片頭痛 その3

2021/11/05

片頭痛に影響する食事で、今まで見落とされてきたことについて、書きたいと思います。

 今年の日本頭痛学会誌47巻に出ていた論文からの知見です。てんかんに対しては、1日の糖質摂取量を50g以下にするケトン食が有効で、発作を抑えることが知られていました。またてんかんと片頭痛は、どちらも脳内に電気的な興奮が起こり、発作が起こることから、その類似性が指摘されており、糖質制限で片頭痛が抑えられる可能性も検討されてきました。しかしケトン食の片頭痛に対する有効性はまだ証明されていません。

 肥満や、メタボリックシンドロームも片頭痛の発作頻度を増加させ、頭痛の重症化、慢性化に関与する報告がある一方、低血糖や空腹も発作を誘発されることが知られています。

 現代の食生活では、糖質、炭水化物の取り過ぎになっていることが多く、その結果、血糖の乱高下が生じ、血管内の炎症を引き起こします。炎症は片頭痛の大きな誘因です。またインスリン分泌による低血糖状態にもなることから、血糖スパイクを避ければ頭痛が減る可能性があることが分かってきました。

 そこで東海大学医学部で、糖質摂取70~130g/日(ロカボ)で、食事の最後に糖質を摂取(カーボラスト)、糖質の間食はしないという食事法を、片頭痛薬を飲みながら、月に8回以上の発作がある患者様に推奨しました。今までの西洋薬による治療でどうしても頭痛が減らなかった症例が含まれています。その食事が6か月続けられた29名の患者様の頭痛回数は、なんと59%で月1回以下となり、中には6か月に1回になった症例もあることが報告されています。

 頭痛が悪くなった症例は無く、体重は平均6.6 ± 4.6kg(1~19kg)減少しています。内臓脂肪が減ることで、抗炎症作用のあるアディポネクチンが増加したことによる可能性が示唆されていました。

 メタボ予防をしながら、片頭痛も減ることは、健康長寿に対して大きなメリットがある方法だと思います。蒼野もこれを読んでから、外来患者様にロカボ、カーボラスト、お菓子を控えることを説明し、実行してくれた患者様も、頭痛が激減したと言って喜んでくれる方が増えてきています。

 蒼野オリジナルとしては、主食の炭水化物も、出来れば血糖スパイクの出やすい小麦(麺やパン)は避けて、玄米や五穀米、もち麦ごはんなどを推奨します。野菜とおかずを沢山食べた後に、小さな茶碗半分くらい毎食食べると、ロカボギリギリの炭水化物量となります。

 もし間食をするなら、ナッツや、ゆで卵、魚の缶詰などがおすすめです。ナッツもオメガ3と6の脂質のバランスの良いマカダミアナッツが最強です。

 もし片頭痛に悩んでおられて、ダイエットも行いたいと思っておられる方がおられましたら、是非できる範囲からトライしてみられてはいかがでしょうか?

参考文献: 日本頭痛学会誌 Vol.47 No.3 2021 371-376