今日は自分は全くやらないのですが、中にはお好きな方がおられるかもしれないギャンブルのお話です。これもハマると、健康!特に社会的な健康に大きく影響すると思われるため、一度調べてみようと思いました。
根っから貧乏性の蒼野は、もったいなくて、パチンコも打った事がありません。学生の時に友人と麻雀をした事がありますが、勝っても気を使うし、負けたら悔しいので、のめり込むことはありませんでした。ある意味ギャンブルには向いていないのだと思います。
しかし世の中にはすごい人がいるのです。大王製紙創業家3代目の井川 意高さんは、マカオのカジノで106億8000万円熔かして、四年の懲役刑になりました。会社の準備金を流用していたとのことです。2011年当時のニュースは、蒼野も驚いたので覚えています。
でも本人の自伝を読んでみると、世間知らずの金持ちのボンボンが、会社のお金を使い込んだのでは無いようなのです。そこにはギャンブルの深みと恐ろしさ、ストレスの中で、めちゃくちゃ頭も良く、常識もある社会人でも、ハマってしまうギャンブル依存症の姿が描かれており、とても興味深いのです。
愛媛県の大王製紙の3代目長男として生まれ、ある意味暴君の父親の元で、厳しく躾けられたそうです。反抗したこともあったようですが、絶対に許してもらえないことから、自分が社長になるまでは、全て絶対権力者である父親の言うことは肯定せざるを得ない立場で過ごしてきました。
都内の一流高から東大法学部へ行き、卒業後大王製紙に就職、下積みを経て、子会社の大赤字の再建を手掛けるなど、メキメキと才覚を表し、一つもミスすることなく、42歳で大王製紙の第6代社長に就任しました。社長になる前に、ゴールドコーストで初めてカジノを経験し、カジノの王様と呼ばれるバカラで、1夜で100万円が2000万円になると言う経験をします。自分が勝つかバンカーが勝つかの二つに一つの勝負です。
その時の衝撃!脳が痺れるような快感が忘れられず、社長になるまでは年1回の家族旅行の時にカジノへ行っていたそうです。次にラスベガスに行った時には、70万円が4000万円になり、それが熔けてしまうと言う経験もしました。脳は興奮の極地にあり、70万円しか負けていないと思うと、負けたことさえも、楽しいと思えたとのことです。
バカラをやることで、勝っても負けても脳内にドーパミンが出まくるという回路が出来上がってしまったのです。もし自分がそんな経験をしたとすると、理解できなくもない気がします。そして社長になると、時間が自由になります。一番近いカジノがあるシンガポールに誘われたのをきっかけに、バカラがやりたい一心で、片道6時間のマカオに毎週末通い、食事も睡眠も取らずに賭け続ける生活が始まります。
井川さんをマカオに誘ったのはジャンケットと呼ばれる、カジノの営業マンの役割のある人です。飛行機を押さえ、ロールス・ロイスでのお迎え、マリーナベイサンズのカジノのVIPルームでバカラを行えるよう、最高級のおもてなしを、全て無料で手配してくれるのです。お客さんが使ったお金の数%が手数料として支払われる仕事です。
そして負けた時には、借金の手配、手持ちが無くなれば、ブラックカードを持ってホテルの質屋に行き、ロレックスを何十本も買ってそれを売ることで、現金にする方法を教えてくれます。そしてそれ以上の借金ができなくなった段階で、子会社の準備資金を流用することになります。今までの実績と信用、社長という立場があったために、調べられる事なく、借りることができたからです。
カジノの経営方針としては、一番のお客様はVIPであり、営業マンであるジャンケットを使って、最高のおもてなしをして、何度も来てもらうと言うシステムが出来上がっていると言うことに驚きます。とてつもないドーパミンの放出を経験すると、ヒトは忘れられなくなり、またそれ以上のレベルを経験したくなるのです。これがギャンブル依存症の本質の様です。
すごい世界ですね。発覚後にスキャンダルとして大ニュースとなり、一族が持株を全部売って補填しましたが、会社のクーデターで、創業一族は追放されてしまった上、お金は返したにも関わらず、金額の面からは、社会的な影響が大きすぎるとのことで、井川さんは4年の実刑を受け、服役しました。
刑期満了後、井川さんは今度はソウルのカジノで、バカラを再開したそうです。あれだけの事件があっても、やはり脳内麻薬の誘惑からは逃れられないのでしょうね。井川さん曰く、ずっと勝ち続けるのはつまらない! 手持ちのチップがあとわずかとなり、崖っぷちに追い詰められてから勝利するのがたまらないとのことです。自分が使って良いお金の範囲内で収まれば、とやかく言う必要はないのでしょう。
ソウルでも3000万円の元手でかなり負け込んでから、急に流れが来て9億円に増やしたそうです。なけなしの150万円が、23億円まで一気に増えた時には、今までに経験した事がないくらい、脳髄が痺れたとのことです。もう勝ったからやめようと言う発想は無いそうです。そして続けてゆくことで勝ったお金もみんな熔けてゆきます。
2019年にシンガポールで1ヶ月バカラをやり続け、負け続けた後、コロナ禍もあり、ようやくやりたいとは思わなくなったとのことです。凡人の蒼野には分からない世界ですが、一旦味わって脳に回路ができてしまうと、意志の力ではどうにもならないのでしょうね。
物語としてはすごく面白いのですが、依存症の本質を示しているお話しなのだと思います。依存症とは、特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になることと定義されています。井川さんの場合はたまたま使えるお金が大きい為、特殊に感じるのかもしれませんが、パチンコやスロットの依存症も本質は同じです。
なけなしの元手で、これで勝たなければもうお終いと言うところから、一度でも勝ったりすると、脳内に強烈な麻薬が飛び交い、忘れられなくなるのでしょう。ヒトの脳内物質は、破滅か生存かというギリギリの所で、最も分泌されるのだと思います。側から見ていたらどうしてと思うことでも、脳内物質の命令には逆らうことができないのです。
それをちゃんと研究して、ドーパミンを暴走させ、お金を落とし続ける完璧なシステムが、カジノであり、ギャンブルの業界なのでしょう。ラットの実験でも、脳内の報酬系刺激電極のボタンを、餌も食べずに押し続けるようにするには、押しても電気が流れる確率を変動させることだそうです。
ギャップがある人、ツンデレの人がモテるというのも、いつもこちらの期待通りの反応をしないからです。人間の本能をビジネスに応用するのは、反則だなあと思います。しかし資本主義社会では、依存症ビジネスは様々なところに応用されていて、すごく儲かっているのです。
このようなドーパミンの暴走を止めるのは、オキシトシンです。井川さんも、それまでのストレスを発散する良い方法がなく、ある意味孤独だったのかも知れませんね。周囲の人やペットと、毎日楽しく暮らしてゆく環境作りが、様々な依存症から我々を守ってくれるように思います。
「周囲の人間が傷つく度合いにおいて、ギャンブル依存症を超える病気はない」ともいわれているそうです。その通りかも知れませんね! 周囲を大切にしながら、ギャンブルとは、違う世界で暮らしてゆきたい蒼野でした。
参考書籍: 熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録 井川意高
熔ける 再び そして会社も失った 井川意高
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