皆様! 昨日は最高の1日でしたね。もちろんWBCの決勝のことです。蒼野は残念ながら、外来診察だったので、リアタイでは観戦できませんでした。待合室からの歓声で勝利を知りました。あとで試合経過を知るにつれて、すごい展開、映画か漫画のような現実だなあと感動しました。夜はいつもは見ないテレビで試合の再放送を見て、幸せな気持ちで眠りにつきました。
今日は、脳外科らしく、脳内伝達物質という点から、WBC決勝を考えてみたいと思います。最初のポイントは、大谷選手の試合前の円陣での言葉です。「僕からは1個だけ」と切り出すと「憧れるの、やめましょう」と言ったのにはしびれました。
「今日1日だけは。憧れてしまったら、超えられないんで。僕らは今日超えるために、トップになるために来たので、今日1日だけは彼らへの憧れを捨てて勝つことだけ考えて行きましょう」最後は「さあいこう!!!」と叫びました。これはチームメートの脳内伝達物質を大きく動かしたように感じました。
まずドーパミンです。今日トップになるという明確な目標を掲げることで、チームメートの心に、勝利を目指すモチベーションが高まり、ドーパミンが分泌されたと思います。チーム全体の集中力やエネルギーが高まりました。
チーム全体で、勝てるという気持ちが高まれば、セロトニンも分泌されます。決勝の舞台に立てる幸福感、メンタルの安定が高まり、自己肯定感、自信が高まったと思います。今から戦うということで、アドレナリンも出たことでしょう。適度なアドレナリンは、注意力や反応速度を向上させ、試合中のパフォーマンスを高めます。
最後はオキシトシンです。大谷選手の言葉で、連帯感、お互いの信頼がさらに高まったはずです。これは侍ジャパンの大きな武器だったと思います。2月17日からの合宿は、栗山監督が望んでいた通り、ダルビッシュ選手が最初から参加し、メジャーリーガーと国内組の絆が深まったことは、とても大きかったと思います。
仲間を信頼し続けて、個人よりもチームを優先できるオキシトシンは、チーム全体のパフォーマンスを向上させます。またオキシトシンのコルチゾールの抑制効果は、恐怖感や不安を緩和し、決勝戦という大きな緊張やストレスを緩和し、リラックスした状態で、自信を持って集中できるようにしてくれるのです。
大谷選手の言葉は、ポジティブな考え方をチームメイトの心に植え付け、励ますことで、興奮状態を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)も分泌したことでしょう。興奮状態の中でも、GABAが選手をリラックスさせ、平常心を保ち、持っているパフォーマンスを、みんなが発揮できたように思います。
普通では見られない7人の投手リレーでしたが、アメリカの最強打線に対して、ホームランのみの最小失点で切り抜けられたのは、各々のメンタルバランスが安定して、決勝の舞台でも、ベストパフォーマンスが出せたからではないかと思います。またこの大舞台で、メジャーのピッチャーを相手に、不調だった村上選手や、岡本選手のホームランが出せたのも、メンタルが大きかったように思えます。
超人、メンタルモンスターのように思える大谷選手も、さすがに緊張は有ったようです。試合後に9回登板を振り返った時に、フォアボールで、少し嫌な感じになっていたのが、ゲッツーの時にチームメートの顔を見て、本当に勇気づけられ、これで行けると思ったそうです。
この時の大谷選手の頭の中では、絆のオキシトシンが高まり、チームメートの喜ぶ顔を見て、エンドルフィンが出たことでしょう。チームメートでもあり、大リーグで3度のMVPに輝やいた、現役最強打者トラウト選手に対して、落ち着きと自信を持って投げた打席は、皆様ご存知の通りです。
最後の三振を取った球は、内側のコーナーからストライクゾーンの外側で終わる、140キロで43cm動くスライダー! しびれましたね! 最高です! 本当に良い試合でした。実力は紙一重、後半メジャーのクローザーが連続する場面での得点は、かなり難しかったと思います。先行逃げ切り、理想のシナリオで試合ができました。歴史にも、蒼野の記憶にも残り続ける試合でした。
その紙一重の差は、蒼野の私見ではやはり『オキシトシン』『チームの和と絆』だったように思います。ベンチを見ていて、実力揃いでも、ベンチの盛り上がりは、アメリカと日本は大きく違っていたように思います。それは大会数日前に結成したチームと、1ヶ月前から苦楽を共にしたチームの差があるように見えました。
合宿に最初から参加してチームをまとめ上げたダルビッシュ選手! 不振だった村上選手を信じ続けた栗山監督! 最後2試合でそれに応えた村上選手! 実力はもちろんですが、チームを一つにして、盛り上がりの中心になったヌートバー選手! ここ一番で本当に頼りになった吉田選手や岡本選手! そして日本が誇る最強の投手陣! その中心にいて、いつもチームのことを考えていた大谷選手! 挙げればキリがないのですが、侍ジャパンの全員に心から感謝したいと思います。
歴史は繰り返すと言いますが、17年前、優勝した2006年のWBC第1回大会で、イチロー選手が、アメリカとの試合前の円陣で、「絶対に浮ついちゃダメ。俺らが一番だ。胸を張ってメジャーリーガーに臆することはない」と伝えたそうです。その意味は大谷選手と一緒です。日本人のチームの絆の伝統は生き続けているのだと思います。
今回も、見ている我々の脳内でも、様々な神経伝達物質が駆け巡りました。人間の脳には、ミラーニューロンという特殊な神経細胞があります。他人の行動や感情を観察することで、自分自身が同じ行動や感情を経験しているかのように脳内で反応を引き起こすのです。
選手たちの喜びや達成感に共感することで、見ている我々の脳内でも、ドーパミンが分泌され、この上ない喜びが感じられました。オキシトシンが分泌され、選手たちとのつながりや一体感を感じました。終わってみるとセロトニンの幸福感に包まれ、「よーし自分も頑張ろう」と思えます。
勝負は時の運とは言いますが、体力や筋力、技術だけではなく、脳のコントロールも含めた戦いであることで、スポーツは素晴らしいのでしょうね! そしてそれを支えるのが、日頃の健康状態です。大谷選手は特に食事や睡眠について、強くこだわっているそうです。高タンパク、低脂質、適度な炭水化物で4500Kcalになるよう、管理栄養士に調理してもらったり、バイキングで選んだりして食べています。睡眠のマットは、自分に合わせた西川の「エアー」を愛用しているそうです。
我々の脳内伝達物質も、食事、運動、睡眠、ストレスの影響を大きく受けています。自分に合った健康法を、自分の気分をモニターしながら、いろいろ試して見つけてゆきたい蒼野でした!
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