今日は蒼野の大好きなコーヒーの話です。コーヒーには様々な健康効果があり、うまく生活に取り入れることで、健康長寿に大いに役に立つ飲み物でもあります。ネットを調べてみると、カフェインの害を説いているものもあり、どんな風に取り入れたら良いのか迷う方もおられると思うので、論文のエビデンスに基づいて解説してみたいと思います。
まずは最新の論文から紹介します。平均年齢55.6歳、心疾患や癌の罹患の無い17万人余りの参加者を、2009年から2018年まで追跡調査した研究で、日常的に砂糖入りコーヒー、人工甘味料入りコーヒー、無糖コーヒーを飲んでいる群と飲まない群を比較しました。これまでの研究はコーヒーの種類まで判別したものはなく、初めての研究デザインでした。
期間中3177人が死亡し、1日のコーヒーの量と種類と死亡率の関係を調べました。コーヒーを飲む人の死亡率は、人工甘味料入りのコーヒー以外の、無糖または砂糖入りコーヒーにおいて、飲まない人に比べ、1日1杯半から3杯半飲んだ時の死亡率は最大30%程度低くなるとの結果が示されました1)。
インスタントやカフェインレスよりも豆を挽いたコーヒーの死亡率が低い傾向を認めました。砂糖入りコーヒーは身体に悪そうなのですが、缶コーヒーのように10g以上入っている物では無く、1杯当たり3g程度のものでした。酸化や糖化などを起こし身体への悪影響もはっきりしている砂糖を入れても、死亡率が飲まない人よりも下がるというのは驚きです。飲んだだけで寿命が長くなる飲み物は、数えるほどしか無い様に思います。
次は日本の認知症との関係を示す研究です。新潟大学の研究で、40~74歳の中高年13,757人を8年間追跡し、コーヒーと緑茶、その他の飲料のカフェインの摂取と、認知症発症率の関係を調べました。コーヒー摂取量が多いほど認知症の発生率は低下しており、1日3杯以上飲む人の認知量発症率は飲まない人に比べて47%低下していました。緑茶にも発症予防傾向は見られましたが、統計的有意差はありませんでした。
カフェイン摂取にも、認知症発症を低下させる作用が認められ、449mg/日の摂取(コーヒー3~4杯相当)で、少ししか摂取しない(平均58mg)に比べて、35%低下していました。コーヒーの予防効果が最も高く、主にはカフェインの効果の可能性が高いことが示唆され、1日3杯以上の摂取で、認知症は半減すると結論が出されました2)。
脳卒中と緑茶とコーヒーの関係も示されています。国立循環器病センターの研究で、82,369 人の日本人を13年間追跡調査したところ、これらを滅多に飲まない人に比べ、緑茶2~3杯で14%、4杯以上で20%発症低下が見られ、1日1杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて脳卒中になる確率が20~30%低いというデータが示されています。
同時に心臓病に対するリスク低下作用も示されており、そのメカニズムはまだはっきりとはわからないものの、カフェインやポリフェノールなどが、コレステロールや血圧を下げる作用にその一因があるのでは無いかとされています。
2型糖尿病に対する研究もあります。ドイツの100万人以上を最大24年間追跡し、5万人が2型糖尿病を発症しています。1日5杯以上飲む人は飲まない人に比べ、糖尿病発症が30%減少していました。5杯までは1杯増えるごとに7%発症を抑えられていました。5杯以上では頭打ちでした4)。
うつ病に関する研究もありました。スペインのナバーラ大学の研究では、ベースの食事は地中海食で統一した14,413人の大学卒業生を追跡し、1日4杯以上のコーヒーを飲んだ参加者は、1日1杯未満のコーヒーを飲んだ参加者よりも、うつ病のリスクが有意に低くなることが判明しています5)。
さらにハーバード大学の研究によれば、米国内の大規模研究データの検討から、1日に2~4杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて自殺で死亡する確率も約50%低いと報告しています。これにはカフェインがセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの脳内の特定の神経伝達物質の産生を促進していることが、抗うつ剤の様な働きに作用している可能性を指摘しています6)。カフェインは400mg以上での効果は頭打ちでした。
認知症、脳卒中、うつ病、2型糖尿病や全死亡率に至るまで、大きな影響が、多人数の研究で示されているのはすごいですよね。エビデンスが揃っているとも言えると思います。一方フィンランドの研究に1日8~9杯も飲む人の自殺率が高いという研究もあるそうなので、コーヒーをどのくらい生活に取り入れたら良いのかを考えてみたいと思います。
人種によっても、人によっても、世の中には様々なカフェイン耐性の人がいるのが分かっています。日本人はお茶をよく飲む文化があったため、比較的カフェインに強い人が多いらしいです。個人差は大きく、コーヒー1.5杯程度(カフェイン150mg)でも不安や不眠などの不快な症状が出る人は残念ながらカフェイン不耐症の可能性があります。
カフェインは中枢神経を刺激する薬物ですので、過量摂取はNGです。また依存性も出ることも知られています。日本人でカフェインに弱い遺伝子を持っている人は4人に一人くらい居るそうです。まず自分がカフェインに強いのか弱いのかを見極めるのが重要です。
日本人の研究論文などからは、1日3~4杯くらいまでに留めておけば大丈夫な人が多い様です。とはいえカフェインの半減期は4~6時間ですので、睡眠に影響させないための時間としては、午後2時以降はカフェイン入りのコーヒーは飲まない方が良い様です。朝頭をシャキッと目覚めさせるために飲むのが本来の正しい使い方です。
カフェインに弱い人でもノンカフェインのコーヒーにも、クロロゲン酸などの身体に良いポリフェノールは入っていますので、コーヒーのこれだけのメリットを考えると、試してみて欲しいと思います。気分転換やリラックス効果もあるため、昼過ぎまでのコーヒーも楽しみましょう。昼寝の前に1杯飲むと、カフェインが30分後に効き始めるため、すっきり目覚めるコーヒーナップは良い方法です。
苦い味が苦手な人は、3g(小さい角砂糖やペットシュガー)くらいの砂糖なら、エビデンス的には大丈夫な様ですね。もちろんブラックで飲める人はブラックで楽しみましょう。缶やペットボトルでも効果はゼロでは無い様ですが、添加物が入っている可能性もあるため、可能であれば豆から淹れたものを飲みましょう。
カフェインはダイエットにも有効です。蒼野は16時間ファスティングにも応用していて、朝緑茶かコーヒーを飲んで出勤し、朝散歩を早足で行っています。脂肪燃焼率がアップし、筋肉の持久率が伸び、疲れにくくなります。これも良いことずくめですよね! これからも続けてゆきたいと思っています。
大好きなコーヒーですが、地球の気候変動によって、栽培適地が2050年までに50%程度減少するという予想があるそうです。品質が低下し、生産量が減少し、価格が高騰するのでは無いかと言われており、コーヒー2050年問題と呼ばれて、対策が講じられている様です。
未来のことは分からないのですが、今のうちに色々な美味しいコーヒーを飲むことも、趣味の一つにしてゆきたい蒼野でした!
参考文献:
1)Association of Sugar-Sweetened, Artificially Sweetened, and Unsweetened Coffee Consumption With All-Cause and Cause-Specific Mortality. ; Annals of Internal Medicine, 2022 https://doi.org/10.7326/M21-2977
2)Association of coffee, green tea, and caffeine with the risk of dementia in older Japanese people. ; Journal of the American Geriatrics Society 2021 https://doi.org/10.1111/jgs.17407
3)The Impact of Green Tea and Coffee Consumption on the Reduced Risk of Stroke Incidence in Japanese Population. ; Stroke. 2013;44:1369–1374
4)Coffee and Lower Risk of Type 2 Diabetes: Arguments for a Causal Relationship. ;
Nutrients. 2021 Mar 31;13(4):1144.
5)Coffee Consumption and the Risk of Depression in a Middle-Aged Cohort: The SUN Project. ; Nutrients 2018, 10(9), 1333; https://doi.org/10.3390/nu10091333
6)Coffee drinking tied to lower risk of suicide. ; The World Journal of Biological Psychiatry July 2, 2013
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