このお休みに、少し上半身筋トレを頑張ってしまい、今朝起きた時に、久しぶりに肩頚が硬くなっている感覚を覚えた蒼野です。そこで今日は、誰もが悩むことがあるかと思う肩こりについて深掘りしてみたいと思います。
肩こりはデスクワークの人にはつきものの症状ではないでしょうか? 蒼野も特にクリニック勤務をしている時には、1日中座って電子カルテと向かい合う生活だったので、肩こりに悩んでいました。今でも、ブログを書く時間は長いのですが、肩こり予防について色々工夫するようになって随分楽になっています。
まず肩こりとは何で、どうして起こるのかから見て行きましょう。肩こりは、「肩や首周辺の筋肉が緊張し、疲労や痛みを感じる状態」です。その原因については、筋肉の緊張、筋肉の血流低下、ストレス、姿勢、筋力不足などが挙げられます。一つ一つ解説してみます。
筋肉は、長時間同じ姿勢を続けることで硬くなってしまいます。頭は重たいので、デスクワークやスマホなどで、前傾の姿勢が長くなると、頭を支える後頚部から肩にかけての筋肉の緊張が続いてしまいます。そのうちに筋肉に疲労物質である乳酸も溜まってきます。
通常乳酸は、筋細胞内で代謝されてエネルギー源として再利用されたり、血流で肝臓に運ばれてグルコースに変換されたりします。しかし長時間の筋緊張によって、過度の乳酸が蓄積すると、筋肉内のpH(酸性度)が低下し、痛覚受容器(痛みを感知する神経末端)を刺激して、痛みを引き起こします。
またその酸性環境によって、筋肉内の血管が収縮し、さらに血流が悪化するのです。乳酸は酸素がない状態での、エネルギー代謝で生まれる物質ですから、筋緊張による血流悪化に加えて、乳酸蓄積による血流悪化が起こることで、さらに乳酸は産生されてしまいます。そして筋肉自体の疲労も悪化して行きます。
筋肉の緊張は、筋膜も緊張させます。筋膜は筋肉を包んでいる膜で、本来は柔らかく、筋肉は筋膜の中で滑ることでスムーズに伸縮しています。筋膜にはヒアルロン酸が含まれていて、その潤滑作用によって、筋肉が自由に動けます。筋膜が緊張するとヒアルロン酸の量が減り、滑りが悪くなります。摩擦によって炎症が起こると、炎症部分に集まった水分で、さらにヒアルロン酸が薄められ、ますます摩擦が強くなり、痛みを感じるようになるのです。
筋膜剥がしとか肩甲骨剥がしというのは、引っ付いてしまった筋膜と筋肉の癒着を、圧力や摩擦によって分離させる方法です。専門家のマッサージやフォームローラー、筋膜リリースボールなどで、うまく剥がれると、筋肉同士の摩擦や痛みが緩和します。蒼野も筋膜ローラーを持っていますが、剥がすときは結構痛いのでなかなか使えていません。
筋肉が緊張して硬くなると、筋肉を貫通している神経や、周囲にある神経に大きく影響を与えます。神経が圧迫されると痛みを感じます。肩こりの頭痛では、頚神経の一種である大後頭神経が圧迫されると、頭が重たくなり、いわゆる肩こり頭痛である緊張型頭痛となったり、後頭神経痛になったりします。
ストレスと肩こりの関係は、古くから研究されています1)。このストレスは、原始人が敵に出会った時に、逃げるか戦うかといった反応をする、一過性のストレスとは異なります。現代が抱える慢性ストレスが問題になるのです。
一過性のストレスの場合、全身の筋肉への血管は拡張し、逃げたり、戦ったりできるよう筋肉への血流を増やしますが、慢性ストレスになると、ストレスによる筋肉の緊張から、血流が低下し、筋疲労が起こり、乳酸が溜まって、さらに硬くなるという悪循環に陥ります。
人はストレス時には、逃げるか戦うかなので、生存本能や防衛反応の一部として、ボクシングで戦う時のような、防御の姿勢になるようにできています。これは身体を守るために自然と取る姿勢で、背中を丸めて肩を内側に引き寄せるような姿勢です。猫背で巻き肩の、肩が凝る姿勢なのです。現代の慢性ストレスがあると、とってしまう姿勢なのです。
姿勢は本当に重要です。背筋を伸ばして生活する正しい姿勢では、頭の重さはちゃんとS字状に積み上げられた背骨の上に乗る形になります。首の筋肉で支える必要性は最小限で済むのです。これが猫背、巻き肩の形になると、重たい頭を支えるために、後頚部から背中の上部の筋肉が緊張した状態が続きます。筋肉も筋膜も硬くなり、血流が悪くなって、肩こりの悪循環にハマってしまいます。
姿勢が悪い人が、デスクワークをすると、高率に肩こりや腰痛、肩こりに誘発された頭痛を発症します2)。人類は座りっぱなしに耐えられるように出来ていないのです。仕事のストレスも加われば、より痛みも感じやすくなり、なかなか改善が難しい、治りにくい肩こり症候群が完成します。
それでは、その対処法です。
1、筋肉の緊張をほぐす。対象となる筋肉は、僧帽筋上部、肩甲挙筋などの背中にある首と背中の筋肉。肩甲骨と背骨を繋ぐ菱形筋や、肩甲骨と肋骨をつなぐ体の側面にある前鋸筋、鎖骨と肋骨を繋いで硬くなると巻き肩の原因になる小胸筋などをほぐす必要があります。
方法としてはストレッチ、体操、マッサージや鍼灸、漢方薬の内服など多岐にわたります。蒼野のお勧めはストレッチと運動を兼ねた、肩甲骨を動かす体操です。壁に背中を付けて、壁に沿って90度に曲げた両腕を上下にゆっくり動かすウォール・スライド。両方の肩甲骨を寄せたり離したり、腕を肩甲骨を意識しながらゆっくり回す肩甲骨回し。四つん這いで、猫のように背中を丸め、息を吐きながら背中を反らせる「カウ・キャット」ポーズなどを、1時間に1回くらい行って行きましょう3)。
椅子から立ち上がって少し歩くだけでも違います。肩回し+体回しは頭痛体操としてオススメです。姿勢も良くなるので、ぜひ習慣にしてください。文章なので分かりにくい方は、ネットで「頭痛体操」とか「肩甲骨ストレッチ」「肩甲骨はがし」などで検索してみてくださいね。
2、日頃から正しい姿勢を意識し、維持しましょう。長時間のデスクワークで上手くいかないという人は、コルセットや椅子に置いて使う姿勢サポート器具を使うのも楽になります。蒼野は職場と家にそれぞれSTYLEという、腰を支える座椅子のようなアイテムを使っています。あるのと無いのとではかなり違うことを実感しています。
3、温かいタオルなどのホットパック、毎日湯船に浸かる温熱療法も有効です。サウナも良いですね。今から暑くなるので、冷水シャワーも始めやすいと思います。短時間冷水を浴びると、その後血管が開いて血流が良くなるので、心臓病が無ければ無理のない程度からトライしてみてください。
4、寝具を合わせるのは大事です。好みもあるので人それぞれではあるのですが、蒼野のオススメは、バスタオルを丸めて使う首枕です。仰向け寝で、寝ている間に、起きている時の良い姿勢が保てるので、猫背、巻き肩を少しずつ改善するのに有効です。高い枕や沈みすぎるマットレスは、肩こりや腰痛の原因になることがあるので注意が必要です。また寝るときに貼る湿布は、蒼野の場合眠りが深くなり、翌朝すっきりすることが多いです。
5、不足すると肩こりが酷くなる栄養を摂るのは肩こり治療の前提になります。ビタミンB群、マグネシウム、オメガ3脂肪酸、カルシウムが不足しないよう様々な食材で、食事を組み立てましょう。これらは筋緊張を抑え、炎症を抑え、筋肉の正常な収縮をサポートします。
6、最後はストレスです。しっかり睡眠時間を確保し、身体を動かし、腸を整え、栄養たっぷりの美味しいものを食べて、毎日楽しく過ごしましょう。肩こりも全身の体調の一つの表現です。いつも肩が凝っているというのは、大きな病気や怪我に繋がるサインかもしれません。色々とトライして、自分に合った解消法を見つけて行きましょう。
今日も長くなってしまいました。ブログを書きながら、時々肩甲骨を意識して回している蒼野でした。
参考文献:
1)Psychophysiological stress and emg activity of the trapezius muscle. ; International Journal of Behavioral Medicine, 1(4), 354-370. 1994
2)Individual and work related risk factors for neck pain among office workers: a cross sectional study. European Spine Journal, 16(5), 679-686. 2007
3)Active neck muscle training in the treatment of chronic neck pain in women: a randomized controlled trial. Jama, 289(19), 2509-2516. 2003
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