今日は『皆様が何を食べたくなるのか』に影響するものについて考えてみたいと思います。食べ物が健康に大きく影響することは、周知の事実です。蒼野も何を食べれば良いと言う情報も、沢山書いてきたのですが、それを食べたいと思わなければ、選ぶ事ができませんよね!
幾つか面白い論文を見つけたので紹介しますね。最初は映画のお話です。米国で公開された人気映画に登場する食事シーンを分析した結果、映画の中で登場人物が飲食するものの大半は、健康のガイドラインの推奨からかけ離れた食物だったという研究です1)。
1994~2018年に米国で公開された映画の中で、興行成績の上位250位までの作品を対象に、食事シーンを抜き出し、飲食物の量や質を、米国や英国のガイドラインおよび米国民健康栄養調査の結果と比較し評価しています。
食べるシーンのある映画が245本、そのうち178本(72.7%)で撮影されている食物は、非健康的とされるものでした。また飲むシーンのある246本の映画のうち、222本(90.2%)は非健康的な飲み物が映し出されていることもわかりました。
食材・栄養素の分析結果では、砂糖の量が過剰(93.5%)であり、飽和脂肪(84.9%)や総脂肪(93.1%)を超過摂取しているシーンが大半を占めました。飲み物ではアルコールを飲むシーンが、全年齢層が視聴可能な作品で18.1%、子ども向きでない映画で27.0%、13歳未満に規制のある映画で41.8%、17歳未満で規制のある映画で49.1%認められました。
アルコール摂取量は、米国人が実際に摂取している量の3倍以上(313%)に相当。さらに糖についても、米国人の実際の摂取量より16%多い摂取が表現されていたのです。食物繊維が不足し、飽和脂肪や塩分、糖やアルコールは過剰に表現されていました。
これってやはり人間の本能、脳がドーパミンを放出する食べ物、飲み物が心を動かすことから、映画の表現として増えてしまうのでしょうね。主人公が悲しみのどん底にいるときには、野菜サラダを食べるよりも、ウイスキーを煽っている方が、共感しやすいと、蒼野も思います。また量についてもオーバーな表現の方が分かりやすいのだろうと理解できました。
次の論文です。米シカゴ大学の研究で、社会的に大きなインパクトを与える有名人が、ソーシャルメディア上で企業広告とは無関係に、非健康的な食品に関する情報を拡散している事が報告されました。飲食の場面は投稿の定番であり、日常生活の自然な描写であるものがほとんどでした2)。
181人の有名人のInstagramへの投稿内容を精査しています。年齢は17~73歳(中央値32歳)、36.5%が俳優や女優、テレビ出演者、35.4%が音楽アーティスト、28.2%がアスリートです。2019年5月~2020年3月に、3,065件の食品関連情報を含む投稿があり、計5,180品目の飲食物が紹介されていました。
50.7%にはアルコール飲料、37.3%には菓子類が含まれていました。投稿されていた飲食物の栄養価をスコア化して評価すると、投稿されている食品の87.3%は、非健康的と判定されました。そして、非健康的と評価される食品の投稿の方が、「いいね」を押されやすいという有意な関連も明らかになりました。
これらの投稿のうち、飲食品メーカーが後援していたものは4.8%に過ぎません。スポンサーがあるものについては、アルコールの情報が他の2倍以上入っていることも判明しました。やはり視覚的に魅力的な食品は、糖や脂肪を多く含むことが多いのでしょうね! やはり本能に訴える食品は、共感が得られるのです。
次の論文です。米ニューヨーク大学の研究では、YouTubeで情報発信している子どもインフルエンサーの動画を調べたところ、10件中9件の割合で不健康な食品を紹介していることがわかりました。視聴者の多い子どもインフルエンサー上位5人の視聴回数は480億回以上、判断力の未熟な子どもへの影響は計り知れません3)。
YouTube広告によって生まれる子どものおねだりで、年間約190億ドルもの消費が生まれていると推定され、企業は子どもをターゲットに活動し、不健康な食生活を送る子どもが増えてきている可能性が指摘されています。また子どもの頃食べ慣れたものは一生食べ続けやすいのです。
動画の中で、果物や野菜といった健康的な食品を紹介している動画の割合はわずか3.1%、不健康な食品や飲料を実際に摂っている動画が、半数に認められました。これは、30分の番組の中で10分程度のコマーシャルを観ることになるテレビと比べても、自動再生で同じ製品の紹介を繰り返し目にすることになるYouTube動画は、影響が深刻です。
最後の論文です。米カリフォルニア大学の研究で、スマホやテレビなどのスクリーンタイムが長い子どもは、過食症になりやすいことを示すデータが報告されています4)。9~10歳の小児1万1,025人のスクリーンタイムと、親から聴取した子どもの摂食行動に関する情報を集めました。
その結果、1日当たりの合計スクリーンタイムが1時間多いごとに、過食症のリスクが11%高くなることが分かりました。これには画面を見ながらのながら食べと、食品の広告の影響が指摘されています。明確な因果関係を示したものではないとされていますが、コロナパンデミックでのひきこもりで、スクリーンタイムは増える傾向にあり、これも心配な情報です。
以上4つの論文を読んで、蒼野が思うのは、ヒトは動物なので、本能には敵わないと言うことです。何でもチョイスできる飽食の時代に生きている我々は、何も考えずに暮らしていると、目にした情報によって、食べたいものが決まり、食べてしまいやすいと言うことなのだと思います。
共感が得られるのは、食べたり飲んだりすると、ドーパミンが出て気持ちが良くなる、糖、脂肪、アルコールですよね! 確かにInstagramで、家庭で作る具沢山味噌汁や、もやし炒めなどはバズらない気がします。映画のシーンでも使いにくいと思います。
蒼野の様に、ある程度歳をとっていれば、小さな頃から食べてきた粗食の美味しさも知っていますし、調子が良くなることも経験したりしています。確かにプハーとビールを一気飲みしたり、綺麗で美味しそうなパフェが出てきたり、がっつりラーメンを食べている姿を目にすると欲しくなるのは事実ですが、やり過ごす事がほとんどです。(たまには誘惑に負けます!)
しかし時代はどんどん変化しているため、得られる情報がスクリーンがほとんどである世代にとって、これは健康上の死活問題かもしれません。疑うことを知らない子ども達が本当に心配です。若くてもあまりに偏った食生活を送っていれば、とんでも無い病気に襲われます。健康を無くしてからでは遅いことは、様々な患者様を診てきて、骨身に染みています。
本当に日頃の食生活は大切です。親御さんであれば、日頃からの食育が、子どもの将来の健康を担保してくれます。世の中の情報は洗脳に溢れているなあと、つくづく思います。地道ですが、健康を守れる情報を、少しずつでも発信したいなあと思う蒼野でした。
参考文献:
1)Nutritional Analysis of Foods and Beverages Depicted in Top-Grossing US Movies, 1994-2018: JAMA Intern Med. 2021;181(1):61-70.
2)Nutritional Analysis of Foods and Beverages Posted in Social Media Accounts of Highly Followed Celebrities: JAMA Netw Open. 2022;5(1):e2143087.
3)Child Social Media Influencers and Unhealthy Food Product Placement : Pediatrics (2020) 146 (5): e20194057.
4)Contemporary screen time modalities among children 9–10 years old and binge-eating disorder at one-year follow-up: A prospective cohort study: International Journal of Eating Disorders 01 March 2021 https://doi.org/10.1002/eat.23489
もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。