今日はリコード法で、一番大事な食事に関して書いてゆきます。一言で言えば、今まで蒼野が勉強してきた、健康長寿を達成する方法と見事なまでに一致しているのが、とても興味深いです。
アルツハイマー病は第3の糖尿病とも言われています。脳細胞がブドウ糖をエネルギーとして、うまく使えないため慢性的なエネルギー不足になるのです。病状が進むと、急に脳細胞が一斉に死に始め、脳は急速に萎縮してゆきます。特に海馬の脳細胞は脆弱なため、一番最初に海馬の萎縮が進んで、短期記憶が障害されます。
さっき言ったことを、何度も言ったりするのはそのためです。自分のした事、経験したこともすっぽりと抜け落ち、約束も忘れてしまうし、ご飯を食べたことさえ忘れてしまうのです。財布がどこに行ったかわからず、誰かに盗られたと言ったりします。
これは糖質の摂りすぎによる、インスリン抵抗性と密接に関わっています。現代の日本人の多くは、パンやご飯、麺といった炭水化物、お菓子やソフトドリンクといった糖質を多く含む食物を取り過ぎる傾向があります。アルツハイマーが発症して来る時期に、そのまま食べていると急速に症状が進行します。
蒼野も外来で物忘れの相談を受けるのですが、初回のMRI検査で海馬の萎縮が50%程度、質問形式の簡単な認知症検査では、まだ正常下限程度だった70代のおばあさんに、食事や運動の指導をして、経過観察としました。しかし1年後に家族に連れてこられた時には、海馬萎縮が86%まで進み、認知症検査も立派な認知症の領域に入っていました。話を聞くと、甘い物好きで、毎日お饅頭を1個食べていたとのことでした。
高血糖は体内の慢性炎症を引き起こし、また血管の動脈硬化も促進します。脳血流も悪くなり、脳細胞のインスリン受容体の数が減って、血糖をエネルギーとして取り込めなくなると、脳細胞は死んでゆくのです。ギリギリまでは保たれますが、ある限界点を超えると、急速に脳萎縮も認知機能低下も進行することは、何度も経験したので、とても恐ろしく思っています。
しかし脳細胞は、血糖が利用できなくなっても、ケトン体は利用できます。脂肪を分解してケトン体がたくさんできて、身体がケトーシスの状態になれば、脳のエネルギー不足が解消され、認知機能の改善が期待できます。糖質の摂取が多いとケトン体はできないので、糖質の摂取はできるだけ控えなければいけません。
できるかどうかは別として、厳格な糖質制限をして、特にケトン体に代わる、ココナッツオイルやMCTオイルを摂取すると、死にかけた脳細胞が蘇ることになります。ケトーシスの状態になれば、30点満点の認知機能検査が、一晩で5点くらい上がるのです。これは現在処方されているどんな認知症薬よりも大きな変化です。しかし特に、認知症手前のお年寄りにとって、これまで長年してきた食生活を変えるのは、かなり難しいことは、蒼野の経験上でもわかります。
リコード法では、ケトフレックス12/3(トウェルブスリー)という方法が推奨されています。夕食から寝るまで3時間空けることと、夕食から朝食まで12時間以上空けること。食事は緩やかな菜食主義+体重×1gのタンパク質で構成して、炭水化物、糖質の摂取を最小限にすることです。適度な運動(週150分以上の早歩きなど)も必要です。
これで身体は脂肪をエネルギーとして燃焼する体質となり、全身をケトン体が巡るようになります。この方法は脳のBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌も促進し、脳細胞が、特に海馬や前頭葉で増えてゆくことにもなります。
12時間以上のファスティングで、オートファジーが活性化し、細胞内のβアミロイドなどの、異常タンパク質も処理されてゆきます。肉体の若返りが図れる方法が、見事にアルツハイマーなどの神経変性疾患の改善や予防にもなるということなのです。
さらに、ケトン体優位のケトーシスの状態に誘導するには、朝食には、大さじ1杯のココナッツオイルやMCTオイルを入れた、ブラックコーヒーなどもお勧めされています。朝エネルギーとして、油を少し摂っておくと、昼までお腹が空きません。少量のナッツと一緒にしても良いです。
蒼野はココナッツオイルコーヒーは、味が少し苦手です。MCTオイルは風味がないためこれも好みません。一番美味しいと思うのは、グラスフェッドバター(無塩)入りのコーヒーです。嫌いでなければ、美味しいコールドプレスのオリーブオイルを、そのままスプーン一杯飲んだりするのも良いと思います。オリーブオイルには、脳の炎症を抑える成分「オレオカンタール」が含まれています。
しっかり16時間ファスティングする場合には、朝のオイルも必要ないように思います。夕食から時間が経てば、ケトーシスの状態になっているからです。蒼野は毎朝、玉露か、ブラックコーヒー、レモンを絞った炭酸水を摂って生活していますが、慣れてくれば、昼まで全くお腹は空きません。
食事として、避けるように書かれているものは、加工食品(添加物)、養殖魚、水銀濃度が高い寿命の長い魚(サメ、メカジキ、マグロなど)、グルテンと乳製品などです。以前のブログで書いたように、グルテンと乳製品のカゼインは、リーキーガットを起こし、慢性炎症の原因となるため、脳内に変性物質を溜める元になります。
逆に摂るべきとされているのは、果物(甘いものは少量で)、食物繊維、アブラナ科の野菜をはじめとする、解毒作用のある野菜、アボガド、ナッツ、オリーブオイルなど良質の脂肪、鮭、鯖鰯、ニシンなどの魚類、放牧の鶏やグラスフェッドビーフを1週間に2~3回 80g程度、平飼いの卵。プロバイオティックスやプレバイオティックスなど、腸内フローラを健全に保つ食べ物などです。
こうしてみるとアルツハイマー病予防の食事は、取りも直さず、健康寿命を伸ばす食事と、ほぼ同じということになります。そして、認知機能が落ち始めた段階では、そういう食事に変えたり、ファスティングすることはかなり難しいことになると考えます。
アルツハイマーを寄せ付けない食事習慣に変えていくのは、今ではないでしょうか? 認知症が進行を始める45歳くらいから取り組めば、慣れてもきますし、何より体重キープも自然にできて、活動的で気持ちの良い身体が手に入るのです。是非少しずつでもトライしてみてくださいね!
今日はリコード法 食事編でした。残りの生活習慣についてはまた、まとめますね!
参考書籍: アルツハイマー病 真実と終焉 デール・ブレデセン