健康と体内時計!

2022/05/11

 今日は体内時計の話です。少し大きな話題になり、情報量も多いため、何回かに分けて書きたいと思います。皆様は生活が不規則になると、調子が悪くなった経験お有りかと思います。ゲームして夜更かしした。飲み明かした。徹夜で麻雀した。蒼野も若い頃経験があります。

 経験上、その時は楽しいのですが、翌日は使い物になりませんよね。翌日だけでなくその週は結構しんどかったりします。遊びだけでなく、蒼野は救急病院に勤めていたので、患者様が悪くなったら夜中でも呼び出されましたし、脳外科の手術は、昭和の時代はとてつもなく長いのがありました。

 研修医の時には、夜中の手術は辛かったです。最長で36時間というのがありました。自分がメインで手術していないときは、どうしても眠くなります。手術衣を着て、手袋をして、完全に清潔な状態なのに、居眠りして椅子から転げ落ちて、一瞬にして不潔になったことも覚えています。

 時が経ち、自分が術者になると、アドレナリンが出まくっているので、不思議なことに眠くなりません。それどころかおしっこにも行きたくならないのはびっくりします。脳腫瘍の手術をしている時に、くも膜下出血の患者様が運ばれてきて、終わると直ちに次の手術で、併せて1日以上手術室で手術していたこともあります。

 大抵仕事が終わると死んでました。しばらくは調子が悪いです。脳神経外科医は心臓外科医に次いで、統計的に平均寿命が短いと聞いたことがあります。ある程度大きな病院でも、少ないスタッフであることが多いので、40歳くらいまでは、月に12日当直していました。今考えると、若さで乗り切れたのかなと思っています。

 前置きが長くなってしまいました。『1日のリズムが取れない生活は、本当に健康に悪い!』ということが、最近は特に注目されるようになり、時間栄養学とか、時間運動学、時間薬理学などの新しい研究が進んでいます。細菌からヒトに至るまで、地球上の多くの生物には、体内時計があり、リズムを刻んでいます。

 体内時計は、体内で刻まれる時間と、外界の時間を調整するシステムです。1997年に時計遺伝子が発見され、すべての細胞がリズムを刻んでいることが分かりました。その研究が発展し、2017年、時計遺伝子が、朝の光によってタンパク質の合成と活性化を起こし、体内時計を動かすメカニズムが解明され、研究者3人にノーベル生理学・医学賞が贈られました。

 脳の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」と呼ばれる部分に主(親)時計があり、心臓や肝臓、脂肪、筋肉などの末梢組織の細胞にも、それぞれ個別に時を刻む副(子)時計が備わっています。これが調和して動いていると、神経、免疫、内分泌システムは正常に稼働します。

 明石に標準の主時計があって、細かく見ると北海道から沖縄まで、個別に副時計があるイメージでしょうか? 主時計からの信号はホルモンや神経因子によって伝達され,末梢組織の副時計を統制しています。体内時計が狂ってしまうと、脳や末梢の組織の働きまでが、バラバラに狂ってしまい、身体をコントロールする全体の調和が乱れてしまうのです。

 体内時計が狂って同調できなくなると、睡眠障害はもとより、うつ病、肥満、糖尿病などの代謝障害や、免疫・アレルギー疾患、さらにがんの発症にもつながることが分かって来ました。それが毎日規則正しく生活できない職業や生活では、長生きができない理由です。

 ホルモンにも日内変動が多く認められます。成長ホルモンは、夜間の睡眠中多く分泌されます。「寝る子は育つ」のはそのためです。副腎から分泌されるコルチゾール(ストレスホルモン)やアルドステロン(電解質と体液の調整)は、早朝に高く、夜は低くなります。体内時計が狂うとホルモンも乱れるため、体調に影響が出ます。

 病気の症状にも1日のリズムがあったりします。喘息発作は明け方によく起こります。狭心症や心筋梗塞は早朝から午前中に多いことが判明しています。近年ではそれを防ぐために、時間を選んで薬を飲む時間薬理学という学問も、研究されるようになって来ました。コレステロールを下げるスタチンという薬は、夜間にコレステロール合成が盛んになることから、夕食後に内服することも勧められるようになりました。

 体内時計は地球の24時間の周期に合わせる必要があります。しかし我々の体内時計は1日24.5時間の周期で動いています。健康的に生きてゆくには、これを毎日リセットして、合わせてゆくことが必要となります。時計を合わせるきっかけになるものが光と食事です。

 視交叉上核にある主時計は、朝の光が目に入るとリセットされます。光でセロトニンが作られます。歩くともっと分泌されます。メンタルが安定し、気持ち良く1日がスタートします。夜になるとメラトニン(睡眠ホルモン)が、脳の松果体から分泌され、眠たくなります。メラトニンは光があると分泌がストップし、暗くなると分泌されるのです。

 一方、肝臓や消化管にある副時計は、光には関係なく、朝の食事でリセットされます。主時計と合わせるには、食事時間は7時、12時、17時くらいが理想です。これが12時、17時、22時などのように、遅く食べた場合には、主時計よりも遅れて副時計が動くため、リズムの調和が乱れてしまいます。毎日、太陽に合わせて、同じ時間に食事をすることが重要なのです。

 毎日健康に、最大限のパフォーマンスで暮らすには、時間についての考え方が絶対に必要であると言えます。同じ物を、同じ量食べても、時間が違えば、身体への影響が変わります。これが時間栄養学です。また同じ運動をしても、時間が違えば、効果が変わります。これが時間運動学です。長くなるためこれらはまた解説させてもらいます。

 今日は分かって頂きたいことは、健康長寿のためには、体内時計を狂わせないような生活を心がけてほしいということです。そのための方法は次のとおりです。

1、朝の光を浴びて、リズム運動(早足での散歩など)を行い、主時計に朝を教えましょう
2、散歩の後、よく噛んで、朝食(特に糖質)をとり、副時計に朝を教えましょう。
3、休日も朝寝坊せず、起床時間を一定にしましょう。(12/13のブログ参照)
4、カフェインは出来れば、午後2時まで。遅くとも就寝4時間前までにしましょう。
5、昼寝は30分以下、午後3時以降はやめておきましょう。
6、夜の照明は明るすぎないように! スマホ、PC、テレビなどの光も就寝1時間前には少しでも目に入らないように注意しましょう。
7、アルコールは睡眠を破壊します、飲むなら睡眠4時間前までに少量が推奨されます。
8、食事は就寝3時間前までに! 遅くなる時には夕方おむすびなどを食べましょう。夜遅くには、糖質を避け、軽く済ませましょう。

 蒼野は、早死にしたくないこともあって、手術や救急の病院勤務は7年前に卒業としました。皆様の中にも、夜勤のある職業の方もおられることと思います。若いうちは大丈夫ですが、ある程度以降の年齢になったら、やはり体内時計のリズムを守る生活ができるよう、計画しておくことは重要ではないかと思います。

 毎日のリズムを守ることを意識し出してから、若い時よりも、快適な体調で過ごせている蒼野でした。

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