蒼野は昨日、子犬に噛まれました。噛まれたといっても甘噛みなので、傷ができた訳ではありません。愛犬が亡くなってようやく1周忌が経過し、家族全員、犬恋しさが募る毎日です。昨日家族全員でペットショップに出かけ、色々なわんこを抱っこさせてもらい、噛まれたという訳です。
娘達は腕に傷が出来ていて、少し気になり、動物咬傷について調べてみたので、報告したいと思います。一般的には、イヌ咬傷が最も頻度が高く、次いでネコやヒトが多いとされています。他にも色々な動物に噛まれる場合がありますが、治療したものでの報告ですので、真の発生率は不明です。
イヌ咬傷の患者の半数は子供です。5~10歳をピークに発生率は減少します。ほとんどが飼い犬による事故で、大型犬に頭を咬まれて亡くなった赤ちゃんのニュースは、悲劇として蒼野の記憶にも残っています。受傷は上肢が過半数ですが、子供の場合は、顔や頭、首を咬まれたりすることも多くなります。
噛まれた場合には、炎症や感染が問題になります。イヌ咬傷全体の感染率は3~20%で、比較的リスクが低いとされています。しかし、手の咬傷に限ると、28~48%と高くなり、頭や顔など血流が豊富な組織では感染リスクは低いとのことです。沢山血が出ると、感染しにくいというのは知りませんでした。
犬の歯はそれ程鋭く無いため、刺創や裂創よりも挫傷や剥離の方が多いと言われます。感染は表面的な傷よりも、刺創の方がリスクが高くなります。感染した場合は3割が軟部組織感染を引き起こし、58%が化膿し、12%では膿瘍が出来てしまいます。
感染後の初期症状は発熱です。嘔吐、下痢、腹痛、頭痛などを伴うこともあります。約3分の1の症例に紫斑病変が認められ、噛まれた部分に皮下出血を認めます。このうち15%が組織の壊死を起こすことがあり、血液内に感染が広がると、敗血症、心内膜炎や髄膜炎まで至る症例があり、命に関わることもあり得ます。
次はネコ咬傷です。イヌとの違いは若年女性に多く見られることです。上肢、特に手や指に多く、歯が細く鋭いことから刺創が多くなります。傷が小さいことから皮膚表面はすぐに治りますが、深部に細菌が残る可能性があり、感染リスクは犬よりも高くなります。
感染率は60~80%程度と高く、猫の方がヤバいです。噛まれる部位が手先であり血流が少ないことと、傷が深いこと、年齢が高い人が多くなることなどが感染が多くなる原因として挙げられます。嫌気性菌によるものが多く、22%が腱鞘炎、15%が骨髄炎や感染性関節炎になるため、重篤にもなり得る咬傷です。
特徴的な初期症状は、急速進行性の蜂窩織炎で、リンパ節が腫れやすいです。腱鞘炎や感染性関節炎になれば、機能障害の原因になり、骨髄炎や菌血症の合併で、死亡率が高まります。蒼野一家は犬派なので、少し安心です。ネコ派の人は腫れたりする時には、早めに受診しましょう。
ヒト咬傷はけんかによるものが多いです。蒼野は先日見たゾンビ映画を思い出してしまいます。咬傷はけんかによるものが多いのですが、顔面パンチが相手の歯に当たって、拳の背側が損傷するのが、特徴的な所見です。感染リスクが高く、蒼野も救急対応で仕事をしているときに、先輩から「ヒトの歯が一番汚いからね」と教えられたことがあります。
通常のヒト咬傷は、深い傷にはなりにくく、感染リスクは低いのですが、握り拳損傷は大きな力が加わるため、深部に損傷が及んでいることが多く、骨・腱損傷や関節包の損傷もまれではありません。骨髄炎(16%)、敗血症性関節炎(12%)、腱鞘炎(22%)などを合併しやすい咬傷となります。
感染の原因菌は、イヌ、ネコ、ヒトの、どの咬傷も多菌種による混合感染です。噛む側の口腔内常在菌、一般環境にいる微生物、患者の表皮常在菌の混合となります。受傷時間をしっかり確認して、できるだけ早く、十分に洗浄することが一番効果的です。予防的抗菌薬投与は、感染リスクを低下させないというデータが出ています。
それでも抗菌剤を予防投与した方が良い場合は次の通りです。1、手足の末梢や性器、関節を噛まれた場合。2、ネコやヒトに深く噛まれた場合 3、脾臓の摘出や免疫が低下している患者 4、洗浄せずに12時間以上経過した傷 などは感染リスクが高いため、抗菌剤で対処しておく方が安心です。
もし咬傷を負った場合には、腱や関節、深部筋膜や血管が損傷していないかを確認しましょう。損傷があると、早期の救急受診が望まれます。イヌ、ネコ、ヒトの多種類の菌に対応する内服抗生剤としては、合剤である、オーグメンチン®️(アモキシシリン・クラブラン酸)が勧められています。
切れていてもすぐに縫わない方がベターです。傷を閉じてしまうと嫌気性菌による感染が抑えにくくなります。よく洗浄し、6~8時間を待って感染兆候が出ていなければ縫合が可能となります。皮下に死腔が出来ないように、縫合処置をしてもらいましょう。感染の可能性に留意して対処することが一番大切です。
毒蛇は論外ですが、ハチ、クラゲ、オニヒトデ、蛇、ラットなどに噛まれたときには、アナフィラキシーショックが起こることがあることも、知っておく必要があります。ペットとして注意が必要なのはハムスターです。「ハムスターショック」という言葉もあります。
ハムスターを飼育していると、ケージから出して手のひらで遊ばせたくなったりしますよね! 何度か牙が刺さったりすると、ハムスターに対する抗体ができることがあります。赤く腫れたり、噛まれた後くしゃみが出たりすると、身体はショックの前段階となっています。
運が悪いと、くしゃみの後、血圧が下がり、倒れ、意識が遠のき、救急車を呼ぶ事になります。場合によっては、可愛らしい”とっとこハム太郎”に命を取られる可能性もあるのです。血圧を維持して、ステロイド剤の静脈点滴をすぐに行う必要があります。
ペットを飼っている皆様も、沢山居られると思います。ちゃんと躾けて噛まれないことは重要ですが、もし噛まれた時の知識も、頭の片隅に残しておいて頂けると、役に立つことがあるかもしれません。大好きな家族に噛まれないよう、躾と注意は怠らないようにしたいものです。
まだ噛み癖のある子犬ですが、比較的大人しくて、家族になれそうな子に巡り合いました。週末迎えに行くのが、とてもとても楽しみな蒼野です。しっかり躾けて、可愛がりたいと思っています。
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