馬鹿と天才は紙一重!

2021/12/15

『馬鹿と天才は紙一重!』ということに関して今日は書いてみたいと思います。

 創造的な天才と精神疾患が紙一重である例は、歴史の上でも数多く存在しています。天才画家ゴッホも、類い稀れな哲学者ニーチェも、人生の一時期に精神病を患っていました。

 近年では、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュが、人並外れた創造性を有しながらも、深刻な精神の問題(統合失調症)を抱えており、それはアカデミー賞映画の『ビューティフルマインド』にも描かれています。

 アインシュタインには、統合失調症の息子がいましたし、デビッド・ボウイには、統合失調症の兄がいました。これは単なる偶然でしょうか?

 創造性というものは、斬新で、今までにない発想であると同時に、人の役に立つことである必要があります。狂人性とは、人のやらないことをやること、すなわち常識からの変異度を指しています。それにたいして秀才性とは、状況を把握して本質を理解し、状況に合わせて問題を解決する力です。

 日本人は、想像力や独創性に乏しいと言われますが、日本社会では、狂人型の思考を持っていると、白い目で見られ、いじめられることも多いことが影響している様です。現在の学校教育では、子どもたちの狂人性、すなわち未知へ挑戦しようという創造性の牙は、学年を重ねるごと摘まれてゆきます。秀才的な思考ばかりが植え付けられるのです。

 しかし社会に出た途端、「これまでにない商品企画を提案してくれ」とか、「斬新な発想で新規事業を構想してほしい」とか「新規性のある研究テーマを考えてください」とかを求められるのです。変動の世の中を生き抜くには、創造性は重要なテーマとなります。

「狂人的な思考」と「秀才的な思考」、全く相反する様に見えるこの能力ですが、脳内では、常に同居していることが分かってきました。その一つは「感覚的な右脳」と「論理的な左脳」です。

 脳科学者のロジャー・スぺリーやマイケル・S・ガザニガは、難治性てんかんの治療として、行われていた脳梁離断術後の患者(分離脳)を詳しく調べました。そして右脳と左脳には部位ごとに独自の働きがあり、互いに往復しながら思考を補い合っていることがわかったのです。

 脳内には「変異的な右脳=狂人的な思考」と「適応的な左脳=秀才的な思考」が、別々の部位の働きとして存在しています。狂人性と秀才性を絶えず葛藤させ、統合することによって、創造性が生み出されるということです。

 そこには、視床が大きな役割を果たしています。脳の中には、絶えず膨大な数の情報が絶え間なく選別されています。視床は我々が情報の波に飲み込まれないように、フィルターをかけ自動的に、意識に上る情報と、意識されない情報に選別しているのです。

 脳内で情報が溢れてしまう現象が、統合失調症です。意識の上に、大量の情報が送られてしまうと現実と空想の区別が付かなくなり、奇想天外な妄想を信じ込んでしまうのです。

 しかし天才と呼ばれる人は、多くの情報を、意識の上で整理し、普通の人が持っていない視点から、独特の発想を得たり、物事が見えたりするのです。

 視床のフィルターが正常に働くには、脳内物質であるドーパミンを受け取る量が適量である必要があります。多くの発想ができる人や統合失調症の人は、視床のドーパミンの受容体が少なく、ドーパミン値が低いことが分かっています。

 馬鹿と天才が紙一重なのは、視床から送られてくる過剰な情報を処理する、強靭な前頭葉を持っているかどうかにかかっている様です。今までのブログで書いたように、前頭葉は運動で強化できるのです。

 運動すると、前頭葉の血流はすぐに良くなります。運動で前頭葉の神経細胞が増えることもわかっています。まだ解明はされていませんが、運動するとドーパミンが分泌され、視床から送られる情報が増えて、アイデア自体も溢れてくることもわかっています。

 スタンフォード大学の研究では、歩きながら新しいアイデアを出すテストを受けたグループと、同じ道を車椅子で回りながらテストを受けたグループでは、歩きながらのグループの創造性が60%も増していました。これはトレッドミルで歩いても同じでした。

 スティーブ・ジョブスはしばしば歩きながら会議を行いました。これに賛同して、Facebookのマーク・ザッカーバーグやTwitterのジャック・ドーシーらも『ウォーキング・ミーティング』を取り入れています。

 また村上春樹さんは、作品の執筆中は、毎日10kmのランニングを行い、その後泳いでいるのです。アインシュタインは自転車に乗っている時に、相対性理論を思いつきました。ダーウィンも『種の起源』を着想した頃、『思索の小径』と自ら呼んでいた散歩道を、何時間も歩いて過ごしたとのことです。

 太ったクリエイターは少ないと言われています。健康体で、身体を鍛えている人が運動すると、創造性のテストは好成績になります。しかし鍛えていなければ、激しい運動をすると疲れてしまい、数時間に渡って創造性は衰えるのです。

 創造性を上昇させるには、ウォーキングよりも、ランニングなどの脈が速くなる運動が効果的と言われています。その効果は運動後、1時間から数時間です。疲れるほど運動すると、血流が筋肉に取られてしまい、脳血流量は減ってしまいます。体力に自信がない人は、ウォーキングから始めてみましょう。

 激動の現代を生き抜くには、自分の新しいアイデアを、創造してゆく必要があると思います、運動習慣をつけてゆくことで、あなたも天才になれるかもしれませんよ!!

参考書籍: 進化思考  生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」 太刀川 秀輔

      BRAIN 一流の頭脳 アンダース・ハンセン