脂肪肝って大丈夫?

2022/05/07

 皆様は「脂肪肝がありますね」と言われたことはありませんでしょうか? 採血や健診で指摘される異常値の中では、肝機能障害が1番多いのです。蒼野も患者様の採血結果を見ていると、γGTPが上昇している人がとても多いのを感じます。今日は、あまりお酒も飲まないのに、脂肪肝があると言われた時に、どう考えたら良いのかを、お伝えしたいと思います。

 採血してみると、日本人の3人に1人、32.9%は肝機能の異常値が出るようです。最も多い原因は脂肪肝です。脂肪肝とは肝細胞の3割以上に中性脂肪が溜まっている状態のことです。アルコールによるものも多いのですが、最近では非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が激増していて、問題となっています。

 肝機能障害の原因は様々です。大酒家(1日100g以上のアルコール)の80%は脂肪肝を持っていると言われていますし、飲み過ぎると肝臓が悪くなるのは、皆様よくご存知だと思います。薬剤でも起こりますし、B型肝炎ウイルスや、C型肝炎ウイルスでも起こります。原因に関わらず、進行して肝硬変、肝癌に進めば、命を取られることになります。

 最近問題になっているのは、糖質、炭水化物の過剰摂取に関連した肝機能障害、つまり非アルコール性脂肪肝(NAFLD:ナッフルド)です。日本で2001年に有病率18%だったNAFLDは、2012年には18歳以上の男性32%~41%, 女性9%~18%と増加して、現在2300万人もいると言われています。

 BMI25以上の方で30%以上、BMI30以上で80%以上の方にNAFLDが見られます。現在、成人男性の肥満率は30%、女性は20%前後です。日本人は欧米人に比べて、遺伝子の違いで、肥満していなくてもNAFLDになる確率が高いため、誰もが注意しておく必要もあります。日本人のNAFLD患者の3人に1人は非肥満者です。

 NAFLDの15~20%に存在する、炎症を伴い、肝硬変、肝癌に進行すると言われる、非アルコール性脂肪肝(NASH:ナッシュ)がある人は、健康長寿が難しくなってしまいます。これは日本で現在370万人ですが、2030年には420万人に増加すると言われています。

 NAFLDの約70%を男性が占めますが、NASHの頻度に男女差はないと言われているため、お酒を飲まない女性でも、炭水化物・糖質の過剰摂取がある方は、十分な注意が必要なのです。一般的にNAFLD/NASHは無症状のことが多いです (48~100%) 。

 健診で脂肪肝があると言われても、あまりに一般的で、周囲にも同じような方が沢山おられると思います。そこで大丈夫と思ってNASHを放置してしまうと、5~10人に1人は肝硬変となります。肝硬変の人は10年で70~80%が肝臓癌になってしまうのです。怖い確率だと思いませんか?

 NASHの場合の、採血結果は、γGTP高値だけでは無く、AST、ALTの異常値が出て来やすいです。中でもALTが高くなります。これは肝細胞が壊れているかどうかを調べる最も基本的な検査です。正常では両方とも30 IU/L未満です。NAFLDではAST、ALTの軽度上昇例 (2~4倍程度) が多く、NASHではさらに高くなります。

 もし健診結果、採血結果で、γGTP、AST、ALTの全てに異常値が見られたら、ぜひネット上に脂肪肝リスクAI予測ツールというのがあるのでやってみましょう。赤信号が出たら、肝臓内科の受診をお勧めします。NASHの場合は、食事療法に加えて、肝臓を守る内服薬と、経過観察が必要となるためです。

 NASHの診断はかつては肝生検で行われていました。最近では肝線維化の進展度合いの評価が重視されています。予後に直接影響するため、肝繊維化が最も重要な所見だからです。8人に1人は高度繊維化~肝硬変に進行します。肝臓癌がすぐ側に迫ってくるのです。あと血小板数15万以下は肝硬変の可能性があることも覚えておいてくださいね。

 NASHの発症メカニズムはまだ確定はしていませんが、現在信じられているものとしては、『2つのヒット理論(two-hit theory)』というものがあります。まず第1のヒット:肝臓に脂肪が蓄積する。第2のヒット:脂質の過酸化、サイトカインの放出、鉄などの酸化ストレスが加わってNASHを起こす、というものです。

 肝臓に脂肪が蓄積する大きな要因が、インスリン抵抗性です。糖質、炭水化物を食べ過ぎていると、血糖を下げるために、インスリンが多く分泌されるようになります。いつも高濃度のインスリンに晒されている細胞は、受容体の数が減って、インスリンに反応しにくくなるのです。

 脂肪細胞だけはインスリンの感度が変わらないため、インスリンによって血糖は中性脂肪に変えられて、どんどん溜まってゆくことになります。肝臓にも異所性脂肪が溜まり脂肪肝となります。肥満が進行すると、高血圧、糖尿病、高脂血症なども併発し、メタボリックシンドロームの状態となるのが第一段階です。

 血糖値が上昇すると、活性酸素が多く発生し、酸化ストレスも上昇します。もちろん糖化も起こります。体内の至る所で、慢性炎症が発生し、脂質や鉄が酸化されて変性し、サイトカインが放出され肝臓にも炎症が起こります。これが第二段階です。肝臓だけに留まらず、全ての生活習慣病に繋がってゆきます。

 日本人の糖尿病患者の 8 人に 1 人が肝疾患 (肝癌、肝硬変)で死亡しているという事実もあります。是非是非、脂肪肝は健康崩壊の始まりかもしれないことを意識して頂きたいな、と思っています。初期段階であれば、予防可能です。栄養指導などによる減量可能例では,ほぼ全例で肝機能障害が改善し,約60%の症例で脂肪肝が改善したと報告されています。

 肝臓は沈黙の臓器と言われています。病気を発症してからでは、手遅れになっていて、肝移植などを行わないと助からないケースも多いのです。肝機能低下の要因は、一般的にウイルス、アルコール、糖質、炭水化物過多、薬剤のいずれかです。

 肝炎ウイルスのチェックは、自治体などで無料で行っているところが多いので、20歳以上で受けたことがない方は、一度チェックしましょう。あとは生活習慣です。正しい知識で、出来る事から、少しずつでも改善するのが本当に大事です。

 コーヒーの摂取が脂肪肝の発症を抑制するとした疫学研究が、複数みられているようなので、コーヒー好きの蒼野は、ますますハマりそうです。皆様も是非!!

肝臓検査.com    脂肪肝リスクAI予測ツール

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