今日は昨日書ききれなかった、便秘のコントロール法や生活習慣について詳しく書いて見たいと思います。また、便秘の自覚症状で、生活の質が落ちると言うことも知っておいてください。便秘は万病の元になる状態なので、一刻も早く改善しておきたいものです。
便秘の人はそうでない人と比べた時に、重症になる程欠勤が増え、作業のパフォーマンスも低下します。兵庫医大の研究では、日本人3万人を対象に調査し、963人が慢性便秘症でした。体調の悪さからの遅刻や早退、欠勤の影響で考えると、便秘でない人は年間の損失が69万円だったのに対し、慢性便秘の人は122万円の損失が認められました1)。
また作業パフォーマンスを比べると、一桁数字の足し算を3分間行う実験では、便秘グループの平均が110問正答だったのに対し、快便グループでは140問正答と、能率が3割増となっていました。便秘があると集中力が低下する可能性があります。心理的にも便秘の人の方がネガティブな人が多いことが分かりました。
そこで両者の脳を、光トポグラフィーという分析装置で測定し、どれくらい活動しているのかを比べて見ました。脳の活動が多い部分では酸素消費が激しいため、脳に集まるヘモグロビンを測れば、脳の活動状態が把握できます。
計算課題中の前頭葉の働きを比べると、便秘グループでは快便グループと比べて、前頭葉が目一杯活動していることが分かりました。便秘状態だと、一生懸命脳を働かせていても、結果が低く脳が空回りしているような状態だったのです。
腹部膨満感や残便感などの不快な自覚症状は、便秘の無い人からは想像できない程、QOLに影響していることが分かりますね。便秘は体質の問題ではなく、精神面での影響や、所得差にもつながる病気だと認識することが第一歩となります。
便秘対策として、まずすべきことは生活習慣の改善です。①水分摂取、②食物繊維の摂取、③運動、④睡眠、⑤ストレス(自律神経)コントロールの5つが重要な要素となります。
まずは水分摂取です。1日に1.5リットル以上を目安に、たっぷり補給しましょう。 また、朝起きてすぐにコップ1杯の水分を飲むと、「胃・結腸反射」がおこり、腸が動き出します。カフェインなどの利尿作用があるものよりは、乳酸菌入り飲料や、食物繊維の入ったお茶、ココア、野菜スムージーなどで飲むと、プラスαの効果が期待できます。
1960年位まで、平均的な便量は400gほどありました。それが200gぐらいまで減ってしまっています。1日に20g以上摂っていた食物繊維が、現代では12~14gです。麦や雑穀入りだった主食が、精米や白いパンに変わったことで、食物繊維が減ってしまい、便量の減少につながっています。
食物繊維の中で便のかさを増し、腸の蠕動運動を促してくれるのが、不溶性食物繊維です。一方便を柔らかくして、滑りを良くしてくれる上に、善玉菌の餌になるのが水溶性食物繊維です。これらが腸の環境を改善し、腸内フローラを正常に育ててくれるのです。
昨日も書いたように、水溶性食物繊維が不足し、タンパク質や動物性の脂肪が増えると腸内細菌の組成が変化し、善玉菌が減って、バランスが悪くなります。糖質制限は、タップリの食物繊維とセットにしないと、健康に良いとは言えないのです。
食物繊維含量の多い食べ物としては、こんにゃく、キクラゲ、寒天、わらび、ひじき、おから、椎茸、舞茸、昆布、抹茶、海苔、わかめなどが挙げられます。野菜では、グリーンピース、大葉、パセリ、モロヘイヤ、牛蒡など、果物ではアボガド、レモン、ラズベリー、金柑、ブルーベリー。穀物ではライ麦、押し麦、小麦粉、オートミール、ポップコーンなどになります。
意外なところでは、「キウイフルーツの食物繊維は保水力が高い」という科学論文が発表されています2)。キウイの食物繊維は他と比較してより膨張し保水力が高いため、1日に2個食べれば、より大きくて柔らかい便をつくり出し、スムーズな排便へと導いてくれるそうです。不足する食物繊維もちょうど20gに到達します。
模範とするべき食事は、日本に残る長寿地域のお年寄りが食べるご飯です。雑穀や麦入りのごはんとワカメ入りのおみそ汁、主菜のほかに、ヒジキの煮物などの小鉢やのりや納豆がついています。様々な海藻類、雑穀、イモ類、キノコなどを食卓に上げることで、多様な腸内フローラが育ち、長寿を支えていることがうかがわれます。
最後は運動です。筋力低下は便を押し出せなくなるため、便秘の原因となります。キーになる筋肉は腹筋と腸の周囲にあるインナーマッスルである腸腰筋です。イスに背筋を伸ばして座り、片脚ずつ上げて下ろせば、どちらも鍛えることが出来ます。是非ちょっとした隙間時間に行う癖をつけましょう。
歩行などの有酸素運動も有用です。毎日最低15分できれば30分行うことで、便秘の予防や改善につながります。自律神経を整えてくれるため、ストレスコントロールにも作用するのです。蒼野は朝起床時に、膝を立てて、左右に倒す体幹ひねりを習慣にしています。自律神経を切り替えるスイッチにもなり、お腹も動かすことができるので、朝のお通じが良くなるように思います。
睡眠とストレスコントロールについては、質の良い睡眠を、理想は7時間取り、1日のリズムを守り、自律神経を乱さないことが重要です。ストレスは全て避けることはできないため、気持ちの切り替えや、身体を動かすことなどでヒラリとかわしてゆくことが大切です。交感神経を短時間で副交感神経に切り替えてゆければ、腸の動きは改善します。
長寿の人の腸内に多い菌は、乳酸菌とビフィズス菌、そして酪酸菌です。乳酸菌とビフィズス菌は混同されがちですが別物です。酸素に強い乳酸菌は小腸、酸素が嫌いなビフィズス菌は大腸の最後部に生息しています。数は大きく違っており、ビフィズス菌が1兆~10兆個、乳酸菌は1億~1000億個ほどです。
乳酸菌は小腸内で乳酸を産生し、弱酸性にすることで有害菌の発育を抑えます。ビフィズス菌は乳酸と酢酸を産生しています。最近健康長寿との関連がクローズアップされてきた酪酸菌は酪酸を産生しています。酢酸や酪酸は、短鎖脂肪酸の一種で、腸を元気にして、体内の炎症を抑え、脂肪蓄積を抑制し、肥満や糖尿病予防にも働きます。
これらの善玉菌が優勢で、多様性に富んだ腸内フローラを持っている腸の年齢は若いとも言えます。通常は加齢によって善玉菌が減ってゆくため、蒼野の年齢からは特に積極的に、善玉菌を発酵食品で補いながら、そのえさとなる水溶性食物繊維も欠かさず毎日摂ってゆくことが理にかなっているのです。
食事は大きな楽しみですので、色んなものを食べながら、自分の便を良い形にデザインしてゆける腸内環境を手に入れたいものです。もっとキウイを食べる頻度を多くしたくなった蒼野でした。
1)日本人の慢性便秘症とQOL(生活の質)の大規模調査結果 兵庫医科大学
2)Sims and Munro(2013) Adv Food Nuts Res.68 ; 81-99
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