40Hzの光と音!未来の認知症予防法?

2023/07/08

 今日は少しだけ未来的な健康のお話です。光や音は我々の細胞に影響があるという論文を見つけました。その論文を元に、認知症予防のための健康機器やアプリが開発されてきています。今日は脳機能、そして全身の健康にも影響があるかも知れない、40Hzの光と音のお話です。

 2016年のNatureで報告された論文によると、アルツハイマー病マウスモデルに対して、40Hzの高速光点滅刺激を行うと、マウスの脳内のアミロイドβが45~53%も減少するという事が発見されました。そしてマウスの空間記憶を含む認知機能の改善も観察されたのです1)。とても興味深い結果です。

 40Hzというのは、脳波的にはガンマ波です。人の脳波は5種類あり、31~120Hzの脳波がガンマ波です。ものごとに集中している時や、瞑想の時などに出てくる脳波です。認知機能、情報処理、学習、記憶、注意など、脳の高度な機能と関連しています。40Hzの刺激により、ガンマ波の活動が、促されるのではないかと考えられています。

 2019年の論文では、アルツハイマー病マウスモデルに対して、40Hzの音を聞かせることで、やはりアミロイドプラークが減少し、アルツハイマー病のもう一つの特徴である、タウ蛋白のリン酸化を減少させることが報告されています2)。

 その病理的な検討では、聴覚皮質と海馬で、脳の免疫反応を担当するミクログリアとアストロサイトが、アミロイドを取り込むのを促進し、アミロイドの排出を促すようです。また脳内の血管系も拡張が見られ、アミロイドの除去に寄与していることが示唆されました。

 そして、音と光刺激を同時に行えば、前頭葉の大脳新皮質全体のアミロイド病変を減少させ、海馬の機能を高めることが分かりました。この実験結果を元に、すでに40Hzの刺激デバイスが、いくつも売り出されていました。スマホアプリでも、『Brain Training with 40Hz Light』というのが出ています。

 シオノギヘルスケアからは「ガンマ波サウンドケアKikippa」という商品が今年の4月に発売になっています。本体49500円、別にサービス利用料が月1980円かかるようです。テレビの音を40Hzのガンマサウンドに変調し、テレビを見ると脳が活性化され、聴いた人の脳波が、40Hzのガンマ波に同調し、認知症の予防になるということのようです(参照ページ)。高齢者は毎日見るものなので取り入れやすいと思います。

 その後の研究でも、40Hzの光刺激と、運動を組み合わせると最も効果的にアミロイドβとタウが減少する事が分かりました。この組み合わせは、新しい神経細胞が作られることを助け、細胞死を防義、これにより、認知障害を改善してくれるのではないかと期待されています。そのメカニズムとしては、運動や40Hzの刺激によって、細胞内に少しだけ活性酸素が出てくることが関係しているようです3)。

 少量の活性酸素は、細胞にとってのホルミシス効果があり、それに対抗して、細胞の抗酸化システムを活性化してくれます。そのためミトコンドリアの機能が維持され、細胞自体の機能も維持されやすくなるのです。認知症は老化に密接に関わっています。40Hzの光や音の刺激は、老化を、細胞を鍛えながら遅らせる方法であると考えられます。

 老化とは、近年、酸化と糖化、そして腸内環境の悪化によって、全身の慢性炎症が起こり、細胞が全身の細胞が、少しずつ機能不全を起こしてゆくものであると考えられています。40Hzの刺激は細胞自体に働きかけて、細胞の抗酸化能を強化する作用があるのでは無いかと、同志社大学の市川寛教授はおっしゃられています。

 市川先生の研究では、40Hz刺激のホルミシス効果は、すべての細胞に影響している可能性があるそうです。刺激によって筋肉細胞の抗酸化作用が鍛えられれば、筋肉細胞のミトコンドリアの機能が保たれるため、サルコペニア予防にも期待が持てるとのことです。運動や食事習慣が変えられない人にとって、音を聞いたり、光を見たりするだけで、筋肉が衰えにくくなるなら、やってみる価値があると思います。

 老化と酸化は密接に関わっています。狭い場所で飼育したショウジョウバエに比べて、広い所を飛び回らせたショウジョウバエの寿命は、半減するそうです。ミトコンドリアを使えば使うほど酸化は進みやすいことが影響していると考えられています。つまり老化対策には、酸化予防や、抗酸化力を高く保つことが本当に重要なのです。

 現在行われている認知症治療の、内服や注射の効果は未だに限定的です。40Hz刺激は、目に見えないため、「ほんとなの?」と一見眉唾な感じもするのですが、光や音の刺激で、認知症が改善するのであれば、すごい方法だと思います。刺激により体内の抗酸化力が高まれば、動脈硬化の進行も抑えやすくなりますし、血管を拡げるNOが産生されやすくなります。

 夜間血圧が上昇すると、認知症になりやすくなることが観察されています。脳血流との関係とか、脳圧が上昇することで、グリンパティックシステムの働きが弱くなる事などが考えられますが、そのメカニズムは不明のままです。しかし40Hz刺激で抗酸化能を高めておくことは、夜間血圧を下げることにも繋がります。

 少し話は変わりますが、音というものもエネルギーを持っています。太古から自然の音や、音楽と共に人類は進化してきました。中世に出来たパイプオルガンには、人間が聞こえない低音である(いわゆる超音波)20Hz以下の音が出る鍵盤が存在しています。そしてバッハは聞こえない16Hzの音も含めた曲を2曲残しています。

 耳では聞こえなくても、聴いた人の脳に影響が出ることをバッハは知っていたのかも知れません。現代でも、音楽で救われる人は沢山おられますよね!音楽にも健康を導く力があるというのは皆様も経験的には感じておられると思います。研究が進んでゆくとそのメカニズムも明らかになるのでしょうね。楽しみです。

 自然の中の音には、この40Hzの低音も結構含まれていて、我々の健康に影響していると、市川先生は言っておられます。人類は自然の中で何百万年も進化してきたのですから、取り巻く環境にそういう音があることが当たり前でした。都会生活では、違う周波数の音に囲まれているということも、生活習慣病の一つの要素になっているのかも知れませんね?

 蒼野は今、一人暮らしの母親がいる実家で、片付け中です。91歳の一人暮らしでは、少しずつできないことが増えており、ちょっと前の事が分からなくなっています。この情報を知って、ダメ元でも良いと思い、Kikippaを申し込んだ蒼野でした。もし効果が感じられたら、また報告しますね!

参照文献:

1)Gamma frequency entrainment attenuates amyloid load and modifies microglia. ; Nature2016. 540, 230–235

2)Multi-sensory Gamma Stimulation Ameliorates Alzheimer’s-Associated Pathology and Improves Cognition. ; Cell 2019 177, 256–271

3)Physical exercise during exposure to 40-Hz light flicker improves cognitive functions in the 3xTg mouse model of Alzheimer’s disease

参照ページ:認知機能に作用する「40Hzガンマ波サウンド」共同開発 
https://gammawavesound.com/

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