の70%程度、40代で130~140/分、50代で125/分以上くらいの運動が理想的です。短時間で済ませたい方はHIITなどもおすすめです。

 習慣にして、朝、20~30分運動できれば、2~3ヶ月で、昼間の集中力が改善されます。ADHDや耳鳴りの改善にも、副作用もなくとても有効です。現代生活で、1日に3時間以上じっと座っている人の集中力と記憶力は損なわれており、不安や鬱の症状も出やすくなっています。

 良い事尽くめの運動習慣、少しずつで良いので、運動を生活に取り入れていきましょうね!

参考書籍: BRAIN 一流の頭脳 アンダース・ハンセン

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