病気と腸内フローラ

2022/04/08

 以前便移植のお話を書きましたが、今日はそのベースになる、腸内細菌研究の最近の話題について書いてみたいと思います。医学や技術の進歩は目覚ましく、とても面白い話なので、是非読んでみて下さいね!

 ヒトの腸内細菌は、一千種類くらいいるそうです。自分の腸にどんな細菌が棲んでいるのか、皆様は気になりませんか? 蒼野はとても知りたいです。近年のゲノム解析の技術の進歩によって、これがわかる様になってきたのです。

 1990年から始まった「国際ヒトゲノム計画」で発達した技術によって、2003年、ヒトゲノム(人間の遺伝情報)の解読は、完了しました。次の解析目標に挙げられているのが、腸内細菌の解読です。かつては便の培養で調べていた腸内細菌ですが、半分以上は培養でも見つからないため、全貌は謎のままでした。便のなかに含まれている腸内細菌のDNAを、細菌の破片も含めて丸ごと分析することで、1千種類の大腸内の細菌が、正確に分かる様になったのです。

 2005年に初めて腸内細菌のゲノム解析結果が発表され、様々な病気の発生に深く関わっていることが分かってきました。2008年、米国と欧州は腸内細菌を調べる、国家的な大型プロジェクトを立ち上げました。ゲノム解析の技術も進み、その解読コストは、ヒトゲノム解読完了時の100万分の1以下、「ひとり1000ドル」を切るところまで低下しています。

 日本での研究者の取り組みは、世界の中でも一番早かったのですが、残念ながら政策立案者の理解を得られず、国家的プロジェクトは立ち上がりませんでした。米国や欧州、中国などでは、現在、個々人の腸内細菌のゲノムを100万人規模で調べて、データベース化し、細菌の種類や数、その構成比などのデータを、食生活や健康状態、生活習慣、病歴などと合わせて蓄積し、健康や病気との関連性を分析しようとしています。

 腸内細菌が、個体の健康に大きく関わることは、動物実験からも判明しています。やせ形と肥満型、体形が異なる一卵性双生児の人間の双子姉妹から腸内細菌をそれぞれ採取して、無菌マウス群の腸内に移植し、同一の環境、餌、運動量で生育し、観察研究を行いました。

 すると痩せ菌移植マウス群は、体脂肪は増えませんでしたが、デブ菌移植マウス群は体脂肪が2割増加しました。他の条件は全く同じであるため、腸内細菌によって起こる現象と考えられました。二つのグループを同じケージに移して、お互いの糞が食べられる様にすると、痩せ菌移植マウス群はそのままでしたが、デブ菌移植マウス群は痩せて、痩せ菌移植マウス群の体脂肪率に変化したのです。

 肥満型の腸内細菌は、多様性が乏しく、菌の種類が少なかったため、痩せ型の多様な菌種が腸内に入り込むことで、体脂肪が減少したと考えられました。腸内細菌がマウスの肥満治療に有効で、腸内細菌は「薬」として使えることが示唆されたのです。しかも副作用は無いと考えられます。

 海外の大規模プロジェクトは、100万人の腸内細菌叢の巨大データベースの構築を目指しています。日本は周回遅れの状態にあるのですが、挽回するため、多彩な調査項目を盛り込み、100人の腸内細菌叢のデータを100項目のデータと結びつける事で、他国にはない深堀できるデータベースを作る方向で進んでいます。

 今分かっているデータを比べると、国別に細菌叢の類似点や相違点が明らかになってきています。日本人の腸内フローラは、オーストリアやフランス、スウェーデンのグループに近いそうです。地理的にも近い中国は、意外にも米国に近く、同じアジア人で食生活も、欧米に比べると日本に近いはずなのに、腸内フローラは違うグループなのです。

 データから12カ国の食事の栄養素の構成で、グループ分けしてみると、(1)たんぱく質の多い欧米諸国(ロシアを除く)と(2)たんぱく質が少ない食事をとる、それ以外の国々(日本・中国・南米・アフリカ)の2グループに分けられましたが、腸内細菌グループとは一致しませんでした。食事よりも影響の大きな要素は、まだ何かわかっていません。

 可能性として挙げられているのが、抗生物質の使用などの、薬剤の影響です。抗生物質は、薬として飲むだけでなく、食事や環境のなかなど、様々な形で存在していることと、直接腸内細菌を殺してしまうため、影響が大きいものと推測されています。

 日本人の腸内フローラはビフィズス菌が多く、他の国で多く見られる古細菌が少ない傾向にあります。炭水化物を代謝、利用する機能に優れた細菌が多く、日本人の90%に海苔やワカメなどの海藻を分解する細菌が棲んでいます。長寿国であることや、海外に比べると、高度肥満が少ないことも併せて、腸内細菌との関連が注目されています。

 ヒトのゲノム(遺伝子)は2万2千個ありますが、腸内細菌由来のゲノムは一千万個です。ヒトゲノムの解読完了後に判明したのは、遺伝病以外の病気では、遺伝子の影響はそれほど強くないことです。食生活や生活習慣、腸内細菌の関連が判明して来れば、それぞれの病気の原因や治療法に大きな革新が訪れる可能性を秘めています。

 現在腸内フローラが関与している、と言われる疾患は多数分かってきています。肥満、糖尿病、脂肪肝、肝がん、動脈硬化症などの代謝系疾患。多発性硬化症や自閉症、うつ、不安障害やアルツハイマー病などの神経疾患。炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、大腸癌などの腸疾患。アレルギーや自己免疫疾患などの免疫に関わる病気などです。

 全体の傾向として、病気になる人の腸内細菌は、細菌の種類が減少し、多様性が失われています。例えばうつ病の患者ではビフィズス菌の割合が減少。炎症性腸疾患の患者はファーミキューテス門の細菌の割合が少なく、バクテロイデス門が多い事など、病気の種類ごとに、どんな変化が腸内細菌に起きているかもわかってきました。 

 奄美群島などのような長寿地域と言われる場所の住民の腸内フローラには、日本人には稀なメタノブレビバクター属の細菌が多くみつかり、高齢者になると減少するビフィズス菌の比率が、日本の他地域の高齢者より高く保たれていることが分かっています。逆に言えば肥満を抑制し、炎症を抑える特徴がある菌が多い人は、健康長寿の切符を手にしている可能性があるのです。

 腸内フローラは人によって差が大きく、ビフィズス菌の比率が高いとされる同じ日本人でも、30%以上の人もいるし、1%以下の人もいる様です。低い人がビフィズス菌のタブレットを3ヶ月飲み続けても、比率の上昇はわずかだそうです。

 しかしお腹の調子や、体調などはかなり変化することから、腸内細菌は少し変わるだけでも、体感は大きく変化する可能性があります。サプリメントや食事などで変えてゆくのであれば、気長に数年かけて、少しずつ変えてゆくのが現実的なところの様です。

 やはり腸活を続けることが重要ですね! 蒼野は便移植なども含め、この分野は健康増進や、予防医学の点でも、今後大きな成果が得られる分野だと思っています。皆様も腸内細菌を大事に育てる、食生活、生活習慣を心がけていきましょう!!

 去年から、食物繊維を意識しながら、毎日乳酸菌5種&ビフィズス菌3種のプロバイオティクスを飲んでいる蒼野でした。お腹の調子、良いですよー!

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。

iHarb : プロバイオティクス、1,000億CFU、ベジカプセル30粒

https://jp.iherb.com/pr/california-gold-nutrition-lactobif-probiotics-100-billion-cfu-30-veggie-capsules/69435?rcode=DBO7172