皆様突然ですが、自分の容姿に満足、自信はありますでしょうか? 最近自己肯定感とか自尊心なども、大いに健康と関連しているなあと感じることが多くなり、勉強している蒼野です。ポジティブ心理学の大家であるイリノイ大学のエド・ディーナー教授の1995年の論文に、結論として美男美女は必ずしも幸福では無かったというものがあり、面白いなあと思ったので紹介したいと思います。
蒼野は男ですから、できる事なら背の高いイケメンになりたかったです。女性なら尚更、スタイル抜群の美人だったら、人生幸せだろうなあと思ったりしないでしょうか? 160本以上の論文を分析した結果、幸せで自己肯定感の高い、ポジティブな感情で人生が過ごせれば、平均で9.4年も長生き出来るとの結果が発表されています1)。
幸福を感じていることで、10年弱も寿命が違うとすれば、健康長寿のためには、皆様に幸せを感じてもらう必要があります。SNS全盛の現代において、見た目はますます重視されているように感じてしまいますよね。写真加工やメイクで変わるのを見たりすると、すごい技術だなあと蒼野も感心してしまいます。
社会は見た目、容姿にとてつもなく大きな価値を見出しているように見えます。絶世の美男や、美女だったら、幸福に違いないと思ってしまいますよね! 今までの研究でも幸福度が高い人は自己肯定感、自尊心が高くなるという関係は数多く証明されているのです。しかし「魅力的な外見だと幸福度も高いのか?」についてエド・ディーナー教授が調べてみたところ、実は違っていたのです。
イリノイ大学の男女の学生221人を対象に、三つのテストを行いました。一つ目は幸福度を測るテスト。生活満足度、全体的な幸福感をそれぞれ10段階で評価し、日頃感じているポジティブな感情からネガティブな感情を引いた時の平均の値を総合して、幸福度としました。
二つ目は自分で感じている自分の魅力度を、主観的に10段階で評価しました。三つ目は正面や側面、スッピンの顔やビデオ撮影などを行い、他人が客観的に魅力度を評価しました。そしてこの三つの要素について相関関係を調べたのです。結果として客観的な魅力度評価は2.33から7.05の間でばらばらになりました。第三者の目からは、外見の魅力度には、好みなども入るため、かなり大きな違いがあるということになります。
綺麗な女子の生活って、いつも可愛いと言われて、ちやほやされて幸せだろうと思いがちなのですが、実際は違っていました。女子学生では外見の魅力と幸福度は何の関係もありませんでした。そればかりか、全体的な幸福感は「魅力的なほど低くなる」という逆の傾向まで出ていました。男子では、イケメンは生活満足度に関してのみ、高い結果でしたが、やはり全体的な幸福感もポジティブ感情も、ブサメンと変わらなかったのです2)3)。
細かく分析すると、例外がありました。男女共に本人が「外見の魅力がとても重要だ」と考えている人においては、外見が幸福度に影響していました。「女は美人じゃなきゃ」という価値観を持つ女の子にとっては、美人だと幸せを感じますが、不美人だと不幸を感じるということになります。男性も同じで、外見重視のブサメンは、不幸を抱えて生きてゆくことになります。
逆に「外見の魅力がとても重要だ」とは思っていない、美人の女子にとって、人生は結構大変なのかもしれませんね。可愛い、美しいと言われるだけでなく、もっと他の所に注目して欲しい。美人だから得だよねとか、選ばれたんだよねなどと言われたら、それこそ自己肯定感は上がらず、自尊心が傷ついてしまうのでしょう!
ということで外見の魅力度については、幸福度には影響しないことがわかりました。すべての幸福度に影響する因子として有意差があったことは、自分が自分のことを「魅力的だ」と思っていることでした。他人から見て魅力的ではないと思われていても、自分が思っていれば、ポジティブな感情で、充実した生活が送れ、幸せを感じるという事だったのです。
自分の心の持ち様で、外見は関係なく自分の幸福度が決まるというのは、ちょっと精神論っぽくなってしまいますが、誰でも平等に幸せになれるという事ですので、素晴らしい研究結果として受け止めるのが良いと思います。
外見が悪いとモテないでしょと思われるかもしれませんが、それも違います。エド・ディーナー教授は、ルックスと恋愛についても調べています。外見の魅力度を上位4分の1(=美男・美女)と下位4分の1に分けて、幸福度とデートの回数を調べました。幸福度については、外見にかなりの差があっても、有意差はありませんでした。
デートの回数には男女差があって、女性では確かに魅力的な人のほうがデートしていましたが、男性では殆ど違いがありませんでした。可愛い女の子はお誘いが多いということかもしれませんが、統計的有意差はないものの、外見の魅力がない女子の方が幸福度が高い傾向にあったのです。
最初に書いたように、他人による客観的な魅力度の評価には、大きなばらつきが出てきます。積極的にアプローチを行えば、平均的には魅力度の低い学生もOKが貰えて、美男・美女と然程変わらない頻度でデートできるということです。幸福度が高い人ほど、デート回数が多いという別の結果も出ています。幸福な人ほど自己肯定感が高い事から、傷つくことなどを考えずに、恋愛にも積極的に取り組めるという事なのでしょう。
また長くそばにいる人に聞いた魅力度には、外見は評価対象に入らなくなってゆきます。人というのはすぐに慣れてしまう生き物の様です。絶世の美女や美男がそばにいたら最初は、天にも昇る心地がするのかもしれませんが、すぐにそれが当たり前になってしまうのです。逆に一緒に居て楽しかったら、あまり魅力的では無かった容姿が大好きになったりもしますよね!
宝くじが当たっても、幸せな気持ちが持続するのはたった2ヶ月です。蒼野は宝くじが当たったことはありませんが、欲しかった新車を買っても、毎日見るたびに嬉しいと思うのは最初の2ヶ月くらいだったと思います。美男美女は子供の頃から、美男美女です。確かに得をすることも多いと思いますが、それが当たり前であり、嬉しいと感じる人が少ないのは、言われてみるとそうなのだろうなと思います。
事故で複視の後遺症が残った蒼野も、半年くらいであまり気にならなくなりました。世界は二重に見えていても、毎日の暮らしで、それが当たり前になると、実感としての幸せ感は、事故前とあまり変わらない気がします。人生には良い時も悪い時もありますが、その時は大変でも、時間が経てば幸福度には影響しなくなる様です。
自分が持っている外見や能力や環境は、変化がなければ、いちいち幸福だとは思わないのが人間です。多くを持つ他人を羨ましいと思っても、その人が幸せかどうかは分かりません。またあまり持っていない他人が不幸だろうと思うのも意味の無い事です。自分が幸せと感じられることを探してゆく事が一番重要です。
そのためには自分が得意で、楽しく続けて行ける事を探してゆきましょう。そして少しずつ進歩した事を喜びましょう。続けて行ければ誰かの役に立ち、自分が魅力的だと思える能力を磨くことができるはずです。健康を無くして、不幸だと思う人を減らしてゆく事につながる仕事が、今の自分の幸せだなあと思える様になった蒼野でした。
参考文献:
1)Happy People Live Longer: Subjective Well-Being Contributes to Health and Longevity. ; APPLIED PSYCHOLOGY: HEALTH AND WELL-BEING, 2011, 3 (1), 1–43
2)Physical attractiveness and subjective well-being Journal of Personality and Social Psychology, Vol 69(1), Jul 1995, 120-129
3)Cross-Cultural Correlates of Life Satisfaction And Self-Esteem . : Journal of Personally and Social Psychology, 1995 , 68(4), 653-663
参考書籍: バカと無知 橘 玲
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