知らなきゃ損!脳力アップの鍵 BDNF!

2023/03/22

 このところ脳内物質を色々と調べています。今日は、認知症予防にもなり、頭を良くする物質でもあるBDNF(脳由来神経栄養因子)についてまとめておきたいと思います。BDNFのレベルを向上させると、学習能力、記憶、および全般的な認知機能が向上するという、まさに頭を良くする魔法の薬のような物質です。

 BDNFは海馬で作られるというのが有名ですが、大脳皮質や視床下部、小脳、脊髄など、中枢神経系全体で合成され、働いています。まさに神経の栄養であり、神経細胞の生存、成長、分化、シナプスの形成などを促し、脳が新しい情報を学習し、経験や環境の変化に適応する能力に関与しています。

 BDNFは物質で言えばタンパク質の一種です。その生産や機能の発揮のためには、次のような栄養素が必要です。まず魚に多く含まれるDHAとEPAです。ビタミンDやビタミンB6、B9(葉酸)、B12も、BDNFの産生に必要な栄養素です。アミノ酸の一種であるグリシンも、神経興奮を抑え、BDNFを増加させます。カルシウムやマグネシウムは、BDNFが働く時に必要となります。

 まずはしっかりと、BDNFの材料を体内に取り込み、脳内に運び込むことが必要ですね。食材としては、魚や海藻、太陽の光を浴びること、肉、卵、乳製品、全粒穀物、緑黄色野菜や豆類、果物、ナッツや種子など、多くの食材をバランスよく摂取することが重要です。

 その他にも各種ポリフェノール、例えばウコンのクルクミン1)や、赤ワインなどのレスベラトロール2)、緑茶のエピガロカテキンガレート3)などで、BDNF産生が促進され、脳の健康や認知症予防などに寄与する可能性が、指摘されてきました。

 珍しい食材では、日本の研究でカマンベールチーズで、アミロイドベータの沈着が減少し、BDNFの血中レベルが上昇していたという研究があります4)。カマンベールチーズはタンパク質はもちろん、ビタミンB群、カルシウム、リンなどの栄養素が豊富ですので、嫌いでなければ、時々食卓に上げたい食材です。

 しっかりBDNFの材料となる栄養を摂ったら、次は生活習慣です。まずは運動です。運動すると、脳の様々な部分を使い、刺激することになります。神経活動の増加は、BDNFの発現を促進します。また運動は、IGF-1(インスリン様成長因子)やVEGF(血管内皮成長因子)などの他の成長因子の産生を促し、それがBDNFの合成を促進します。

 適度な運動は、抗酸化作用があり、酸化ストレスを緩和することでBDNFの働きを改善します。運動には、抗炎症作用もあり、炎症によるBDNF合成の阻害作用をブロックします。狩猟採集を行っていた原始人は、動き回ることで、安全な場所や食べ物が取れる場所などを記憶する必要があり、運動で、BDNFの分泌を促進する必要があったのです。

 次は睡眠です。睡眠時特有の神経活動によって、シナプスが調整され、柔軟に変化できるようになり、BDNFの産生や働きが向上します。良好な睡眠はコルチゾール(ストレスホルモン)レベルを下げ、炎症レベルを抑制することにつながります。炎症レベルが下がればBDNFの産生が促進されます。その産生量は、覚醒時より睡眠時に多いと言われています。

 蒼野が朝と夜、心掛けている冷水シャワーも、炎症を抑え、BDNFの産生を促進する可能性があります5)。冷水シャワーや冷水浴などの寒冷刺激は、神経系へのストレスとして作用し、ストレス耐性を高める効果があります。原始時代であれば生命の危機に直結するものであり、脳機能を高めて乗り切らなければいけない状況なのです。神経細胞の生存や成長をサポートするBDNFの産生を促進するというのは、当たり前かもしれません。

 またBDNFレベルを下げてしまう生活習慣については、できれば避けてゆきたいですよね! ストレス、高脂肪食、糖質過多の食事、喫煙、睡眠不足などはBDNFレベルを下げることが報告されています。高脂肪食で避けるべき油は、酸化油、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸です。炎症を改善するオリーブオイルや、魚などのオメガ3脂肪酸は摂っても大丈夫なので、お間違い無く!

 糖質過多の食事については、インスリン抵抗性や炎症、酸化ストレスの原因となり、BDNFの産生や機能に悪影響を与えます。逆に糖質制限して、ケトン体質になると、体内炎症が抑えられ、BDNFが増加することが報告されています。特にβ-ヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)はBDNFの産生を促進します6)。

 しかし、ずっと厳しい糖質制限をするのは、不自然でもあり、美味しい物を我慢するのは、何よりストレスです。適度に糖質を抑えながら、断食を入れてゆくことで、ケトン体を使う時間を作ってゆくのは良い提案だと思います。蒼野も16時間断食を続けていて、ケトメーターで測ると、ケトン体質になっていることが確認できています。短期的な断食や間欠的な断食は、BDNFを増やす作用があるとする研究結果も出ています7)。

 BDNFと食物繊維や腸内細菌叢との関係は、最近注目され、盛んに研究が行われています。『脳腸相関』からも、健全な腸内細菌叢が、脳の健康や認知機能に関与しています。善玉菌が短鎖脂肪酸を作ることで、BDNFの産生が促されます8)。食物繊維と発酵食品は頭を良くする食べ物だと考えられます。

 BDNFは脳の健康だけでは無く、食行動やエネルギー代謝にも影響を与えることが分かっています。視床下部でBDNFは、食欲抑制に関与しています。BDNFが低下すると食欲が治らなくなります。また脂肪蓄積を促し、インスリン感受性を低下させるため、BDNFの低下を放置すると、自然に太ります。

 面白い研究に「お遍路さんの健康効果」について調べたものがあります。金沢工業大学 小島正己先生の研究なのですが、2週間前の日常生活時のBDNF等の値を調べ、7日間のお遍路さん中のBDNFを調べ、日常生活に戻った2週間後のBDNFを調べています。

 するとお遍路中に、BDNFは徐々に上昇しますが、なんと2週間後もその値がキープされていたそうです。知らない土地や霊場を、自然の中の道を歩きながら、巡ってゆくことで、人間の原始的な本能が活性化するように思います。瞑想でBDNFが増えるという報告もあり、心が洗われることも影響がありそうですね!

 上記の生活習慣は、人によって、合うものと合わないものはあると思います。加齢と共に増えてゆく認知症を防ぐためにも、BDNFを上げる生活を意識することは大事だと思っています。少しずつで良いので、出来そうなものを、皆様の生活に取り入れて頂ければ幸いです。

 四国八十八ヶ所巡りにも挑戦してみたくなった蒼野でした!

参照文献: 
1)Curcumin reverses the effects of chronic stress on behavior, the HPA axis, BDNF expression and phosphorylation of CREB. ; Brain Research 1122 (1) 2006, 56-64

2)Protective effects of resveratrol on aging-induced cognitive impairment in rats. ; Neurobiology of Learning and Memory 131 2016, 131-136

3)Long-term green tea catechin administration prevents spatial learning and memory impairment in senescence-accelerated mouse prone-8 mice by decreasing Aβ1-42 oligomers and upregulating synaptic plasticity–related proteins in the hippocampus. ; Neuroscience 163 (3) 2009, 741-749

4)The Effects of Mold-Fermented Cheese on Brain-Derived Neurotrophic Factor in Community-Dwelling Older Japanese Women With Mild Cognitive Impairment: A Randomized, Controlled, Crossover Trial. ; Journal of the American Medical Directors Association 20 (12) 2019 1509-1514

5)The effect of prolonged whole-body cryostimulation treatment with different amounts of sessions on chosen pro- and anti-inflammatory cytokines levels in healthy men. ; Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation, 2011. 72 (5), 385-394.

6)3-Hydroxybutyrate regulates energy metabolism and induces BDNF expression in cerebral cortical neurons. Journal of neurochemistry, 2016. 139 (5), 769-781.

7)Impact of intermittent fasting on health and disease processes. ;  Ageing research reviews, 2017  39, 46-58.

8)The intestinal microbiota affect central levels of brain-derived neurotrophic factor and behavior in mice. Gastroenterology,; 2011. 141(2), 599-609.

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