サルコペニアの予防法!

2022/11/12

 今日は筋肉を減らさない、サルコペニア予防のための生活習慣について書いておきたいと思います。ヒトは20代半ばをピークに、筋肉量は減少してゆくのが普通です。平均で60代までは10年で7%ずつ減少し、60代からは年2%減少すると言われていて、70代ではピーク時の4割程度にまで減ってしまうのです。

 昨日のブログでも書いたように、筋肉に負荷をかけ続けていないと、筋肉は急激に減少してしまいます。無重力の中で過ごす宇宙飛行士は、週に6回、2時間半ずつトレーニングをするそうです。しかし宇宙ステーションで半年過ごすと、筋肉は10~20%も減ってしまい、骨も弱くなってしまうため、地球に帰った直後には、自力で立って歩く事が困難になるのです。

 毎日デスクワークを行い、移動は自家用車、自宅でもソファに座ってテレビやスマホを見る、運動しない生活がいかに恐ろしいかわかりますよね。高齢になって寝たきりで過ごす期間があると、地球に帰った直後の宇宙飛行士と同様に、自分で歩けなくなってしまうのです。日頃からしっかり筋肉を貯める、貯筋を心がける生活が、介護を受けずに人生を全うするために必要なのです。

 蒼野は患者様の生活について、よく問診するのですが、運動習慣の無い人は本当に多いですね!特にコロナ禍になってから、外出を控えることで酷くなっている印象です。高齢になった時に筋肉が減って、介護が必要になるということは聞いた事があっても、元気で動けていて、何の症状もない時期に、きっかけもなく筋トレを始める人は稀にしか居られません。

 「運動しないといけないなあ」と思っている人は多いのですが、家電の発達や、自宅にいながら買い物ができる様になり、食事さえもウーバーイーツで届けてもらえる様になった現代では、ベースの運動量自体が減っています。日本人の1日あたりの平均歩数は1997年の男性8202歩、女性の7282歩から1000歩以上減っており、2019年は男性で6793歩、女性で5832歩となっています。

 現代では運動習慣のある人は2割程度です。運動不足で起こりやすくなる糖尿病や心臓病、がんなどへの運動の影響を試算したところ、世界の全死亡の原因のうち9.4%が身体活動不足であり、日本ではなんと16%が、運動不足のために亡くなっているとされています。コロナどころではないパンデミックですよね! 運動不足自体が病気と考える必要があるのです。

 日本人は人生の最後の約10年を介護状態で過ごすというのはご存知ですよね。蒼野自身も介護生活にはなりたくありませんし、このまま高齢化が進んで介護者が増えれば、悲惨な未来社会が待っているように思うため、出来るだけ多くの人が死ぬまで元気に動ける生活習慣を身につけて欲しいと思っています。

 介護が必要になる要因として、サルコペニア、フレイル、そしてそれらが原因で起こる転倒骨折を合わせた割合は、65~69歳が7.2%、70~74歳が9%、75~79歳が18.2%、80~84歳が26%、85~89歳が39.6%、90歳以上になると58.9%にもなるのです。長生きする予定の人は、筋肉を落とさない生活を身に付けるしかありません。

 まず現在の自分の状態を評価しましょう。簡単には両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみましょう1)。隙間ができる様なら危険信号です。蒼野は細い方の右足でも指2本くらい間が開き、囲めないのでセーフでした。

 サルコペニアの予防には、運動と栄養が重要なのは当たり前ですよね。まずハードルの低い食事から意識してゆきましょう。筋肉を作る上では、身体の中で作れない必須アミノ酸の摂取が必要です。特に分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、筋肉のエネルギー代謝や合成に重要な役割を果たします。

 BCAAの中でも、特にロイシンはたんぱく質の合成を促すことで筋肉量を増加させ、筋肉の委縮を起こしにくくします。肉、魚(マグロやカツオなど)、卵、豆腐、乳製品などを十分に摂る必要があります。体重×1.2~1.5g/日が必要ですので、ご飯だけとか、パンだけの食事にすると不足します。

 一度に吸収できるタンパク質は最大40~50g程度ですので、できれば3食均等に摂りたいところです。採血でアルブミン値が低い(3.5g/dl以下)の人は、BCAAのサプリメントの摂取も検討してみて良いと思います。プロテイン摂取を入れると、食事が楽になります。また筋肉を作るのに必要なビタミンDも重要です。ぜひ朝散歩を習慣にして日に当たりましょう。

 サルコペニアの予防には、禁酒・節酒も重要です。アルコールが肝臓で解毒、代謝される際に、筋肉がつくられるのを妨げるミオスタチンと呼ばれる物質を増加させます。筋トレをした日に飲むのは勿体無いと思います。肝臓が悪くなると、エネルギー不足になり、筋肉内のBCAAが使用されてしまうため、サルコペニアが起こります。肝臓を痛めないためにも、飲酒は控える必要があります。

 長期にわたって胃酸抑制剤を内服していると、胃酸が減少するためタンパクの吸収が低下してしまいます。タンパク不足になると、消化酵素まで減ってしまうため、さらに吸収が悪くなってしまうのです。そうでなくても、肉がもたれたり、胃が痛くなったり、お通じが悪いなどで食欲が湧かない人の場合には、栄養摂取方法を工夫して、消化力低下とたんぱく質不足を予防する必要があります。

 BCAAの形のサプリメントで摂取したり、肉や魚で出汁やスープを取ってアミノ酸を摂取しましょう。胃酸の代わりになる梅干しやレモン、酢などを増やしたり、消化酵素の代わりになる塩麹や甘酒、大根おろし、キウイ、舞茸などを取り入れましょう。特に甘酒にはアミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼという3大栄養素すべてを分解できる酵素が含まれている上、腸内環境の改善にも役立つのでオススメです。

 サルコペニア改善のための運動は次の通りです。隙間時間に行いましょう。できたら起床後とか、歯を磨くときとか、きっかけを決めて習慣化すると、続けやすくなります。 1、アキレス腱伸ばし、前屈、後屈、側屈などのストレッチ 2、肩回しと股関節回しを20回 3、スクワット10回 4、壁や椅子で支えたまま爪先立ち20回 5、壁立て伏せ 20回くらいからなら運動習慣がなくてもできそうです。

 週5日以上、できれば毎日行いましょう。一度にやらなくても、また全部やらなくても大丈夫です。スキマ時間を利用しましょう。負荷を感じなくなったら、動作をゆっくりにしたり、回数を増やしたり、深くスクワットでしゃがんだり、腕立て伏せに移行したりしましょう。座っていても踵上げはできますし、足上げや腿上げを行うニートウーチェストなども取り入れましょう。

 蒼野は事故という大きなキッカケがあったことで、毎日1万歩以上歩くようになりました。病院で3階から1階までエレベーターに乗って降りる時に、股関節回しやスクワットを行い、3階に戻る時には階段を2段飛ばしでゆっくり上がっています。

 せっかく身につけた運動習慣を死ぬまで続けてゆきたいと思っている蒼野でした!

参考文献:
1)サルコペニア危険度の簡易評価法「指輪っかテスト」    臨床栄養 125(7) : 788-789, 2014

参考ページ: フレイル・サルコペニア予防のための食事と運動   新井 秀典  山田 実
https://www.akiyaku.or.jp/assets/uploads/2021/03/2 フレイル・サルコペニア予防のための食事と運動 クリニコ.pdf

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