蒼野ももうすぐ62歳になります。色々あって、4月からはまた職場を変えようと思っています。ずっと同じ所で働いていた訳ではなく、スタッフは歳が離れた異性ばかりということで、プライベートでの交流はありません。職場を変わっても大きな変化はないのですが、同世代の会社勤務の方は定年退職すると人間関係の激変で、健康を害する人もいる様です。今日はその辺のお話を書いてみたいと思います。
「会社を辞めたら、友達がいなくなった。」という悩みは多くの会社人にありがちな悩みの様です。会社の同僚や上司・部下など、それまで毎日話もしていて、同じように行動していた人は、退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶えてしまいます。プライベートでも飲みに行ったり、ゴルフに行ったりしていた、友達と思っていた人まで消えてしまうのは、普通にあることの様です。
ずっと以前の話なのですが、私の父は銀行員で、ある程度、出世した人なのですが、銀行を辞めた途端、いつも家まで迎えに来てくれて、一緒に麻雀したり、談笑したりしていた人が、ぱったり姿を現さなくなり、電話して、麻雀に誘ってくれるよう頼んでも、手のひらを返したように冷たくなったと嘆いていたのを、思い出しました。
会社の人間関係は、一つのコミュニティに所属しているからこそ、成り立っているものが多い様です。悩む人は「そもそも友達なんて元からいなかったのに、それに気づいていない」場合が多い様です。家庭や趣味より仕事に邁進し、出世も果たし、そこそこの上席管理職を経験した人ほどその傾向が強いと言われています。
会社でのポストが上であれば、ランチや、飲みに行く時も、声を掛ければついて来てくれる人は多かったかもしれません。しかし自分自身を考えてみても、退職した上司に、あえて連絡を取るでしょうか?何十年勤めていても、退職した瞬間に、それまでの人間関係は消滅するのです。
年代別に調査した結果、男性は、50代から急激に「友達ゼロ」が増えていきます。70歳以上でさらに友達の数が減るのは、友達自体が死んでしまうからですが、男性は、加齢と所属の有無とともに、友達がゼロになっていく人が多いのです。そこで大きな絶望を感じ、様々な問題が、健康問題も含めて起こってきます。
蒼野の外来にも、夫が退職し、趣味もない人なので、ずっと家にいる様になり、いろいろとうるさく口出しするので、頭痛が治らないと訴える中高年の奥様が一定数居られます。そういう方は、外来でいつも同じ話ですが、聞いてあげると楽になられる様です。夫原病の典型的なパターンですね。
内閣府が行った、60歳以上の男女の生活と意識に関する調査でも、この辺りが浮き彫りになります。「生きがいを感じるのはどのような時ですか?」という質問に対する男性の回答は、「趣味・スポーツ」以外は「仕事」や「勉強」「収入」などの、仕事がらみのものが多いのです。
いっぽう女性は「おしゃれ」、「友達と交流」、「おいしい物を食べる」「旅行」「他人からの感謝」といった、人とのつながりに生きがいを感じる人が多いのです。しかしこれらを急に、高齢男性に求めるのは難しそうです。
東京都健康長寿医療センター研究所の世代別「孤独感」と「社会的孤立状況」に関する調査では、2020年よりも2021年になって、40代、50代の孤独感が大きく増悪していたそうです。コロナ禍で、オンラインの仕事も増え、雑談も減って、会社内部でも、うまく人間関係が作れない男性が、孤独感を深めるケースが多くなっています。コロナの影響も大きいですね。
統計では、自殺率も40~60代の男性が最も高く、同世代の女性の約2倍です。男性は目的がないと、うまくコミュニケーションが取れない人が多いのです。一方女性は、目的が無くても、ただお茶を飲んでおしゃべりし、感情が共有できることで、孤独感が解消できる人が多いです。
人は繋がりたい欲求を誰もが本能的に持っています。ブルーゾーンと呼ばれる、世界の長寿地域でも、地域のコミュニケーションが円滑で、お年寄りが大事にされ、多くの世代が仲良く暮らしているところがほとんどです。人と触れ合うことで分泌されるオキシトシンは、やはり必要不可欠な脳内化学物質なのでしょう。
少し横道にそれますが、「寂しくって死んでしまうなんて、ウサギみたい」と思う方がおられるかもしれません、「ウサギは寂しいと死ぬ」というのは、ドラマでも使われたセリフですが、科学的には嘘の様です。ウサギは病気や体調異常を隠す性質があり、飼い主が出かけている間に突然死するケースが多いことから「寂しいと死ぬ」という噂が広まった様です。
それでは、趣味のない退職後の男性はどうすれば良いのでしょうか? 急に趣味を作るって難しいですよね。興味があることがあって、モチベーションが高ければ可能かもしれませんが、仕事一筋でやって来た人にはハードルが高そうです。
友達を作るというのも難しそうです。友達を作ろうと思っても作れませんよね。何かを一緒にしていて、いつの間にか気が合う人と友達になっているものではないでしょうか? そういう意味ではまず、社会や地域の活動に参加して見るのは、きっかけになるかも知れませんね。
一番簡単なのは、1日数時間、週2~3日でも良いので、何か仕事を持つことの様です。1人でする仕事は選ばず、人と接する目的で、何らかの共同作業を行えば、孤独感を忘れることができそうです。妻も相手をしてくれず、丸1日誰とも口をきかない日を送るのは、本当に健康に悪いです。
退職後は、友人の数よりも、会話の数を増やすことを意識することが大事です。スナックやクラブで、話を聞いてもらうのも、悪くはないでしょうが、コストパフォーマンスは悪そうです。クレーマーになって、文句を会話欲求のはけ口に使うこともやめましょうね。
高齢で、先に妻を亡くすと、数年以内に死亡する人は多いです。死亡リスクは1.3倍に上がります。妻に家事いっさいを依存している男性は尚更です。数少ない会話も無くなり、食事も弁当や外食、家もゴミ屋敷になりやすく、お酒の量も増えやすいです。健康を害さない方がおかしいですよね!
一方高齢女性は、夫がいる方が、いない場合に比べて、死亡リスクが2.02倍高くなる様です。「亭主元気で留守が良い」は本当のことの様ですね。様々な理由から、夫を亡くした妻は元気になるようです。女性の場合は夫がいない方が長生きというのは、男性としては切ないなあと思います。
これからも、一生できる仕事を探しながら、色んな人とお話しできる人生を送りたいなあと思っている蒼野でした。4月から週4日の仕事に変わる予定なので、妻のストレスにならないよう、気をつけていこうと思います。
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