アルコールを飲むと老けるという話を聞いた事があるでしょうか? 今日はそんな話題について深掘りしてみます。老化の原因は糖化、酸化、慢性炎症です。アルコールが関係しているのは、糖化の様です。糖質ゼロのお酒を飲んでいても、なぜ糖化が進むのでしょうか?
糖尿病でない人の糖化に、大きく影響するのが食後高血糖、つまり血糖スパイクです。血糖スパイクは、メタボリックシンドロームの始まりに深く関与しています。インスリン抵抗性が増してきて、食後2時間後の血糖値が140mgを超える様になると糖尿病予備軍! 黄色信号が点ります。
食後高血糖があるだけで、動脈硬化の進行は加速し、心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが高くなることが分かっています。食後の眠気、倦怠感などの自覚がある人は、すでに危ない状態ということが出来ます。
2013年の中国における10万人規模の研究結果では、成人の2人に1人に血糖の異常が見つかっています1)。40歳を超えるとインスリン分泌も低下してくる人が多くなるため、糖化予防のための、血糖スパイク対策は必須と思われます。
一時的にせよ、体内で高血糖の状態ができると、タンパク質に糖がくっついて糖化、変性し、組織は元々の働きができなくなるのです。これが老化の一因であり、変性したタンパクはAGEs(終末糖化産物)と呼ばれる、毒性の物質になります。AGEsを作らないことが、身体を老化させないことにつながるのです。
しかし2007年の研究で、アルコールは血糖値の上昇を抑えるという研究結果が報告されました。オーストラリアの研究グループが、ビールと白ワイン、ジン、そして水を飲んだときの血糖値の影響を調べました。同じ量のパンと一緒に、水、ビール、白ワイン、ジンを飲んで比べると、水とパンが一番血糖が上昇し、白ワインとパンの血糖値の上昇は、水とパンに比べて4/7程度だったのです2)。
ビールには糖質が結構入っています。また水よりもカロリーがあるお酒を一緒に飲んだ方が血糖値が上昇しないというのには、蒼野も驚きました。しかし良いことばかりではないのです。アルコールが分解される時にNADという補酵素が使われ、NADが減ると、肝臓による糖新生が抑えられると言われています。このために血糖の上昇が少なくなる様です。
しかしNADには、長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化する作用があるため、NADが減ると加齢は進行しやすくなるのです。せっかく血糖スパイクが低くなって、糖化のリスクが減ったとしても藪蛇ですよね! 糖質の少ないお酒を選んだとしても、飲めば飲むほどNADは減ってゆくとされています。
糖化にはもう一つの側面があります。実はタンパク質に糖が直接くっつく訳ではなく、タンパク質に、糖が代謝されてできるアルデヒドがくっつくことで、AGEsが生成されるのです。アルコールが代謝されるときにできる物質がまさにこのアルデヒドです。
アルコール量が多くなればなるほど、AGEsが生成され、皮膚の弾力が失われ、内臓機能が低下し、骨粗鬆症や関節症が進行し、動脈硬化が進み、認知症のリスクも増してきます。やはりアルコールは、老化と病気の元凶だったのです。
同志社大学の研究では、飲む頻度が高い人ほどAGEsが体内に多く蓄積していることが報告されています。特にお酒が弱く顔が赤くなる人は、アルコール分解が遅いため、長い時間アセトアルデヒドに晒されます。お酒が弱い人は、飲まないに越したことはありません。
一方お酒に強い人ですが、小量の飲酒であればAGEsは出来にくいと考えられます。しかし強い人は日常的に多量飲酒する人も多く、アセトアルデヒトを分解する能力が高くても、長時間アセトアルデヒドに晒される人が多くなります。やはり酒豪と言われる方は危ないと思います。
若い頃の石原裕次郎さんは、めちゃくちゃ格好いいと思いますが、『太陽にほえろ』の撮影時、は、ワンカット終わるたび、缶ビールを開けて一気飲みしていたとの伝説があります。今思えば、皮膚のコラーゲンが、糖化によってハリを失い、シワが増え、顎がたるみ、お酒飲みの顔貌に変化されたのだと思います。
糖化、老化を進めないためにすべきことは、やはり一つだけで、適量を守る以外ない様です。アルコール量にして20g以下、日本酒なら1日1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2~3杯程度です(女性は半分です)。以前書きましたが、健康にとっての理想は、一滴も飲まないことになります。( https://blue-zone-life.com/飲酒量はゼロがいい??/ )
二日酔いになるような飲み方をすると、体内年齢はグッと進んでしまいます。喫煙者、睡眠不足の人も体内のAGEsの量が高いことが確認されていますので、夜遅くまで飲むとダブルパンチです。飲む時には、なるべく低GIで低糖質の肴にしましょう。
老化を進めないためには、食事と一緒に、お酒を適量楽しみ、2次会はアルコール抜きで早めに切り上げる。3次会には行かないのが最善です。締めのラーメンやお好み焼きは、糖化の最終兵器になることを意識しておきましょう。
蒼野も若い頃から沢山飲んでいました。一人暮らしの時は、部屋の中にバーコーナーもあり、各種のお酒も常備していました。毎日飲むのが当たり前で、それが大人だと思っていました。酒は百薬の長だと信じており、飲みすぎなければ長生きすると思っていたのです。
今考えると資本主義の洗脳だった様にも思いますし、飲みすぎて体調がすぐれなかった経験も、嫌というほどありました。それでも事故に遭うまでは辞められなかったのは、アルコール自体の持つ依存性によるものなのだと思います。しかし断酒できれば、1ヶ月くらいで飲みたくなくなります(私見です!)。
世の中では少数派なのかも知れませんが、今はあまり飲みたいとは思いません。ブログを書くのに、アルコールについて調べれば、調べるほど、健康に対する悪影響を知り、もう元には戻れない感じです。かと言って、たまのお祝いや友人と一緒であれば、量を気にしながら、少しだけ飲もうとは思っています。
喉がカラカラになった後の、ビールの甘さはやはり忘れられません。最初の1杯が最高なので、機会があれば、1杯だけ楽しんでゆきたいと思います。いつまでも若さを保って、ずっと元気でいたい人は、依存症を脱却し、アルコールとほどほどに付き合うことをお勧めします。
毎日飲んでいた時には、日課であり、義務みたいだったなあ、と思い出す蒼野でした。
参考文献:
1)Prevalence and control of diabetes in Chinese adults : JAMA. 2013;310(9) : 948-959
2)Effect of alcoholic beverages on postprandial glycemia and insulinemia in lean, young, healthy adults : Am J Clin Nutr. 2007;85(6):1545-51
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